GBのアームチェアCinema見ist:天地明察

天地明察

天地明察

監 督 滝田洋二郎
出 演 岡田准一/宮崎あおい/中井貴一/松本幸四郎/佐藤隆太/市川猿之助/笹野高史/岸部一徳/横山裕(関ジャニ∞)/市川染五郎/きたろう/尾藤イサオ/真田広之(ナレーション)
脚 本 加藤正人/滝田洋二郎
音 楽 久石譲
原 作 冲方丁「天地明察」
製 作 年 2012


これ、観たかった。
あの滝田洋二郎(おくりびと)がまた、久石譲を音楽に迎えて、各賞を受賞、直木賞候補ともなった作品の映画化。

カミさんは、単にイケメン映画として捉えていたようである。
理由は違えど目的は同一なり。

で、見に行った。

原作は、冲方丁による日本の時代小説である。第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞し,第143回直木賞の候補となった。

結論から言うと…

本書で使われている「明察」という言葉は、算術の解答が正しかった場合につけられるので、「大変よくできました」的な意味合いがあるらしい。

「たいへんよくできました」

かな…

実際には先に文章を読んでしまっていると、かなりのダイジェストだし、スケール感も異なる。

文章の方が数段壮大なのである。
キャスティングは、なかなかイメージ通りではあるのだが、長尺とはいえたったの2時間一寸に納めるためには致し方がないのか。

最初のシーンからして、なんだか矮小だな…と感じてしまった。

各登場人物の描き出しもなんだか通り一遍である。
文章の映像化を文章そのままに行うと言うことはあり得ないのだが、かなり物足りないことは確かだ。

そもそも原作は、「専門家ではない」物書きが、和算と暦学という、一般には殆ど知られていない(私もよく知らない)分野を元に歴史上の事実をフィクションとして描き出したモノで、参考文献として使われたり引用されたりした学者筋からは、かなり苦言が呈されているようではある。

しかしね〜…
あくまでもフィクション、娯楽小説なんだから、大筋合っていれば良いんじゃないの?
大体、本作にも登場する水戸光圀、黄門様の漫遊記なんて、全て後世のでっち上げなんだし。

こう言う史実が、それに近いことが、かつて自分の国であったんだよ、と言うことを知るだけでも貴重なんじゃないかな?
大体ね、本作、本筋は純愛ラブストーリーなんだろうから、その辺りで観ればご明察なんだよね。
(だから、原作にある二人とも死別再婚者であるエピソードは出てこない)

ひとつ気になったのは…北極出地に向かう一行が歩数を計るために「おいっちに」の軍隊式行進をするシーン。

古来より腰を帯で締める着物生活をしていた日本人は独特の歩き方をしていた。
ナンバ歩き、と言う。
西洋軍隊行進式の歩き方では左右逆の手足が交互に前に出るが、古来日本人は右手右足を同時に出す歩き方をしていた。
140年前の江戸時代までは、日本人すべて「ナンバ歩き」だったという。
もちろん、走る時も右手右足が一緒で、飛脚の絵などもナンバで走る姿が残っている。

日本人の歩き方は、明治維新の文明開化の富国強兵の波が強く影響を及ぼした軍隊、教育で西洋文化が全ての面に導入され、日常生活も着物ら洋服に変わり歩き方もナンバ歩きから現在の行進の歩き方に変わったということ。

江戸時代の人が、それも帯刀をしたひとが「おいっちに」をするわけがないのである。
刀がぶつかって上手く歩けない筈だ。


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