GBのアームチェアCinema見ist:天空の蜂
天空の蜂
監督 堤幸彦
出演 江口洋介/本木雅弘/仲間由紀恵/綾野剛/佐藤二朗/竹中直人/向井理/石橋蓮司/國村隼/柄本明
脚本 楠野一郎
音楽 リチャード・プリン
主題歌 秦基博「Q & A」
原作 東野圭吾『天空の蜂』
製作年 2015
『天空の蜂』(てんくうのはち)は、東野圭吾の書き下ろし長編クライシスサスペンス小説。1995年11月7日に講談社から単行本が刊行され、1997年11月6日には講談社ノベルス版が発刊された。第17回吉川英治文学新人賞候補作であった。
(Wikipediaより)
一言で言ってしまうと 原発にヘリを落とそうとするテロリストに立ち向かうヘリの設計士と原発の設計士、そしてそれぞれの親子のストーリー」
「すわ、反原発映画か」と思いがちだが、堤監督は「政治的なプロパガンダの映画ではない。あくまで東野先生の原作に基づいた1995年当時の架空の事件の話だ」と強調している。
まぁ、確かに本編では原発に関して表向きには肯定も否定もしていない。
あの、「TRICK」の監督さんなんだ。
ツッコミどころはいくらでも、と言うよりも全編ツッコミっぱなしなのだが。
これは「社会派映画」ではなく「娯楽超大作」として観るべき何だろうなぁ。
とにかくキャスティングも豪勢だし。
ただ、何故いまこの原作なのか?を考えると、単なる「エンタテイメント」作品だとは言い切れない。
何よりも、いつもこうした映画を観るたびに思うのだが“マニア・ヲタク”は映画を純粋に楽しめない。
タイトルバックは暗い背景に鈍い無塗装の大型ヘリが映し出される。
あぁ、もうこれだけで無理…
何だ?この造形は?
「ビッグB」は通常のヘリとは比べものにならない、全長34m、総重量25tもの大きさを誇る、日本最大にして最新鋭の自衛隊用の超巨大ヘリとなる。当初、海自が保有する巨大ヘリをチャーターし、撮影することも検討されたが、最終的に格納庫部分を巨大セットで、ヘリの外観はCGで再現することとなった。
堤監督からの“「とにかくデカい」、「怖い顔」、そして「サンダーバード2号」のイメージ”というリクエストのもと、世界中の様々なヘリと輸送機が調べあげられ、自衛隊機と並行飛行しても違和感がないようにリアリティが追求している。
当初、海自が保有する巨大ヘリをチャーターし、撮影することも検討されたそうだが…
最近積極的に広報活動をしている自衛隊なのに関わらず、航空はじめ自衛隊の協力が全くないのも何となく分かる気がする。
また、原作では海自の所属機なのに何故かわざわざ空自所属としているのが謎である。
エンディングに付け足された原作にはないエピソードが何となく空々しくも痛々しい。
出てくる救難ヘリも…イロコイの民生型か?塗装も変だし機内の様子も旅客機みたいだし…
もうそう言ったディテールのテキトーさでマニアは醒めてしまうのであった。
ビッグBね、寸法だけならMi-26並みか。
Mi-26諸元
乗員:5名(操縦士2名、航法士1名、航空機関士1名、搭載貨物の重量配分や搭載位置などを担当するロードマスター1名)
定員:80名(最大150名)
長さ:40.025m
主回転翼直径:32.00m
高さ:8.145m
空虚重量:28.2t
最大離陸重量:56t
発動機:ZMKBイーフチェンコ=プロフレース D-136ターボシャフトエンジンx2
(各11,240馬力)
超過禁止速度:295km/h
航続距離:1,952km
上昇限度:4,600m
映画サイトによる口コミでは概ねかなりの高評価だ。
高速増殖炉「もんじゅ」がナトリウム漏れによる火災事故を起こしたのが1995年の12月8日。その1か月も前に、高速増殖炉を標的としたテロ事件を題材とした小説を発表していた東野圭吾には驚きを隠せない。
原作は10年程前に読んだが、ふぅん、そうなんだ。程度の感想しかもてなかった。
3.11を経験した今読むとまた異なる印象を持つかも知れない。
原作では原発の是非について中立に描かれていたと記憶する。
一方、この映画は表向きには中立を装っているが、明らかに左寄りに描かれている。
「この国に命を懸ける必要があるか」
「狂っているのが誰だかいつか分かる日が来る」
こんな台詞は東野原作には無かった気がする。
もっとも、このお話、どう転んでも原発礼賛にはならないし、そんな映画を作っても売れる訳もない。
1995年といえば、1993年に細川連立内閣が発足、1994年に羽田内閣を経て村山内閣ができ、翌1995年に阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件と続いた頃。
しかし、世間は原発の安全神話を信じていた。まだ未曾有の災害など誰も想像だにしていなかった、そんな時代。
その時代にこの原作が書かれたというのはやはり凄い事である。
「狂っているのが誰だかいつか分かる日が来る」
今だから言える台詞である。
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