GBのアームチェアCinema見ist:おくりびと

おくりびと

おくりびと

監 督 滝田洋二郎
脚 本 小山薫堂
出 演 本木雅弘/広末涼子/山崎努/余貴美子/杉本哲太/山田辰夫/吉行和子/笹野高史
原 作 青木新門(「納棺夫日記」)
音 楽 久石譲
製 作 年 2008

夫婦50割引今日は、カミさんと二人。
いつものシネコンのど真ん中一番良い席が手に入り、着席して気付くと…

カミさん
「もうじき送られそうな人ばかり…」
そう、“夫婦50割”で入場した我々が一番若い…
(いやはや、夫婦50割とシルバー割の半額客ばかりでは儲からないよな…)


おくりびと 人は必ず死ぬ。
しかし、死ぬまでは、ちゃんと生きていないとならない。「困った事に…」

納棺師と呼ばれる余り馴染みのない職業の話なので、もちろん全編を通して葬式のシーンは多い。
それ以上に「モノを喰う」シーンが目立って多い。
生きるためには生き物の命を奪って喰う。
そして、生きるために、生を確かめるために性の営みを行う。
(期待しても残念ながら濡れ場はないぞ)



おくりびと 端整な顔立ち故に、ともすれば無表情に見える本木雅弘が良かった。
ミスキャストという批評もある様だが、広末も悪くなかった。

人が生きてきた事を、残された人のため儀式として執り行う職業。 そこには美の極致がある。

本木雅弘演じる「納棺師」が執行する儀式、それは所作ひとつひとつが指先まで神経が行き届いて、美しい。

周囲の人々の、妻からさえも「穢れの業」と蔑まれ、それでも「おくりびと」としての使命を全うし続ける夫。


周囲の人々の、妻からさえも「穢れの業」と蔑まれ、それでも「おくりびと」としての使命を全うし続ける夫。

職を失った元オーケストラのチェロ奏者という設定の主人公の「芸術家の指」が、死出の旅へ向かう人々へ精魂込めた技で餞を添える。
そして、その指が紡ぎ足す誠意から人々の心が開き、暖かくつながって行く…

滝田洋二郎、あぁ、この人「秘密」を作った人なんだ…
「秘密」では、原作との解釈の違いに、多少釈然としないところはあったが、「人を見つめる」事が出来る監督なのかも知れない。


滝田洋二郎、あぁ、この人「秘密」を作った人なんだ…
「秘密」では、原作との解釈の違いに、多少釈然としないところはあったが、「人を見つめる」事が出来る監督なのかも知れない。

納棺師と呼ばれる、余り身近でない(敢えて)職人の執り行うひたすら美しい死の儀式は、一度でも親しい者を出棺した過去があるなら、必ず何か感じ入るところがあるだろう。
私はラスト近くの石文(いしぶみ)のエピソードで涙が止まらなかったが…

太古、人々がまだ言葉を知らなかった頃、遠く離れた恋人へ自分の想いに似た石を探して送ったという。
もらった方は、その石をギュッと握りしめて、その感触や重さから遠くにいる相手の心を読み解く…

淡々とした物語展開、そして、美しい人と人との繋がり。
山形・庄内地方の移り変わる四季もまた、ひたすら美しい。

音楽は久石譲。
独特の久石節を押さえた、これも淡々と穏やかな旋律を紡ぐ。
チェロの独奏、アンサンブル、爪弾くピチカートの子守歌…
そして、全く無音の間(ま)。
音楽もまた美しい。

第32回モントリオール世界映画祭・グランプリ受賞作品だそうだ。
外人にも、こういうのは分かるのだろうか?

青木新門の原作“納棺夫日記”の映画化だと言う。
パンフレットにはひとことも触れられていないのだが…

おくりびと 納棺夫日記 (文春文庫)/青木新門(著)

文庫: 227ページ
出版社: 文藝春秋; 増補改訂版版 (1996/07)
ISBN-10: 4167323028
ISBN-13: 978-4167323028

おくりびと (小学館文庫 も 3-4)/百瀬しのぶ(著)
こちらは映画のノベライズ
おくりびと
文庫: 189ページ
出版社: 小学館 (2008/7/4)
ISBN-10: 4094082840
ISBN-13: 978-4094082845

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