GBのアームチェアCinema見ist:メッセージ

メッセージ

メッセージ(原題:Arrival)

監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本 エリック・ハイセラー
出演 エイミー・アダムス/ジェレミー・レナー/フォレスト・ウィテカー/マイケル・スタールバーグ
音楽 ヨハン・ヨハンソン
原作 テッド・チャン「あなたの人生の物語(Story of Your Life)」浅倉久志・他訳 ハヤカワ文庫
製作年 2017/米


原作テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」("Story of Your Life")は2000年のネビュラ賞中長編小説部門及び1999年のスタージョン賞を受賞している。

新海誠、押井守、樋口真嗣など“こっち系”の人々が絶賛している。
原作は未読なのだが、こりゃ観ておかないとな。

SF映画のくくりなのだが、地味である。爆発シーンが一つあるだけでドンパチはほぼない。なおかつ、難解。基本的に観る人によっては退屈系映画。
原作を読んでいれば最初から流れに乗れるのだろうが、エンディングまできて、ようやく何となく理解。
原作は更に難解らしいが…

帰りの道すがら脳内反芻でやっと大まかにその物語が見えてきた。

ツッコミどころは山のようなのだが、そんな事はこの流れに身を任せれば大きな問題ではない。
そして、ラスト、切ないけどとてもよかった。

SFの姿をしたヒューマンドラマなのだな、これは。

私は、これ、好きだ。

何を書いても全てネタバレになってしまいそうな内容なのが、一寸困ったちゃんなのだが。

映画の常套句でフラッシュバックと言う手法がある。
この映画は全編そのフラッシュバックで構成される。
ネタバレギリギリではあるが、実はフラッシュバックと呼ぶのは正しくなく、それはフォワードバックなのだが。
SFの1ジャンルにタイム・パラドクスというのがある。
本作は逆タイム・パラドクスとでも言うのか…

ファーストコンタクト物である。
本作で接触する異星人は時制と言う概念を持たない。
つまり、時間を超越した存在なのである。
「サピア・ウォーフの仮説」(言語相対性理論:言語が思考を規定する)と言う理論があるのだそうで…
「どのような言語によってでも現実世界は正しく把握できるものだ」とする立場に疑問を呈し、言語はその話者の世界観の形成に差異的に関与することを提唱する仮説。

何だかよく解らんが、時間の概念を超えた言語を学んだことで未来も過去も超越する記憶を得ることが出来た…というお話。

そして、運命の全てを引き受ける覚悟を、主人公は得るのか。
愛と死をみつめて…
かなり観念的な作品ではある。

原題 Arrivalには、到着(すること)、到着した人、到達、出生、新生児…等々の意味があるらしい。
日本語タイトル「メッセージ」は今ひとつ深みに欠けるような気がしないでもない。
原作の邦訳題「あなたの人生の物語」の方が本作には似合う気もする。

巨大な“ばかうけ”または“柿の種”が降臨する。

日本ではキービジュアルのポスターが公開された後、本作に登場する宇宙船のデザインがスナック煎餅「ばかうけ」に酷似していることがSNSを中心に話題となった。
ドゥニ監督はこれを受けて日本での公開直前、日本向けのスペシャルメッセージをYouTubeで公開し、「ご推察の通り、宇宙船のデザインは『ばかうけ』に影響を受けたものだ」とジョークを交えてコメントした。

お茶目だこと。


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