GBのアームチェアCinema見ist:この世界の片隅に

この世界の片隅に

この世界の片隅に

監 督 片渕須直
脚 本 片渕須直
キャラクターデザイン・作画監督 松原秀典
出 演
のん/細谷佳正/稲葉菜月/尾身美詞/小野大輔/潘めぐみ/岩井七世/牛山茂/新谷真弓/澁谷天外(特別出演)
音 楽 コトリンゴ 主題歌 「みぎてのうた」コトリンゴ
原作 こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
製 作 年 2016

一寸気になっていて、息子でも誘って観に行こうかと思っていたら、先を越されてしまった。ヤツは平日に行きよった。

仕方ないので久々の土曜休み、朝一番で映画館へ出陣。
雨空なので映画日和。

原作は漫画らしいが、原作者が名を上げたのは本作よりも前に書かれた作品らしい。

その出世作も本作も漫画賞を受賞しているそうだが、いずれも広島のあの日を題材とする。
原作者を知らなかったし、この時点では未読の作品であった。

映画はふんわりとしたハーフトーンの色調で、のどかに幕を開ける。
バックで静かに流れる旋律は…
何故か讃美歌「神の御子は今宵しも」。
そしてコトリンゴによる「悲しくてやりきれない」。

冒頭の聞き慣れたメロディで一瞬曲名と讃美歌である事が思い出せずに、それが脳内特定出来るまで思考が映像から切り離されてしまう。
こう言う音楽の使い方は果たしてどうなのだろうか?
日付が章立てになっている本作で、導入部は昭和9年1月だった筈で、季節感も異なる…などと余計なことを考えてしまう。
いや、場面とは合ってはいたのだが。

物語は映像の色調そのままに淡々と進む。
丁寧に作り込まれた情景は綿密な考証が成され、当時の風景をしっかりと伝え、監督はミリタリーマニアだそうで登場する船や飛行機も正確に描かれる。

しかし、そうした必要な制作者の努力も些末なことに感じられる位に、主人公の当たり前の生活、悲しみや苦しみ、そして幸せがゆっくりと語られる。

戦時中を中心にした物語なので悲劇的エピソードも、絵柄に似つかわしくない凄惨なシーンも含まれる。
含まれるが、これは「戦争映画」ではなく、ましてや「反戦映画」でもない。

無理矢理感動や戦争の悲惨を押しつけてくることなく淡々とゆっくり流れる時間。
戦時下の過酷な状況で、人間らしくあろうとする主人公と共に過ごす時間。
一人の普通の女性が、幸せに生きようと何でも無い日々--戦時下という「非日常」に日常をつなぎ止めようとした、時間。
そして本編完結後の未来には希望を感じさせる、そんな世界をふんわりと暖かい映像で描き止めた、これはかなりの佳作である。。

『ありがとう、この世界の片隅にうちを見つけてくれて』



『この世界の片隅に』(このせかいのかたすみに)は、こうの史代による日本の漫画作品。『漫画アクション』(双葉社)にて2007年1月23日号 - 2009年1月20日号まで連載。単行本は同社より上・中・下巻が発売。
こうの史代の出世作となった『夕凪の街 桜の国』に続いて「戦争と広島」をテーマに描いた作品である。

2015年3月9日からはクラウドファンディングサイトMakuakeで2000万円を目標に資金調達が開始され、2015年3月18日午前2時50分に達成。集めた資金はスタッフの確保やパイロットフィルムの制作などに使われる予定と記載されている。最終的に5月29日までの延べ82日間で3622万4000円を調達し、支援者は3374人となった。支援者数は国内クラウドファンディングの過去最高人数で、支援金額も映画部門では国内最高記録。これを受けて2015年6月3日に製作委員会が発足し映画制作が正式に決定。
(Wikipediaより)


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