GBのアームチェアCinema見ist:日輪の遺産

日輪の遺産

日輪の遺産(THE LEGACY OF THE SUN)

監 督 佐々部清
出 演 堺雅人/中村獅童/福士誠治/ユースケ・サンタマリア/森迫永依/八千草薫/八名信夫
脚 本 青島武
音 楽 加羽沢美濃
主題歌 元ちとせ「永遠(とわ)の調べ」
原 作 「日輪の遺産」浅田次郎
製作年 2011


「シャンハイ」にも心惹かれたのだが…
事前情報で余りに酷評が多かったので、製作決定が報じられた時から観たかったこちらへ。

『日輪の遺産』(にちりんのいさん)は、浅田次郎による長編小説である。1993年8月に青樹社から刊行された。

浅田次郎の処女作は「地下鉄(メトロ)に乗って」(2006年映画化)とされているが、実は本作がそれよりも先に書き上げられているという。
作者によるとこの二作は兄弟であり、背景を共用しているのだ。

角川映画系で2011年公開の日本映画。浅田次郎の同名小説を原作に、太平洋戦争終戦末期、マッカーサーの財宝を巡る極秘作戦に関わった4人の帝国陸軍将校たちと20名の少女たちの運命が描かれる。

キャッチコピーは「いつか、この国が生まれかわるために」「浅田文学の原点。復興に信念を貫いた4人の男と20人の少女たちの運命。」。


日輪の遺産 原作とはかなり内容が違う。
もっとも原作が上梓されたのは1993年、もはや10年近く前なので、原作の設定がそのまま使えないのは仕方のない事だろう。

かの戦争の終結前後を描いた作品である。
混乱の中で、「人としての矜持」を保ち続ける人々が哀しくも美しい。

特に堺雅人、中村獅童、福士誠治、ユースケ・サンタマリア、この4人。
原作とはかなりキャラクター構成も異なるので、どうなる事やら、と思って観たが…
なんとまぁ、素晴らしいキャスティングをした事だろう。


堺雅人、上手いなぁ…原作とは全くイメージが異なるが、完全に私の中のキャラクターを書き換えてくれた。
中村獅童、こういう役は他に人選しようがないかも知れない。
個人的には中村獅童、あまり好きではなかったし、ただただ粗野な下士官みたいな印象しかなかったが、いや、この役はこの人でないと。
福士誠治、この人もなかなかの良い役者になった。劇中で頭だけのエリートからどんどん成長して行く姿が凄い。
ユースケ・サンタマリア…穏やかながらアカの危険思想(戦時中のね)を持った教育者、いや、そのまんまじゃないか。

気づかなかったが級長さん、ちびまる子だった子か…大きくなったね。そして、良い役者さんになったね。
八千草薫…もう言うことはない。

戦時中の話だが、ドンパチがあるわけではない。
もちろん、終戦周辺の話なので犠牲者は出るが、殆どが「人としての矜持」を全うする。

日輪の遺産

原作を読んで流れを知っていたからかも知れないが、少女達が整列して敬礼をするシーンでつい目頭が…

日輪の遺産 いたいけない子供達をこんな目に遭わせてはいけない。
本編は決して反戦映画などではないが、やはりそうした感想は間違いなく発生するのだと思う。

時間が許すなら、日本人として未来を見つめ直すべき今、この作品は観ておいて損はない、と思う。


ただ、かなり長尺(上映時間134分)のこの作品、映画としては少々冗長だった様にも思える。
特にエピローグの各登場人物の去就の描写は些か蛇足に過ぎたかも。
冒頭に現在を据え過去に遡って見せ、終盤に現在に戻ってくる、と言う黴が生えかかった類型的な構成も今ひとつに感じた。というか、その構成が本作を一気に詰まらなくしているのではないかとすら思える。
2時間程度に抑えてもう少し凝縮した方が良かったのでは無かろうか。
原作をここまでいじったのなら、もう一工夫欲しかった所である。

かなりの佳作なのに勿体ないなぁ…

封切り二日目、それも日曜のお昼だというのに5割に満たない入り。
観客の殆どは少なくとも50代かそれ以上。
いや、一寸心配になってしまった…

主題歌が元ちとせ「永遠(とわ)の調べ/原曲:スコットランド民謡アニー・ローリー」とクレジットされるが、本編でもエンドロールでも流れない。
(どうやらキャンペーンのみに使われた様だ)
申し訳ないが、彼女の独特な歌唱は沖縄民謡やオリジナルでは効果的かも知れないがトラッドであり文部省唱歌のこの曲に関しては“キモチワルイ”としか言いようがない。
作中で使われなかったことは本作にとっては歓迎すべき事かも知れない。

映画「日輪の遺産」のご紹介(稲城市)


return目次へ戻る