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聯合艦隊司令長官 山本五十六

聯合艦隊司令長官 山本五十六-太平洋戦争70年目の真実- ISOROKU

監 督 成島出
出 演
役所広司/坂東三津五郎/柄本明/柳葉敏郎/吉田栄作/阿部寛/椎名桔平/伊武雅刀/玉木宏/益岡徹/香川照之/瀬戸朝香/田中麗奈/宮本信子/原田美枝
脚 本 長谷川康夫/飯田健三郎
音 楽 岩代太郎
主題歌 「眦(まなじり)」小椋佳
製 作 年 2011


半藤一利の監修による聯合艦隊司令長官・山本五十六元帥の実像を映画化した戦争映画。監督は『八日目の蝉』の成島出。

キャッチコピーは「誰よりも、戦争に反対した男がいた。」

カミさんが「山本五十六、観に行かないの?」と突然言う。
え?そんなの観たいんだ?時間、ねぇじゃん…
レイトショーでも良いよ。
いや、高校生の三男坊にも観せたいね。

都条例では「23時を過ぎる興行には保護者同伴であっても未成年者は入場出来ない」とある。
おや、この作品は終映が22:50だぜ。
劇場に問い合わせると、条例に抵触しないので未成年者も入場可能だという。
ほんじゃま、日曜のレイトショー、と言うことで…

12月封切りの本作、劇場はガラガラであった。
一人で観に来ている若い女の娘の姿もあり、意外である。

聯合艦隊司令長官 山本五十六 これは「戦争映画」ではない。
戦闘シーンや艦艇、航空機の映像は、かなり良くできていると、言うよりも特筆すべき出来だろう。が、その時間は長尺な作品中それほど多くない。
あくまでもストーリーを補佐する一部の要素として使われている。

作品は人間・山本五十六の生涯を淡淡と描く。
逆の見方をするとドラマ性には乏しい。
邦画戦争物にありがちな「お涙頂戴ありがとう」も無ければ、血まみれの戦場も描かれない。
そんなウェットな押しつけ感動や、砲弾飛び交う派手な戦闘シーンのカタルシスを期待する向きには全く向かない。
史実を元にして、現実に起こったことを誇張することなく映像化し、まるで近代日本史の参考資料を観ているかのようである。

長く地味な映画、真っ直ぐに真正面から一人の男を捉え、その生き様を描いた作品である。


聯合艦隊司令長官 山本五十六 史実に基づいた戦争映画では、登場人物名や説明などをテロップで入れたりする作品は多いが、本作ではそう言った演出も成されない。
ただただ映像と俳優の演技で物語を綴る。

史実に沿った、記録に残る「実際の山本五十六」を忠実に描がこうとする姿勢が見て取れた。
残される記録によれば、高潔にして立派な人物だったことは確かに間違いないが…
ただ、郷土(長岡)の英雄である人物なので些か美化が過大とも感じられることは確かではある。


本作は、かつての戦争の時代を描きながら現代をも反映している。
閉塞感の時代に、カリスマ性を持ったリーダーを望むのは自然な成り行きであろう。

観終わった帰り道、カミさんがぼそっと「山本五十六が生きていたら、日本はどうなっただろう?」と漏らした。
歴史に“if”はない。無いが、たった一人の賢者の存在では衆愚の中でその智慧も誠意も志も空しい。多分…

70年経とうが、我々は父祖の世代から全く反省という物をしてこなかったのかも知れない。

聯合艦隊司令長官 山本五十六 前述したが、この作品は単純な戦争映画では勿論ない、軽率な反戦作品でもまたない。
私は“未来の担い手”に向けてのメッセージを受け取った。
あまり気が進まないようだった高校生の息子に観せて良かった、とも思った。

キャストは豪華である。その中でも役所広司と香川照之の存在は際立つ。
とにかく、この二人は素晴らしい。
カミさんが「邦画を観ると同じ役者ばかり…」と言うが、その理由は明白。
きちんと演じられる役者がとても限られている、と言うことだろう。

この作品では「物を喰う」シーンがとても多い。
そして、そこには「美しい日本」が描き出されていた。


聯合艦隊司令長官 山本五十六 かつて『連合艦隊司令長官 山本五十六』と題した、監督・丸山誠治、主演・三船敏郎の東宝(1968年)作品もあった。(確かこれも子供の頃観ている)
山本五十六と言えば三船敏郎のイメージが強かったが、役所広司はそれ以上に見事に演じていた。




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