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レッドタートル

レッドタートル ある島の物語(The Red Turtle/:La Tortue rouge)

監督 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
脚本 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット/パスカル・フェラン
原作 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
音楽 ローラン・ペレス・デル・マール
製作年 2016


キャッチコピーは『どこから来たのか どこへ行くのか いのちは?』(谷川俊太郎)。
(って、ゴーギャンかぃ?)

宮崎駿(高畑勲)ワンマン・カンパニーのジブリもいよいよ継ぐ者が見つからず、外注に走ったか?
もう、終わりかな?

と、思いつつ初日初回を観に行った。

相当な話題作でない限り、大抵の映画は初日初回は空いているものだが、いや…これは…
キャパ208名の客席に観客は私を含めて8名…

ヤバくないか?いくら何でも。

帰ってきてから、Webのレビューを読んでみた。
もう、ぼろくそで惨憺たるもの。

どうやら“ジブリ新作を期待”した観客には受け入れられなかったようだ。

しかし、私の結論を言うと…

“これは傑作だ”

少なくとも宮崎駿の呪縛から逃れられずに、完全に混乱の迷宮に紛れ込んでしまった前作とは一線を画す。
偉大な創設者の後を追って自分を見失ってしまってどうする。

新たな一歩というのはこう言う事なのではないかと思う。

しかし、大ジブリも随分思い切った事をしたものである。
感覚的には、本来ならロードショー上映の大衆作品ではなく、マニアが集う単館などで上映されるような作品。また、そうであれば観客の評価は全く異なったものとなっただろう。
スタジオジブリ初の海外共同製作作品。

そう、これはフランス人(出自はオランダ人だそうだが)が作った古き良きフランス映画の血を引く世界。

カンヌ国際映画祭に「ある視点」部門の特別賞を受賞したらしいが、「視点を変えて物を見る」事が出来ないと、この作品は、実に退屈な物になるだろう。
そもそもカンヌで評価される作品は特殊で一般ウケしない事が多い。その中でも「ある視点」という…推して知るべしである。

とは言え、この手の話は我が国にも沢山ある説話類型。
「鶴の恩返し」やら「浦島太郎」やら「羽衣伝説」やら…

異類婚姻譚

ともあれ、“いつのもジブリ”作品として子連れていったりすると、かなり痛い目を見てしまうかも知れない。

無言劇である事は事前情報で知っていた。
ストーリーの大まかな流れも。

地味で、静かな、そして美しい。一幅の水墨画のような画面と、言葉のない静謐。
人物の表情も敢えて乏く描かれ、喜怒哀楽はそこには発露していない。

情景描写のみで描かれるので、そこに何が起こっているのか、人物の感情はどうなのか、全て見る側の観念に委ねられる。

無言劇として、映像そのものも押さえた色調と作画で、しかし表現されたものはストーリーも含めて圧倒的に美しい。
オープニングからエンドロールが終了して客席のダウンライトが灯るまで一貫して美しい。

この年になって漫画映画で涙するとは思わなかった…

いや、逆に人生の黄昏を迎えた人間だから、涙するのかも知れない。



レッドタートル ある島の物語(原題:The Red Turtle、仏題:La Tortue rouge)は、2016年に公開された日仏合作のアニメーション映画作品である。スタジオジブリ初の海外との共同製作による作品であり、オランダ出身のアニメーション作家、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットが監督を務める。この他、フランスの映画監督・脚本家、パスカル・フェランが脚本を担当し、高畑勲がアーティスティックプロデューサーとして製作に携わっている。
第69回カンヌ国際映画祭・ある視点部門で特別賞受賞。第41回トロント国際映画祭・ディスカバリー部門出品作品。
(Wikipediaより)




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