GBのアームチェアCinema見ist:劔岳 点の記
劔岳 点の記
監督・撮影 木村大作
脚 本 木村大作/菊池淳夫/宮村敏正
音 楽 池辺晋一郎
原 作 新田次郎(「劒岳 点の記」文春文庫)
出 演 浅野忠信/香川照之/松田龍平/宮崎あおい/仲村トオル/役所広司
製 作 年 2009 日本
原作は新田次郎だから、面白くなかろう筈がない。
カミさんは越中は黒部の生まれ。学生の頃夏の弥陀ヶ原にバイトで住み着いていたこともあるらしい。
映画館で予告編を見たときから楽しみにしていたらしいので、仕事が終わった後呼び出して一緒に観てきた。
(画像は原作となった新田次郎“劒岳 点の記”)
いや…
終わった後、カミさんとの会話はほとんど無かった。
これは…
未だ「劇映画の域に達していない」作品ではないか?
映像は美しい、カメラワークも素晴らしい。
そりゃそうだ、撮ったのは「監督さん」ではなくて、カメラマン一筋の職人さんなのだから。
これだけの俳優を揃えて緊迫感も達成感も何もないというのはある意味もの凄い。
原作の流れは確かに追っているのだが、原作の豊かなストーリーはここには何もない。
単なる美しい自然記録映画、あるいは富山県の観光宣伝映画にしか見えなかった。
劇場パンフレットは2種類用意されている。
通常版とサウンドトラックを収めたCD付き。
当然、鑑賞前にCD付きを買い求めた。
そのサウンドトラックだが…
全編新編曲、新録音だというバッハ、ヘンデル、ビバルディ、マルチエッロ、アルビノーニのバロック音楽。
美しい映像に突然聴き慣れた旋律が遠慮会釈無く入り込んでくる。
確かに録音にも気を遣っており、クオリティの高い演奏をクオリティ高く再生してはいるのだが…
個々の映像は素晴らしいし、そこに流れる音楽も素晴らしい。
でもね、突然ビバルディの四季とかバッハの幻想曲とフーガとか…
余りに発想が貧困陳腐でないか?
そもそもそんな有名な旋律が映像への注意を妨げるのではないだろうか、と考えないところが無神経である。
パンフレットにはCGや空撮を使わなかった、とか、実際に山に入って苦労をした、とかそんなエピソードばかり書き連ねてあるが…
そんなことは観客にとってはどうでも良いことである。
映画はできあがった作品が語るモノが全てである。
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