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旅歌ダイアリー2 後編

ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2 後編

監督 加藤肇
編集 加藤肇/小野寺絵美
撮影 上地惟孝
出演 ナオト・インティライミ
製作 2017年


カミさんが映画を見に行くという。
もう複数回見ているというカミさん、前回、前々回お誘いがなかったのは、彼女がファンのナオト君のドキュメンタリーだったから。
私ゃそんなに興味ないしねぇ。
所がこの映画、ドキュメンタリーの様で、
「ヨーロッパの田舎からアフリカ歴訪音楽の旅だから、民族音楽が沢山。アフリカ音楽が多いけど、現地のジプシー音楽もあるよ。」
って、そういう話なら言ってよね、と、この日は劇場に入った物の空き席なく。

今日は多分空いているとのことで付いていった。

シンガーソングライターのナオト・インティライミは「売れたはいいが、音楽を純粋に楽しむ時間がなくなってしまった」と思い世界へと飛び出す。デビュー前に515日間をかけて28カ国を旅したナオト・インティライミは自分のルーツを探しに旅に出たのだ。前編ではアフリカで現地人と音楽を嗜むナオト・インティライミが映し出される…

と言う事らしい。帰ってきてから気付いたのだが、なんと今日見たのは“2”とナンバリングされた作品の、それも“後編”。

正直言って、私は彼のファンでも何でもない。
大ファンのカミさんのお供で夏のイベントについていったことはあるが、「まぁ、なかなか上手いんじゃない?」とは思う物の、彼の歌は特に心に残る様な物ではなかった。

鑑賞後、“2”があるなら“1”はどうだったのよ?とざくっと調べたら、「世界を旅して音楽を作る」、要するにネタ探しで海外を旅をしたと。それ故に、Twitterでは一時期ナオト・インティライミの本作での行為が無礼だ、失礼だと炎上したそうな。

前編は見ていないが、この後編では彼の姿勢は違う。
この後編では、セネガル共和国、コートジボワール共和国、マダガスカル共和国、ガーナ共和国、南アフリカ共和国、ルーマニア、ドイツ連邦共和国+アメリカ合衆国(スウェーデン王国にも行ったらしいが本編には描かれない)での冒険?が綴られる。

何だか彼はアプローチが違う新時代の小泉文夫なのか?

まず、到着した現地でCDをしこたま買い込んで聴きまくる。
そして、街に出て現地のミュージシャンに教えを請い、子供達と遊ぶ。
もちろん行く先々で現地語での「ありがとう」も訊き出し力一杯お礼の気持ちを伝える。

ジェンベ(セネガルではジャンベと言わないらしい)を教わるシーンでは苦戦しながらも、流石のリズム感で彼の能力を垣間見た。
現地人と丁々発止と渡り合う姿緊迫感は溢れる。
奴隷市場の跡地に佇み独白する姿に青年の純な心を見た。
なかなか扱えない民族楽器にも、ごろつきにも怯むことなく、しかし「旅人として」現地に溶け込もうとする姿は一寸感動的だ。
ルーマニアのジプシー(ロマ)とのふれ合いは一番期待した物だが、音楽的には一寸物足りない。
持って生まれた物か、世界放浪の末に得た物かは解らないが、この青年には、人と繋がって行く強い力があるのかも知れない。
それがガチなのか仕込みなのかは解らないが、“ドキュメンタリータッチ”の旅行記としては、かなり上質な物に思える。
映像も音も劇場映画としては決して上質ではないが、少なくともTVの世界紹介物とは些か次元が異なる一人の旅人の姿がそこにあった。

民族音楽を巡る旅…を想像してみたので、一寸肩すかしだが、それを差し引いても興味深い作品ではあった。

う〜ん…
なかなか素敵な若者だな。

映画を見終わって外に出たら、渋谷の街は妙に白々しくキラキラしていた。


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