2015.10.22

2SC828と2SC1815の互換性について

いきさつ
トランジスタの互換表を作成・公開したところ、(こちらの記載不備ではないのですが)疑問点がある、という書き込みをネット上で発見しました。
CQ出版社発行のトランジスタ互換表で、松下(現パナソニック)の2SC828の互換品が東芝の2SC1815となっていますが、『2SC828(ft=220MHz)の代用が2SC1815(ft=80MHz)とは、おかしい』という趣旨でした。
1ヶ月くらい後の調査で自分自身は理解・納得していたのですが、先日メールでコメントを頂戴しましたので、整理しておきます。
トランジスタ規格表のデータ
手持ちのトランジスタ規格表(85年)に掲載されているデータを以下に示します。各トランジスタ毎に1行で掲載されているデータです。必要な情報のみに絞るため、不要箇所を削除し編集してあります。
2SC828のftは220MHz、2SC1815のftは>80MHzとなっています。この表現の違い、お分かりでしょうか。
2SC828は標準値(typ)、2SC1815は最小値(min)であるような記述です。同一ではなさそうです。
メーカーのデータシート
メーカー公表のデータシートをインターネットでダウンロードしました。基本的な電気的特性は、1行で標記されています。
<2SC828> 松下
ftは標準値(typ)で220MHzとなっています。条件のf=200MHzはミスでしょう。
<2SC1815> 東芝
ftは最小値(min)80MHz、標準値(typ)200MHzです。
下記のデータシートは、80年頃のものと思われます。2001年発行のデータシートは、min80MHzのみで、typの値は記載されていません。
ft標準値だけ見れば、ほぼ同等です。但し、測定条件が異なります。
測定条件をなるべく揃えよう・・・と、グラフを探しました。2SC828はftとエミッタ電流Ieの特性、2SC1815はftとコレクタ電流Icの特性のみありました。IeとIcはほぼ同じですから、バイアスのVCBとVCEの違いはありますが何とか比較可能と判断しました。
2SC828 2SC1815
IeあるいはIcが1-2mAの条件ではftは150-220くらいです。ほぼ同等でしょう。他のパラメータまで比較しませんが、互換品という判断は間違ってはいないようです。
Ie・Icを大きくすると、ftが上昇します。2SC828は350MHz、2SC1815は500MHzまで上限が伸びます。
もちろん、デバイスのばらつきや回路条件の変動で余裕が無くなるため、設計者は無理をすべきではありません。
2SC828から2SC1815へは変更可能だが、逆は動作しないことがあり得る、と考えます。
まとめ
規格表に記載された情報1行だけでは全特性は表現出来ません。測定時のバイアス条件だけでもVCE、IC、IB等ありますし、温度も無視出来ません。データシートをじっくり見ると、思わぬ発見があります。
余談になりますが、安価で評判の高いソニーの2SK125はメーカー製リグの430MHz高周波増幅で使われていました。規格表では100MHzの動作例しかないのですが、データシートを見ると500MHzの特性データが出ています。
コストパフォーマンスの良さを、メーカーは分かっていたんですね。
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