GBのアームチェアCinema見ist:ミス・シェパードをお手本に

ミス・シェパードをお手本に

ミス・シェパードをお手本に(原題:The Lady in the Van)

監督 ニコラス・ハイトナー
脚本 アラン・ベネット
原作 アラン・ベネット
出演 マギー・スミス/アレックス・ジェニングス/ジム・ブロードベント/フランシス・デ・ラ・トゥーア/ロジャー・アラム
音楽 ジョージ・フェントン
製作年 2015/英


本作は99年に上演された舞台を、同じキャストと演出家のチームで映画化したもの。
主役…はこの作品を書いた作家なのであろうが、実際には登場するホームレスの老女が主人公である。
そして…
その主人公を、あのマギー・スミスが演じるというのだから、興味をそそられるのは無理もない。

イントロダクションは結構衝撃的なアクションシーンで始まる。
しかし、アクションらしいアクションがあるのはその部分だけ。
いや、この導入は上手いな。

全体を通して、実に、実に英国らしい、英国丸出し、それも「舞台劇」そのものというイメージの作品である。

舞台は70年代のロンドン。
文化人が多く住むという閑静な住宅街。
そこにボロボロのワゴン車に乗った老女がやってきて車上生活を始めてしまうというお話。

稀代の名優はもう、本当に臭ってきそうな存在感。
映画が匂い付きでなくてよかったと、心から思う。

謎の老女に対し、付近住民が口ではあれこれ言いながら、実は心のどこかで気にかけているのも、古き良き鷹揚な大英帝国中産階級。

偏屈で可愛げがないクソばばぁに困惑しながらも紳士的振る舞いで接して行く。
特に主人公の劇作家は、同年配で認知症を患う母親を重ねたのかばばぁと深く関わり、奇妙な関係を紡ぎ、結局その交流は15年も続く。

この関係が理解可能かどうかは別問題。

クソばばぁはあくまでも憎たらしいクソばばぁなのだが、気高く、どこか憎めない、時として可憐な少女のような一瞬さえ魅せる。
小汚くて、本当に臭ってきそうなのだが、何となくオシャレだし。

懺悔のホームレスは赦しを求めて生きていたのか。
これは一人の女の赦しの物語。
ラストシーンは我々日本人にとってはシャレか冗談にも見えなくはないが、敬虔なカソリックからすれば美しい結末なのだろう。

そんな事も、言ってしまえば、もう、どうでもよろしい。

これは英国の至宝マギー・スミスを観るだけで充分な映画である。
あ、哀愁溢れる主題曲のワルツも凄く良かったな。

recipe
本日の夕ご飯は映画パンフレットにレシピが載っていた「シェパード・パイ」。
レシピを見て料理を作るなどと言う事は殆どしたことがないカミさんが「きっちり書いてあるとおりに作ってみた」という代物。

イギリス料理?
イギリスには料理が存在しない、等と言われるが、これは悪くない。
Pie




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