GBのアームチェアCinema見ist:風の谷のナウシカ

風の谷のナウシカ

風の谷のナウシカ:NAUSICAA

監  督 宮崎駿
音  楽 久石譲/斯波重治(音響監督)
主  演 島本須美
助  演 
製 作 年 1984
シナリオ 宮崎駿


版権は二馬力・徳間書店・博報堂(共同製作)配給は大映・プロデュース高畑勲
テーマ曲(イメージソング)「風の谷のナウシカ」は松本隆作詞・細野晴臣作曲
毎日映画コンクール、第2回日本アニメフェスティバルアニメ大賞、文化庁優秀映画製作奨励賞、全国映連賞日本映画作品賞、第7回アニメグランプリ、第14回パリ国際SF & ファンタジーフェスティバル特別審査員賞、キネマ旬報読者ベストテン一位他
特に今更何も言うことはない程評価されているのだが、原作(アニメージュ:休載後'90より再開、完結)が余りに壮大すぎるので2時間枠に押し込めたこの作品はどうしても食い足りなさが残る様な気がする。

公開時は失敗とまで言われた程度の興行成績だったらしいが、その後高まる評価と、その内容の上面のみの理解で、「ナチュラリスト・エコロジストの象徴」化されてしまったことは、作者宮崎にとっては不幸なことだったのかも知れない。

「風の谷のナウシカ」といえば、このアニメーション映画が一般的なのだろうが…
この映画、実は壮大な原作への超ダイジェストの予告編でしかないのではないかと思う。
(筋そのものは原作とはかなり違う。ストーリーや登場人物、背景思想も、もちろん原作より数段薄い)

原作は月刊誌に不定期連載(作者が映画の仕事に入るたびに中断)され、読者からは「永遠未完」になると言われ続け、それでも足かけ12年かかって何とか終了した、紙メディア漫画である。
本気の研究者の解読・評論書が両手で数え切れない位でている、すでにある種の研究題材ともなってしまっている作品なのだ。
しかし、純粋に読んで、純粋に泣くのもいいかもしれない。
(ほんとに涙こぼれそうになるんよ…マヂで)



青き衣の者…

劇場版では一番重要なキーワードになっている「谷の伝承」だが…
原作では「青き衣の救世主伝説」を否定することから物語が急展開する。
最終的に主人公は「金色の野に降り立つ救世主」になったかのような完結を迎えるが、そんなことは実は全編通せば些末な出来事になっている。

原作は、劇場版のような「単純明快ハッピーエンド」ではなく、限りなく悲壮な希望を抱き、それでも力強く歩き続ける。
それを悲劇と言うにはあまりに暖かさに溢れている…
と言う印象だろうか?

何故、この姫君がこれほどまで人の心を捕らえるのか…
類い希なる理性と知性、(恐らく)処女でありながら備える、計り知れない程大きな母性を持っている…から、なのではないかと、私は考える。

原作、全7巻、未読であれば、是非お薦め!

きましたね、風が。優しいが猛々しい風が…


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