愚行連鎖 S.Yairi情報

GB楽器博物館

田中 文英さんメールありがとう!


S Yairi YD-304

田中 文英さん愛機S-Yairi YD-304


素晴らしいS.Yairiドレッドノートです。
下にいただいたメールを転載しますが、現在生みの親の所へ入院中だそうです。

一人の青年といにしえの銘器とのドラマチックな出逢い。
これは感動的ですらあります。



田中 文英(ぶん)さんはS.Yairiの謎に取り憑かれ(?)一気に
“S.Yairiのページ” を立ち上げたのですが…。
多くの方々の協力も得られ、今後素晴らしいWebに発展するはず…。
だったのですが、何かトラブルがあったようで、数ヶ月で消滅してしまいました…


田中 文英さんから

-1-

初めまして。S.Yairiのギターを検索にかけてやってきました。アコギ歴4ヶ月の初心者です。その初心者がつい最近、運命的に手に入れたギターがとても不思議なのです。素性がわからず、色々と調べているのですが。。。

そのギターとは、おそらく1974年頃に作られた、S.YairiのYD-304だと思うのですが、不思議なのは、先ず指板にはYD-303と書いてあることです。ところが裏板は3ピースで、しかも付属の札にはNo.304,\80,000と書いてあること、ロッドが入っていないことからほぼ間違いなくYD-304ではないかと詳しい人も言います。

がしかしさらに不思議なのは、裏板は3ピースなのですが、センターがメイプルではなく、おそらくサイドと同じハカランダである、という点です。さらにさらに、ペグもシルバーではなく、ゴールドのシャーラーが使われています!!!

このギターはいったい何者なのでしょうか???
不思議と不安が交錯しまくっとります!!!
どんな些細なことでも構わないので、何か情報があれば教えていただけると嬉しいです!お願いします!!!

-2-

その後の調査により、YD-304だろうとのことです。
でも仰せの通り、型番はもう気にしないことにしました。

それよりもいま気になるのは、
パーマネントネックの順ゾリと、トップのブライシング部付近の部分的持ち上がりに関するリペアをどこでするか、ということです。

-3-

じつは、鑑定して頂いた岡山の人も、

「これはマーチンD35の生き写しです!」

「1970年当時、ジュネーブ条約後で新品のマーチンが入手困難になって、それで貞夫さんが純日本製のD35を作ろうとしたのでしょう!間違いありません!!」

というような、ロマン溢れる推察を下さいました。

以後、このギターは、故人の意向を汲んで(違ったらどうしよう...)、

「S.Yairi D35」

と命名されました。

-4-

まずこのギターを入手した経緯なのですが、つい先日、新潟にお住みの御夫婦からオークションにて8万円でお譲り頂いたものです。ご主人が26年前(1974年頃)、豊橋のとある楽器屋さんのショーケースに飾られていたものを当時同じく8万円で新品購入したものだそうです。長年弾き続けていらしゃったそうですが、最近弾く機会が減ってギターが可哀想になったため、大事に弾いてくれる人を探して出品したそうです。

地元の中古屋さんの友人がもっと高い金額を提示していたり、オークション時にも更に高い値がつきそうだったのですが、僕のことを、当時同じく学生の頃の自分を見ているようだと幸いにも気に入って頂き、8万円がついた時点で御親切にも早期終了して頂き、お譲りくださいました。

このギターをオークションで見つけたのは、ブラウザのミスで本当にたまたまでした。さらにその後、奥さんがお嫁に行く前に僕の家のすぐ近くにお住みだったということも判明したりして、正に運命的に出会ったとしか思えません。

ちなみに御茶ノ水の谷口楽器さんには、8万円はちょっと高いかもということをその後言われましたが、僕は満足です。(僕的にはかなり高い清水からのダイブです)

次にこのギターの謎について書きます。

まず付いてた当時のラベルには「No.304, \80,000」と書いてあり、これはYD-304であろうと思っていました。ところが、指板の最終フレット付近には「YD-303」と彫られています。更に、各地のYD-304オーナーの方々に聞いていた話では、3バックのセンターはメイプルであるとのことなのに、これは3つともハカランダです。更に更に、通常ペグはシャーラー製シルバーとのことなのに、これはゴールドです。更に更に更に、通常ヘッドにもネックと同様のインレイがあるとのことなのに、これはネックのみでヘッドにはありません。

前述の御夫婦にお尋ねしたところ、リペア等は全くしていないとのこと。完全にオリジナルだそうです。

これがこのギターの謎です。

別にスペックが違おうが僕は全く構わないのですが、色々と調べるにつれて、S.Yairiというメーカーのもつミステリアスさ、そして何よりも皆さんお話になるその職人魂にすっかり惹かれてしまい、とても興味を持ちました。

少しリペアが必要そうな箇所もあり、詳しいお店や職人さんをしばらく探していたのですが、先日ふと広告を目にしたついでで新しいS.Yairiの販売元であるキョーリツさんにお電話したら、これまたラッキーにも気に入って頂き、おそらくそのギターを実際に作ったのは矢入寛さんで、連絡取れるかもしれないから謎のことも含めて聞いてみてあげると言って下さいました。

というわけでさっそく名古屋に送った次第です。
まだ何の返答もありません。

続報が入り次第、ご報告させて頂きます!!!


田中 文英さん

S Yairi YD-304裏板 これは…
調・弦さんと続けざまに、とんでもないお宝を見せていただきました。
写真を見たとたんに一瞬息をのんでしまいました。
すばらしい楽器です。
25〜6年前にプロになったばかりの友人がこれと同クラスのS.Yairiを使っていまし た。
それもすばらしい音でした。


が…実は私はギターの個別のデータという物をほとんど持っていないのです。
お役に立てるかどうか分かりませんが…

いただいた情報…

  • 1974年頃に作られた、S.YairiのYD-304
  • 指板にはYD-303と書いてある
  • 裏板は3ピースで、しかも付属の札にはNo.304,\80,000と書いてある
  • ロッドが入っていないこと
  • 裏板は3ピース、センターがメイプルではなく、ハカランダである
  • ペグはシルバーではなく、ゴールドのシャーラーが使われています

から、少ない手持ちデータにより推測するに…
YD-304か、305に近いと思われます。

S Yairi YD-304表板 指板に書いてあるというのが良く分からないのですが、焼印でもあるのでしょうか?
ロッドは入っていないのではなく、アジャスタブルでないのではないかと思われます。

マーチンのフルコピーですから、これは当然でしょうね。
ギターの材スペックやハードウェアは必ずしもカタログと一致しないことが多いですし、S.Yairiの様な言ういわゆる「大メーカー」でない製作所は結構スペックを変更します。

S Yairi YD-304ヘッド 特に材は天然物であり、在庫や輸入状況にも影響されますし、ハードウェアに至っては納入ハードウェアメーカーの都合ですから、同一モデルでも異なるマシンヘッドなどは良くあることです。

しかし、この“オールドスタイル”の丸みを帯びたヘッドデザイン…
素晴らしいとしか言いようがありませんね。セクシーですらあります。


YD-300シリーズの特徴は、

Top:ススプルース単板
Neck:マホガニー
指板/ブリッジ:エボニー
で、ポジションマークはドットです。


調べられる限りのデータですが、1970年代初頭に売られていたYD-300シリーズのスペックは以下の通りです。

型番カタログ価格側/背板
YD-302 50,000.('70〜)60,000. ローズ合板
YD-303 60,000.('70〜)70,000. ハカランダ合板
YD-304 80,000. ハカランダ合板/ハカランダ合板+メイプル3p
YD-305 100,000. ローズ合板/ローズ単板3p
YD-306 120,000. ハカランダ合板/ハカランダ単板
YD-307 150,000. ローズ単板
YD-308 200,000. ハカランダ単板

記載は、型番、定価、サイド材、バック材で、一つしか書いてないのはサイドバックとも同一材です。

>このギターはいったい何者なのでしょうか???
>不思議と不安が交錯しまくっとります!!!

お役に立てずに申し訳ありませんが、いずれにしても良いギターであることは間違いありません。
余り型番などに一喜一憂しない方がよいのでは?
形や仕上げが気に入っていて、弾きやすく気に入った音(俗に言う良い音ではなく)が出ればそれは最高のギターですよね。
合板/単板も、合板即ち安物、単板高級品とは一概に決めつけられませんよ。
どんな高級単板ギターでもデッドストックやコレクターが死蔵した物は、愛されて弾き込まれた合板ギターには絶対敵いません。
自分にとって良いギターは価格やスペック、ましてやブランド等では決してありません。

それから、リペアにはそれなりの予算がかかりますので、見積もりを取って、実際に作業して貰うかどうかは「その楽器にどのくらいの思い入れがあるか」という事にかかってくるでしょうねぇ。
ギターは木製の楽器ですから多少の狂いは仕方がない物です。
狂いが増加するなら直した方が良いでしょうが、弾いていて気にならないなら直さないと言うのもひとつの選択肢ですね。
(狂いの許容範囲は人によって大変に異なります。これは良い悪いではなく、ほとんど趣味・ポリシーの範疇です)
>おそらくそのギターを実際に作ったのは矢入寛さんで、連絡取れるかもしれないから
>というわけでさっそく名古屋に送った次第です。

でも、このギターも幸せ者ですね。
本当に良い人から良い人に渡って良かった。

親元(制作者)に里帰りですから心配ないと思いますよ。
一番確実ですよね。あ、問題は治療費かなぁ?
>ちなみに御茶ノ水の谷口楽器さんには、
>8万円はちょっと高いかもということをその後言われましたが、
>僕は満足です。(僕的にはかなり高い清水からのダイブです)

“中古”価格的には確かに高いと思います。
きっと一般的な中古査定ではもっと安い値段が付くのでしょうが、現実に売買される段ではプレミアが付いてとてもこの値段ではなくなるでしょうね。
実際に最近はマニアが血眼になって探しているようです。
でも、S.Yairiに関しては既に“中古”概念で語れるモノではなくなっています。

しかし、コレクションや投機対象のマニアではなく、田中さんのような「きちんと楽器としてとらえる」ユーザーに拾ってもらえたこの楽器は本当に幸福だと思いますよ。


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