2016.2.29作成
2016.3.16修正

新スプリアス規格を考える(2)

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 本内容は各種資料をもとに検討・作成しました。誤っている点は逐次改訂します。
 お気づきの点がありましたら、掲示板経由でご連絡をお願いします。
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旧リグと新スプリアス規格の関係は
前ページで、新スプリアス規格のスプリアス領域について調査しました。
スプリアス領域の規格がぐっと強化されて敷居が高くなった、規格制定前のリグはもう使えない・・・と思っていたのですが、幾分安心しました。
以前のリグの実力でも、スプリアス領域の規格を満足していれば、フィルタなしで使えるかもしれません。
◎30MHz以下のHFの場合
市販リグは、一部QRP機を除きほぼ10W以上です。-50dBをクリアしていれば規格満足です。1980年前半発売のリグあたりから、規格をパスしているようです。
大雑把に確認、アイコムではIC-720以降、ケンウッドではTS-450S以降、ヤエスはFT-757以降が-50dBクリアです。(初期製品は、帯域外領域スプリアスが微妙かもしれませんが。)
これ以前のリグは実測結果次第で、ノーチェックでは難しいですね。ただし、全てダメと悲観する必要はありません。
低スプリアスな設計をして実力はあるが、仕様を当時の法規格に合わせて記述している場合があります。
一例として、手持ちのFT-7のスペクトルを右に示します。電力増幅がプッシュプルアンプであるため、2倍高調波が3倍高調波より小さくなっています。
   F=7.25MHz、 Po=12W、 X:5MHz/div、 Y:10dB/div
ポイントの一つとして、ファイナルがトランジスタのプッシュプルアンプなら可能性あり、ということでしょうか。
◎50MHz・144MHz・430MHzの場合   2016/3/16修正
1-50Wは新旧規格いずれも-60dB以下です。1W以下の規格は、ハンディ機のローパワーに適用されます。
旧規格がいつから運用されたのか不明ですが、かなり古いリグでも-60dB以下という1-10W機が多数あります。私自身がレストアした50MHzAM機、144・430MHzの水晶式リグも大半がクリアします。
一例として、TR-8000のスペクトルを右に示しました。
   F=433.0MHz、 Po=10W、 X:200MHz/div、 Y:10dB/div
モノバンド機ゆえ、ローパスフィルタの設計が容易です。多バンドをカバーするHF機とは異なります。
TV放送の地デジ化で、50MHzのインターフェアは非常に有利になりました。問題となる整数倍のスプリアスには十分マージンがあると考えます。
多くのリグが使えそうですが・・・・。
◎1200MHz以上の場合
スプリアス-50dB以下と記してあることが多いようです。無線設備規則通りの表現なので、これは実力を確認する必要があります。
メーカー出荷時の検査規格はどうなのでしょうか。一般的に、メーカー出荷時の検査規格は仕様より少し厳しく設定しています。例えば検査規格を-53dBとしていれば、オンスペック(規格とぴったり一致するという意味)ですが新規格を満足します。
現行品が少ない現在、メーカー出荷時の品質保証+実際の製品実力調査で認めていただきたいところです。
新規格に対応するには・・・・スプリアス領域の場合
30MHz以下の場合、スプリアスを-40dB以下から-50dB以下へと10dB厳しくする必要があります。
規格を満たさないリグは、バンドパスフィルタ(BPF)を挿入すれば解決する見込み大です。
最も問題になるスプリアスは、2・3倍の高調波でしょう。ローパスフィルタ(LPF)で十分なように思えますが、周波数混合で発生するスプリアスも無視出来ないことがあります。
一例ですが、ヤエスのFT-747の仕様は以下の通りです。
  高調波 -50dB以下(アマチュアバンド内)
  その他 -40dB以下
つまり、アマチュアバンド外で-50dBを満たさないスプリアスが発生し得る、ということです。
スプリアスの周波数・レベルが分かりませんが、送信周波数の下にスプリアスが存在するかもしれません。モノバンドのBPFであれば対策がより確実でしょう。
フィルタ挿入前 フィルタ挿入後
これも、手持ちのFT-901Dで採取した例をを示します。
自作7MHz BPFの挿入前後の比較です。
  X:5MHz/div、Y:10dB/div
  F=7.150MHz、Pi=100W
2・3倍高調波は-60dB以下となり、規格はクリアします。
BPFはメーカー製が少ないので、自作する必要があります。狭帯域でスカート特性の良いものが理想ですが、コイルのインダクタンス・コンデンサ容量を設計値に合わせることが難しく、特性が再現困難です。
ブロードな特性のコンデンサ・コイル各3個のパイ型BPFでも、十分実用になります。
問題は、メーカー製フィルタが市販されて正式認定されるか、自作は認証機関で認定してもらう必要があるか、一定の基準に従って自作すれば認証不要で使用可か、という点です。
今までの免許申請では、「フィルタ」と書けばOKでしたが、今後はどうなるのでしょうか。
また、運用上は周波数変更毎にフィルタを切り替えねばならない煩雑さが生じます。
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