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海難1890

海難1890

監督 田中光敏
脚本 小松江里子
出演者 内野聖陽/ケナン・エジェ/忽那汐里/アリジャン・ユジェソイ/夏川結衣/小澤征悦/小林綾子/かたせ梨乃/竹中直人/笹野高/永島敏行
音楽 大島ミチル
制作年 2015


日本とトルコの友好125周年を記念して、合作及び朝日放送創立65周年記念作品第2弾、BSフジ開局15周年記念作品として制作された。
(ちなみに第一弾は“映画 ハイ☆スピード! Free! Starting Days”と言う作品だそうな。知らない…ん?なんか、映画館でポスターを見たかな?)

1890年に起きたエルトゥールル号遭難事件と、1985年のイラン・イラク戦争勃発時に、テヘランに取り残された日本人の救援のため、トルコ政府が救援機を飛ばして救出した出来事の顛末を描く。
エルトゥールル号海難事故編は、事件が起きた現地である和歌山県串本町で撮影が行われた。
今年の春に「『海難1890』を成功させる会」の最高顧問には安倍首相の就任が決定。アベノミクスと同様に強力なリーダーシップで“アベノシネマ”を推し進める。」との話を聞いて

う〜ん…
なんか胡散臭ぇなぁ…

と思ったのは正直なところ。

作品クレジットのどこにも「原作」の記述がない。

こんな絵本がある。
エルトゥールル号の遭難 トルコと日本を結ぶ心の物語 寮美千子(著), 磯良一(イラスト)
お話は120年前に起こった悲劇の実話を元にした物語。
かつて、人々の心は美しかった…と言いたいところだが、この作者の文章には各国や各国為政者への批判がかなり強く見え隠れする。
ノンフィクションの名を借りた…まぁ、良いか。

こちらは小説。
海の翼/秋月達郎(PHP人物文庫/新人物文庫)

この本の感想文でこんなまとめをした。

あまりに枝葉に拘りすぎたか、とても中途半端な印象がある。
やたらと「余談」が多く、なんだかほら、こんな事も調べたぜ、と得意満面な作者の顔が浮かんでしまう。

物語部分のイラン・パートでも、いくつもの無用なエピソードが話の流れを邪魔している。

文章そのものは簡潔で読みやすいのだが、面白くしてやる意識が強すぎて、非常に散漫。ストーリーテリングの腰が落ち着いていない感が強いのである。
なんだか「残念」感が大きい。

確かにこの二つのエピソードは日本人としては知っておいた方がよい。
それならば、創作が関与した「物語」ではなく、完全な史実資料の方が良い様な気もする。

海の翼 (新人物文庫版)巻末の解説で、映画監督の井坂聡は『百年前、私はおろか私の両親もこの世に生まれていなかった。百年後、私は勿論、残念ながら私の子供たちもこの世にいないだろう。百年とはそういう単位の歳月である』と書いている。
が、この監督とこの小説の組み合わせではなかったらしい。

それはある意味正しかったかも知れない。

同書解説にはこんな記述もあった。
『救出翌日の3月20日付の朝日新聞の1面に、トルコ航空が日本人出国に積極的に協力を申し出た理由はあきらかではないが…、とした上で、こう推測の記事を載せている。
「日本がこのところ対トルコ経済援助を強化していること」

これに対し、4月1日付の同紙の投書欄「声」に、当時の駐日トルコ大使ヌルベル・ヌレッシ紙が「人道的見地で飛んだ救出機」と題して、こう投稿している。
「純粋に人道的な見地から発したトルコ航空の今回の措置を、日本とトルコとの経済協力関係、つまり日本からトルコへの経済協力に結び付ける見方があり、それが貴紙によって報道されたことに深い悲しみを覚えています。(中略)トルコ航空が今回の措置をとった理由はただひとつ、日本国民が生命への脅威を感じ、そして危険にさらされ、助けを求めていた事態を知ったからであります。トルコ政府は、救出手段を持っていました。そして、迅速な決定と行動に出たのであります。トルコは難儀している人々に手を差し伸べたのです」』

感動実話に水を差すようではあるが…

ともあれ、映画そのものは史実をニュートラルな姿勢で史実をコンパクトにまとめたそこそこの出来だったのではないか、と思う。
ターキュシュエアラインのパイロット達全員が静かに挙手するシーンではちょっとうるっときたね。
ただ、全般的に画像のピントが甘いシーンが多く、とても気になった。
(とうとう目に来てしまったのかと思ったよ)
それからね、竹中直人、なんであのキャラクターが出てこないといけないのか理解不能である。

2015年06月08日
トルコ共和国海軍フリゲート艦TCG F495 GEDIZ ゲディズ。
この入港は、トルコ軍艦エルトゥールル号の遭難から125周年を記念した和歌山県串本町での洋上追悼式点への参加の途中での寄港。先に下関にも寄港しここでも一般公開が行われている。

現在、和歌山県串本町とトルコのヤカケント町、メルスィン市は姉妹都市である。樫野崎灯台そばには、エルトゥールル号殉難将士慰霊碑およびトルコ記念館が建っており、町と在日本トルコ大使館の共催による慰霊祭が5年ごとに行われている。

トルコという国は国を挙げて親日だという。

打算ではなく、心の繋がりだけは大切にしないとならないのではなかろうか?

と言うことも再度メモしておこう。



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