GBのアームチェアCinema見ist:k_spe

英国王のスピーチ

英国王のスピーチ:The King's Speech)

監 督 トム・フーパー
出 演 コリン・ファース/ヘレナ・ボナム=カーター/ジェフリー・ラッシュ
脚 本 デヴィッド・サイドラー
音 楽 アレクサンドル・デプラ
製作国 英・濠
製作年 2010



2011.3.11.…震災から半月を過ぎた休みの日
「家に閉じこもって電気の無駄遣いしてても仕方ない。街へ出て消費活動をしよう」
とのカミさんの提案で、映画を見に行く。

本当は、こんな時だから、何も考えずに済む単純明快アクション物やアニメーションが良いなと思ったのだが…
現在、めぼしい作品は上映されていない。

前々から見たかったと、公開前、劇場予告を見た時からのカミさんのオーダーでこの作品に決定。

一月程前に発表された第83回アカデミー賞作品賞受賞作で、イギリス王ジョージ6世(ヨーク公アルバート王子)の史実を基にしたストーリー。
なお、英国アカデミー賞では7部門受賞(作品賞、英国作品賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、音楽賞)している。

日本でのキャッチコピーは「英国史上、もっとも内気な王。」

いつものショッピングセンターのシネコンは被災復旧が終わらず、いまだに休館。
あちこち探したが、池袋の1館は夜間の最終回のみ上映。もう1館は取り敢えず一番から上映していると。
アカデミー受賞作で、巷でも評価が高いのに、上映館が少ないのは何故?

英国王のスピーチ Wikipediaによると、タイトルの「スピーチ/speech」は演説という意味をもつと同時に、話し方、話しぶりという意味がある。そのため、映画の題は、「英国王の演説」それに「英国王の話し方」の2つの意味を表しているのだそうな。

王になりたくなかった男が、自らの障碍、そして運命と対峙しそれを克服して行く物語。
まぁ、悪くはないんだろうけど…はっきり言って余り期待もしていなかった。
退屈なんではないだろうか、と。


いや、これは傑作である。素晴らしい。
退屈どころか、何度も息を詰めてしまうシーンがあった。
スピーチから始まってスピーチに終わる映画なのだが、最後の10分近い長いスピーチは、まさに感動で息詰まりそうだった。

勿論、英語は苦手なので詳しい内容は字幕に頼るしかないが、出演者達の美しく丁寧な発音の英語はそんな赤点レベルの人間にも、何となく伝わってくる。


英国王のスピーチ 出演者はお馴染みが多いが、英国俳優陣から選りすぐったのだろうか?

かぶり物で化け物じみた王女や悪辣な魔法使いだった女は美しく慈愛に満ちた王妃を演じ、魔法世界に君臨する校長先生はその威厳のまま先王を演じる。
王になりたくなかった男と友情を通わせるのは、この間までカスピ海不死身の海賊王だったり、戦時の不世出の宰相は裏切り者のネズミ男だ。
(いや、イギリスの大竹しのぶ、ヘレナ・ボナム=カーター…素顔って初めて見たかも知れない。綺麗ぢゃん?)
(実は主演男優、余りよく知らない…と思ったら、マンマミーアの銀行屋か?)

これらの俳優達がそれぞれにきちんと演技をこなす。
上手いんだ、どの人も。


英国王のスピーチ 劇中でジョージ6世がストレスを軽減するために過激な台詞を叫ぶのをローグが奨励する場面のために、イギリスでは“R-15”(のちに批判により“12A”:12才未満大人同伴までレーティングを引き下げ)、アメリカでは“R指定”のままだそうな。
確かに、俗に言う四文字言葉を連発するシーンがあるが、映画そのものは「ティーンエイジャーのためにも優れた映画」である。

派手な所は一つもない、最近はあるのが当たり前のCGもない、ましてや飛び出す3Dでもない。
大きな盛り上がりもなく、はっきり言って地味そのものという作品ではあるが…

映像は美しく、全編にユーモア(それは決してくだらない馬鹿笑いではない)に溢れている。
そして、何と言っても、エンディングの長いスピーチ。
力強く決意に溢れたそれは、輝く希望を見せてくれる。

こんな時だからこそ、こういう映画が素敵なのだ。



return目次へ戻る