GBのアームチェアCinema見ist:となりのトトロ

となりのトトロ

となりのトトロ

監  督 宮崎駿
音  楽 久石譲/斯波重治
主  演 日高のり子
助  演 糸井重里・島本須美
製 作 年 1988
シナリオ 宮崎駿


版権は二馬力・徳間書店、製作・スタジオジブリ
併映:「火垂るの墓−ほたるのはか−」

宮崎駿は常に一定以上の水準を持った作品を送りだしているが、これも又傑作である。画面の美しさは実写を凌駕している。ただ、併映の「火垂るの墓」共々一本でロードショーすべきであったとも思う。(ファンに取っては質の高い映画を一本分の入場料で鑑賞できたことは歓迎すべき事ではあるが…)
案の定幾多の実写映画を全て押さえて当該年度の映画賞を総なめにした作品である。
アニメーションファンとしては喜ばしい限りではあるが、わが国映画界の現状を見るに「たかが“マンガ”」ごときを越えられる作品がなかったと言うことはやはり情けないとしか言いようが無い。

さて、「火垂るの墓」と併映された本作だが、冒頭引っ越しのオート三輪の荷台でサツキとメイの姉妹が食べていた物に気付かれただろうか?
そう、あの黄色い箱の森永ミルクキャラメル。
「火垂るの墓」ドロップから「トトロ」のキャラメルに続くキーワードの連続性。
やられた!と思った。(もっとも、森永ミルクキャラメルは大正時代から変わらずにあるので、殆どの日本人にとっての共通項になるかな?)
トトロは現代の「風の又三郎」と言えるだろう。(ネコバスはチェシャ猫だしね)
誤解無きよう書き添えると、モチーフの類似性を否定している訳ではない。
同じテーマでも作者によってその表現は自ずと違って来るし、宮沢賢二、ルイス・キャロルは、ファンタジーを志すものの憧れと言っていい巨大な存在だからだ。(個人的好みから言ったら、トールキンやC.S.ルイスもそのなかに入れたい)
結論から言えば、「となりのトトロ」は、世間一般のアニメーションへの偏見さえ、何とかなればJAPANESE STANDARD FANTASY として、「ナウシカ」、「ラピュタ」と共に永く後世まで愛される事だろう。(と、公開当時に書いたら、果たしてその通りになってしまった…)

作品と音楽について

私は久石譲氏の大ファンなのだ。
「となりのトトロ」の随所にちりばめられた、独特な“久石調”の楽しい音。これはもう、宮崎作品とは切っても切り離せない、一つの総合アートと言っても過言ではないだろう。
楽しげな、既に内容を想像させるオープニング テーマから、特に真夜中の「早く芽を出せ」の呪文のシーン、そしてサツキとメイを乗せたトトロが松郷の夜空を飛行するシーンの映像と音楽の見事な調和。どちらかと言えば、私はこう言ったシーンに感動をおぼえるのである。
何と言っても、当時の話題をさらったこの2本の映画、2本だて興行がもったいないような、又、素晴らしい2人のクリエータの作品だからこそ2本まとめて見られて良かった、と言うべきか。
 私にはよく分からない。
「トトロ」を目当てで来た幼い子供達に「火垂る」は衝撃が大きすぎると言う意見もあった。
しかしながら、とにかく、あの昭和20年の真夏の空の色、そして昭和30年代の松郷の初夏の日ざし色が忘れられない。

オマケ

サツキ(五月)とメイ(May)が初めてトトロと出会ったのが、1955年
5月(書斎の壁にカレンダーがあった)に気付いたかな?

ちなみに、トトロの語源のトロルは、あのムーミン・トロルのトロルでヨーロッパのファンタジーや神話に登場する、子鬼とも妖精とも解釈出来る不思議な生き物の事。(更にオマケでトトロの声の高木均さんはムーミン・パパの声を演じていた人)

ネコバスが目指したのは七国山(実存の方は八国山というんだけどね)の向こう…

草壁家のお母さんはどう見てもサナトリウムに入院している雰囲気だから、七国山病院はたぶん、昭和17年開設の結核療養所白十字病院がモデルかと…

サツキとメイが住んでいた草壁さんちがあったのは恐らくこの辺り

サナトリウム:sanatorium
高原・海辺などに設け、新鮮な空気や日光を利用して自然療法を行う(主として結核の)療養施設。療養所。
結核療養所。

訂正

はら改めとしやさんから…
草薙家書斎 草薙家書斎カレンダー この写真に写っている1月のカレンダーは1日が日曜日ですから、1955年のものではありません。


早速DVDで確認してみました。
作中に登場する草壁家のカレンダーは、年号は視認不可、5月のカレンダーで一日は火曜日でした。

はら改めとしやさんの草壁家のカレンダーについての考察

草薙家
  1. 愛知万博の「サツキとメイの家」では1月1日は日曜日
  2. 本編の映画では5月1日は火曜日
1955年は1月1日が土曜日で、5月1日は日曜日。1月1日が日曜日で5月1日が火曜日になるのは1956年(1956年はうるう年なので、1月と5月の曜日間隔が1日ずれる)。よって、トトロの世界は1955年ではなく、1956年であると思われます。GBさん、以前1955年だって言ってたよねぇ?サルも木から落ちる、ヲタクも考察を誤る、ということですな。これにて一件落着。

…と言うことで謹んで訂正いたします。
>となりのトトロを歩く

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