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ストックホルムでワルツを

ストックホルムでワルツを(原題:MONICA Z/英題:WALTZ FOR MONICA)

監 督 ペール・フライ
脚 本 ペーター・ビッロ
音 楽 ペーター・ノーダール
出 演 エッダ・マグナソン/スペリル・グドナソン/シェル・ベリィクヴィスト
製 作 年 2013スウェーデン

これは観なくてはな…

とは言え、仕事帰りに観ようにも上映が午前中のみってんだから仕方がない。
上映館も都内だと有楽町と新宿のみ。
まぁ、はっきり言って当たりそうな映画でもないしなぁ。

ご用納めて月曜日、ビル・エヴァンスに敬意を表し、黒のセル縁眼鏡を掛けて朝から新宿まで出かけた。

この映画館「武蔵野館」が新宿は角筈に発足したのは1920年、アメリカ合衆国で憲法修正第18条(禁酒法)が施行され、世界初の本格的な定時ラジオ放送が営業開始。
大日本帝国、国際連盟に正式加入という年。
その3年後の1923年9月1日、関東大震災で被災するも、同年10月6日に営業再開。大戦を生き残り、現在も武蔵野館1:133席、武蔵野館2:84席、武蔵野館3:84席の3館で営業を続けている、老舗劇場である。

さて、本編であるが、ジャズピアノの巨人、ビル・エヴァンスの不朽の傑作曲“Waltz for Debby”に歌詞をつけてヒットさせたスウェーデンの歌手・女優、モニカ・ゼタールンド(Monica Zetterlund、本名:Monica Nilsson。1937年9月20日 - 2005年5月12日)の半生記。

先入観を持ちたくなかったので、事前には全く情報収集せずに行ったのだが…

これは…

はっきり言って音楽映画としてはもの凄く良い。
なによりもウッドベースの音がちゃんと聞こえる録音はエクセレントだ。
選曲もかなり素敵だ。
「私は好奇心の強い女」の映画監督、ヴィルゴット・シェーマンが出てきたり、トミー・フラナガン・トリオやエラ・フィッツジェラルドのそっくりさんが登場する等、映画・ジャズファン(たいていこの二つは重なる)はニヤリとしてしまう。

ただ、本作で描かれる主人公のモニカは…何なんだ、この女は。

チャンスが訪れれば他の事はすべて放り出してしまう。一般的なサクセスストーリーとは程遠い、極めて自己中心的なヒロインはわが子を置き去りにし父と対立してもステージに立ち続け、利用価値のある人間を踏み台にしてひたすら成功への道を突き進む。

ううむ…

彼の地では国民的歌手だったらしいが、物語が実話に基づくとしてもこの制作者は一体彼女をどう伝えたかったのだろう?

映画サイトのレビューでもやはり、彼女の打算的で身勝手で男を利用してのしあがろうとする姿勢への嫌悪が目立つ。

何となく、反応に男女間でかなり温度差があるような気もする。
彼女の生き様に対する嫌悪は男性からのものが多い。
私にもはっきり言ってただのワガママ女の半生記にしか見えなかった。
本作は男と女と、また趣味の立ち位置によってかなり評価が異なる作品だと思う。

ストックホルムでワルツを ただ、音楽映画としての作りは大変よろしい。
高々50年ほどの過去、劇中のトミー・フラナガン・トリオの楽屋エピソ−ドにあるような人種差別がまだまだ強かったことへの再認識。
人気アーティストであっても差別はその限りではなかったのだ。時代は公民権確立以前のお話。

スウェーデン語の詩「イ・ニューヨーク」をモニカが5拍子に乗せて歌い出すシーンはぞくぞくしてしまった。

ラスト近く、ビル・エヴァンスとの共演シーンもすばらしかった。
ビル役の俳優も雰囲気ぴったりだったし。

要するに、映画は音楽映画としてみるのが吉であり、主演女優が「現役シンガー」であり、その唄が本物であることが高評価できる。

つまり、ジャズに興味なければこの映画の良さは半減してしまうのではないか?とも思うが…
しかし、世の女性たちはまた異なる視点でこの映画を観ているようだ。
主演女優の歌のうまさはともかくとして、北欧のファッションやインテリアが楽しいのもまた事実。

背景となる1960年代は北欧デザインの全盛期。その時代のインテリアや雑貨、そしてファッションを再現したお洒落な美術も大きな見どころだろう。

IKEA、ムーミン、そしてSAABこれは北欧版三丁目の夕日なのかも知れない。

そう、SAABね、これは劇中に登場する車。
もの凄く気になったのである。
なんと2ストロークのエキゾーストノートと白い排気煙を残してパタパタと走り去るのである。
リアのマッドガードに“SAAB”のロゴ。
帰宅後すぐに調べまくってしまった。

ストックホルムでワルツを サーブ・93はスウェーデンの航空機メーカー・サーブの自動車部門(現サーブ・オートモービル)が1956年から1960年まで製造した乗用車である。サーブ・92の改良型として、2サイクルエンジン、前輪駆動方式、シクステン・セゾンによる空力的な車体デザインを継承しつつ、各部に改良が加えられた。

2サイクルエンジンはDKW出身の技術者によって開発された新しい直列3気筒となり、搭載方法も縦置きに改められ、デフが車体中心線上となった。排気量は748ccと92よりやや小さくなったが、最高回転数が上がったため、最高出力は33馬力に強化された。スロットル(アクセルペダル)全閉時のエンジン焼きつきを防ぐフリーホイール機構(ワンウェイクラッチ)も引き続き採用されているが、室内にノブが設けられ、走行中でも無効・有効の切り替えが可能となった。

1957年型からは前席2点式シートベルトがオプションで装備可能となった。同年9月には改良型の「93B」が登場し、フロントウインドシールドが二分割式から一枚ガラスに変更された。1959年後半には再び改良を受けた「93F」となり、ドアが「GT750」と同じ前ヒンジに改められた。また、同年にはワゴンの95も追加されている。
1960年には後継モデルの96が登場するが、93も継続生産され生産を終了した。累計生産台数は52,731台。

軽量、高い車体剛性、優れたロードホールディング性や空力特性を生かし、小排気量ながらモータースポーツでも大きな成功を収めた。
名手エリック・カールソンの運転により、1957年のラリー・フィンランド・1959年のスウェディッシュ・ラリーに優勝するなど、93は特に北欧圏のラリーで活躍し、サーブという新しいメーカーの名を高めた。 また、1957年の ミッレミリア750ccクラス優勝、1959年のル・マン24時間レースでのクラス2位・総合12位入賞など、耐久レースでも好成績を残している。


ストックホルムでワルツを A SAAB 93B De Luxe from 1959.

SAAVサーブ96エンジン音Engine sound - YouTube
これである。

さて、先日観たベイマックスでも感じたのだが…
劇場パンフレット、これ一寸酷くないか?
内容が殆どない。写真もつまらない。はっきり言って何の資料にもならない。



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