GBのアームチェアCinema見ist:星の王子さまと私

星の王子さまと私

リトルプリンス 星の王子さまと私:原題 THE LITTLE PRINCE

監督 マーク・オズボーン
脚本 イリーナ・ブリヌル/ボブ・パーシケッティ
原作 岩波書店『星の王子さま』内藤濯:訳他
吹替 鈴木梨央/瀬戸朝香/津川雅彦/伊勢谷友介/滝川クリステル/竹野内豊/壤晴彦/土師孝也/ビビる大木/坂口芳貞/池田優斗
音楽 ハンス・ジマー/リチャード・ハーヴェイ
日本版主題歌 松任谷由実「気づかず過ぎた初恋」
製作年 2015仏


数ヶ月前に劇場で予告を見て、サンテックス好き、飛行機好きとしては、これは見ないとな、と思っていた作品。

読んだことはなくとも誰もがその書名だけは知っている「星の王子さま」の“その後”を、原作のエピソードと並行して描いていく物語。
進学校への入学を目指して日々勉強に追われる9歳の女の子が、年老いた飛行士から、何十年も誰にも打ち明けなかったという“星の王子さま”との出会いの物語を聞き、思い出を分かち合うことでかけがえのない絆を深めていく。

“現実世界”を最先端のCGアニメーションで、“星の王子さまの世界”を和紙と粘土を使ったストップモーションアニメーションで描くハイブリッド・アニメーションで制作されている。

はっきり言って、CGアニメーション、誰が作ってもノッペリ超リアル「まるで絵に描いたような美男美女」かピクサー由来のプロポーション・デフォルメが激しく、やたら目がでかい人形かで、はっきり言って余り魅力を感じないのだが…

星の王子さまと私
この作品はストップモーション・パートが素晴らしく、CGパートもまぁ、「もう慣れたし」で、鑑賞の流れは妨げないよという印象。つながりにも違和感はない。

少し気になったのが、“現実”と“幻想”の対比を強く出したかったのか、主人公の女の子を取りまく色調も含めて徹底的無機質な環境、あまりに戯画的に強調された教育ママ、や事なかれ拝金主義の大人たちのステロタイプ。
まぁ、分かりやすいというかわかりやすすぎる、と言うか…

“幻想”パート、私はとても好きだが、これだけ読み継がれた作品。「それぞれの人にとっての星の王子様」があるはずなので、制作者の“独自解釈”も含めて原作に強い思い入れのある人には辛いかも知れない。

やはり、愛読者にとっては内藤濯(1953年3月)の訳、岩波書店『星の王子さま』が底本で、全てのイメージはそこから発しているのだ。

原作は日本では岩波書店が独占的な翻訳権を有していたが、原著の日本における著作権の保護期間がサンフランシスコ平和条約に基づく戦時加算分の3794日を含めて2005年1月22日に満了し、論創社・宝島社・中央公論新社など数社から相次いで新訳が出版された。ただし、日本語の書名である『星の王子さま』は、岩波版の翻訳者であるフランス文学者の内藤濯によるもの(直訳では『小さい大公』)であるため、新訳本の出版の際には新訳にふさわしい別の書名をつけるか、本の扉裏やあとがきに内藤濯の考案であることを明示してほしいと、岩波書店などは要望している。
フランスを始めEU加盟国の著作権保護期間は個人の死後70年であり、死亡宣告で1944年没と認定されたサン=テグジュペリの保護期間満了は通例では2014年であるが、サン=テグジュペリはフランス著作権法第123条の10における「愛国殉職者」の認定を受けているため、フランス国内では2044年まで著作権が存続する予定である。著作権の保護期間を世界最長の「死後100年」と定めているメキシコでもフランスと同様に2044年まで、アメリカ合衆国では1978年のベルヌ条約加盟以前に旧法下で保護期間を満了しなかった著作物に対する特例に基づき「死後95年または公表後120年のどちらか短い方」の前者が適用され2039年まで著作権が存続する予定。カナダやニュージーランドでは1994年末に保護期間を満了し、パブリックドメインとなっている。
(この項Wikipediaより)
どうやら今回の日本公開では吹き替え版のみの上映らしいが、オリジナルではマリオン・コティヤールなども声を当てているらしい。
そっちも聞きたかったな。

日本語版のエンディングテーマを松任谷由実・ユーミンが書き下ろし、唄っているのも話題になっている。
ユーミンはデビュー当時からのファンで、エンドロールで流れるユーミンは、悪くはないが…
その後で流れるオリジナルのエンドテーマだけの方が良かった気もする。

星の王子さまと私
さて、ヒコーキ好きの観点。
作品に登場する複葉機だが、これは多分、SPAD S.VII(SPAD VII、S.VII、SPAD 7)と言う名の、フランスのスパッド社が開発した、高速戦闘機として第一次世界大戦やその後の各地の戦闘で使用された機体がモデルになっていると思われる。

 初飛行:1916年
 翼幅:7.82 m
 全長:6.08 m
 全高:2.20 m
 翼面積:17.85 m2
 空虚重量:500 kg
 通常離陸重量:705 kg
 発動機:イスパノ・スイザ 8Ab/8Ac ×1
 出力:180 馬力
 最高速度:212 km/h
 巡航速度:187 km/h
 飛行継続時間:1時間30分
 飛行上限高度:5550 m
 乗員:1 名
 武装:ヴィッカース製 7.7 mm機銃 ×1
  (この項Wikipediaより)


星の王子さまと私
SVIIはスパッドの初期モデルで第一次大戦の戦闘機の中でも最強クラスの傑作機、
エンジンの耐久性、武装の貧弱さが欠点とされるが、強力なエンジンと頑丈な機体で傑出した戦闘機であった。
3500機以上が生産され、後にイタリア、ベルギー、アメリカ、ロシアなど世界各国で使用され、大日本帝国でも陸軍で購入された機体が試験運用されたが、軍備としての採用はされなかった。
しかし、日本人で唯一のエースパイロットである滋野清武の愛機WAKATORI号があった。

実機は水冷エンジンで、一見空冷にも見えるカウリング内にはラジエターがある。
映画に登場した機体のカウリング内には空冷ノーム星形エンジンのフィン付放射状シリンダの様な物が描かれているが、スパッドの特徴的な直列エンジン特有の排気管が機種に明確に装備されている…等と言うことを気にしてしまうから、マニアは映画を見づらいのだな。




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