GBのアームチェアCinema見ist:しゃべれどもしゃべれども

しゃべれどもしゃべれども

しゃべれどもしゃべれども

監  督 平山秀幸
音  楽 安川午朗(主題歌:ゆず)
主  演 国分太一
助  演 香里奈、森永悠希、松重豊、八千草薫、伊東四朗
製 作 年 2007
シナリオ 奥寺佐渡子
原  作 佐藤多佳子


いえね、昨晩ですがね、カミさんが「明日映画行かない?」てぇんですよ。
有り難いねぇ…
夫婦50割引とやら、様々だねぇ。

で、ナニ見に行くんだぃ?って。
いや、知らなかったんですがね、この映画。
何でもジャニーズだかトーキョウトだかの一人が主演だってぇんだから、アタシが知らないのも無理ぁねぇ。

ふぅん…
で、ナンだって?噺家のおはなしってぇんかぃ?
そいつぁちょいと面白そうだねぇ。
ナンでぇ、伊東四朗も出てるってそぃつぁいいねぇ…

ってな訳でお供してきやした。

いえね、これ、好きですよ。
良かったねぇ、なかなか。
東京の、それも未来都市みてぇなとんがったビルジングを遠景に霞ませる長屋横丁(こりゃ、池袋界隈ぢゃねぇか…)、水上バスが飛沫上げる隅田川、人混みでごった返す浅草六区からほおずき市、都電の窓から見える街々の生活…
そして、あちこちの高座。

景色の良さもなかなかなモンだけどね、トーキョウトだかのアイドルの国分太一、これが良いんだわ、実に。
こういう粋で頑固な若い衆、いるんだろうね、まだ。
子役も最初は不細工な餓鬼だねぇ…と思ったモンだが、物語が進むに連れて、これがいい顔になっていくんだわ。達者な餓鬼だねぇ。
もちろん、伊東四朗はそりゃぁ良い味出してるし、八千草薫が江戸前の粋な婆ちゃん気持ちよく演じてるしねぇ。

しゃべれどもしゃべれども なにより相手役の香里奈、この娘がいいんだ、また。
最初はツンケンとんがって、何だか可愛くねぇなぁと思ったけどね、だんだん良くなる火焔太鼓ってねぇ。
地味だけど粋な浴衣姿にゃどきっとしちまいましたぜ。
(あたしゃぁ、この娘、知らなかったよ、今まで…ちょいと口惜しい)

大きな事件は何も起こらない、追いかけもなきゃスリルもサスペンスもない。
そんでもね、庶民の生活ってぇのはこうして流れて行くんだよ。

日本映画の良さは出てるねぇ。
こいつぁ佳作だ。


そんな訳で、カミさんのお供で活動見に行ってね…
おとついまで、こんな映画知らなかったんですけどね。
なんつっても、主演がジャニーズだってぇんだから、アタシにゃぁそもそも興味ない。

ところがどっこい、こいつが拾いモンでねぇ。
なかなか良かったんだよ。
じつは、原作があってね。
帰りにね、原作買ってきちまったてぇわけで。

もうお10年も前の本なんだけどね。
児童文学の佐藤多佳子が初めて大人向けに書いた小説。

しゃべれどもしゃべれども しゃべれどもしゃべれども(文庫)
佐藤多佳子(著)

文庫: 421ページ
出版社: 新潮社 (2000/05)
ISBN-10: 410123731X
ISBN-13: 978-4101237312

こりゃぁね、映画も悪くなかったけどねぇ。
出来りゃぁ、映画を先にした方が良いねぇ。
原作の方を先に読んじまうと、多分、映画が物足りなくなっちまう。
やっぱり、映像は文章を越えられねぇんだてぇことをさ、また実感しちまったぃ。

児童文学の作家さんらしいんだけどね、そのお人が初めて大人向けに書いた小説だ、てぇんだけどね。

これがさ、ぽんぽんぽぉんと間合いが良いんだ。
江戸前だね、気っ風が良い文章てぇやつだね、アタシャ好きだよこう言うの。
なによりね、お話しも面白ぇや。
一人称で、落語家が主人公で、その語りで進むてぇんだから、テンポが良いなぁあたりめぇだろうけどね。こりゃ相当な書き手だね。

映画にゃ尺てぇのがあるから、どうしても話ぁ薄くなっちまうね。
映画も舞台を吉祥寺から、下町に移して雰囲気を盛り上げたとか登場人物を減らした位であとは大体原作の通り流してるけど、これは別モンだね。
映画見た直後に読んでも、数ページでアタシの頭の中の主人公は国分太一じゃなくなってたもんな。

無器用で、要領の悪い奴らばかり出てきやがって、それでも、語り口の良さで話はどんどん進む。

何が起こるてぇ訳じゃねぇんだが、ハラハラドキドキ、時々クスリ、そして何となく気持ちが暖かくなっちまう、これはかなりお奨めな本だね。

一言で言っちまえば、落語を借景した青春恋愛小説ってなモンなんだけどね…
惚れた腫れたの泥臭い色恋じゃない結末も爽やかだねぇ。


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