GBのアームチェアCinema見ist:花と蛇

成人向けコンテンツに関する話題です。
特にストーリーがアブノーマルなものなので、そう言った物に嫌悪感をお持ちの方はお読みにならない方が宜しいかと…
最初にお断りしておきますが、私自身にはこの作品で扱われているような“SM”の趣味はありませんし、現実世界では、女性の人格を無視するこういう行為はモラルから言っても許される物ではないと思っています。
しかしながら、映画にこのジャンルがあるならば、それは観ておくことも又大事なことだと思います。

花と蛇

花と蛇

監  督 石井隆
音  楽 安川午朗
主  演 杉本彩
助  演 野村宏伸/石橋蓮司/遠藤憲一/未向/伊藤洋三郎/寺島進
製 作 年 2003(公開2004年)
シナリオ 石井隆
原  作 団鬼六「花と蛇」


石井隆/劇画・天使のはらわた 女優・杉本彩が凄い。「ある意味究極の美しさ」だ、と言う評価を聞いて、DVD買ってしまった。
監督の石井隆は劇画家から出発して日活ロマンポルノで脚本家、監督としてデビューした異才。
今はなき日活ロマンポルノは、現在世間に流れているエロビデオとは一線を画す、エロ映画の名を借りた実験映画作品群だったのである。
(もちろん、珠も石も一緒くたの世界だったが…)
そして、そこから巣立って現在も残る表現者達はいずれ劣らぬ特異な才能を持っている。

花と蛇/天野喜孝 この「花と蛇」という作品は、実はロマンポルノ時代も含め、過去5回も映像化されているらしい。(見ていないので分からないが、多分どれも単なるエロ映画)
SM小説の世界では押しも押されもしない大御所団鬼六による金字塔。
とは言え、私は団鬼六の文章をマトモに読んだことはない…
(名前はもちろん知っているが…)
“あの”天野喜孝も傑作官能絵巻「花と蛇」…鬼六世界のエロティシズムを描くことに執念を燃やしており、こんな耽美画集を出版している。

そもそも本作は団鬼六の原作とは全く異なるストーリーなのだそうだ。
(一寸読んでみようかと本屋を覗いたら、文庫で全10巻…止めた)


ノーマルな生活をしてノーマルな価値観を持った一般的社会人の方の多くは、本作に対して強い不快感を表明するのかも知れない。
なぜなら、この世界は倫理観や(一般に思われている)女性に対する良心をかなぐり捨てたところが出発点だから。
私は「想像世界の出来事」としては、この世界は否定しない。
映像や文学で倫理観を振りかざせば、古今東西の多くの名作をも否定しなくてはならなくなってしまうからである。
(もちろん、本作の内容を現実に実行すれば、それは全編が狂気の犯罪となる)

とはいえ、こういった作品故、ストーリーがどうのとか内容がどうの等と言ったことを詮議するのは無駄なことかも知れない。

物語は異常そのものであるが、石井隆のメガホンは、耽美な映像をこれでもかと描き出し、自ら進んで素材となった杉本彩があまりに端正なため、助平心を忘れてつい見入ってしまう。

とにもかくにも、この杉本彩は美しい。
本作が女性にも多く支持を得ているというのも頷ける話である。

筋書きやら何やらはともかくとして、ここには映像作家と女優の意地とプライドがある。

恐るべし、石井隆。
恐るべし、杉本彩。
恐るべし、ニッポン成人映画。

世にはびこるエロビデオ(俗に言う裏物を含めて)等という物がいかにクダラなく、いかに志が低く、作ってる連中がノータリンかと言うことをはっきりと認識させる映像作品である。
これ見ちゃったら、エロビデオなんか、情けなくて見られないぞ。

私はDVD買ったが、買いに行くのやレンタルするのは一寸…
と言う向きには、このサイトで有料にて全編ダウンロード出来る様だ。

ジャケット写真は和服姿であるが時代物ではない。
これは花魁ショーの場面。
他に刺青ショーもあり。
映像的に、これでもかっ!の展開である。
その辺りは、もう既に筋なんかどうでも良く、杉本彩大博覧会の様相を呈している。
中盤以降は円形ステージが主舞台になるので、映像的に作為的構図が非常に自然に構成できる、と言うのは流石の読みだと思う。



花と蛇

花と蛇2 パリ/静子

監  督 石井隆
音  楽 安川午朗
主  演 杉本彩
助  演 遠藤憲一/不二子/荒井美恵子/伊藤洋三郎/宍戸錠
製 作 年 2005年公開
シナリオ 石井隆
原  作 団鬼六「花と蛇」


杉本彩 結局、続編“花と蛇 2”も入手してきちまった…

「映画」としては“2”の方がまとまっていると思うが、「退廃的映像美」と言えば“1”の方が数段上の様な気もする。
“1”の方は、もう単純に杉本彩の美しい肢体を見せるために全てが存在する作品であると思う。

正直言うと…最初に“1”を買ったときは、「お家へ帰って、うっひっひ…」と思っていた。
見始めたらうっひっひ…なんて言ってる場合ではなかったのだ。
(息止めちゃったのであった)
これを『芸術』と言いきってしまうのは少々抵抗がなきにしもあらずだが…
個々の映像を切り取ってみると、コレは間違いなく芸術的である。
女優・杉本彩の整った肢体大博覧会は健在である。

この手のビデオで早送りボタンに指が掛からなかったのは初めてかもしれない。

じっくり見ると、設定は破天荒だが、“1”・“2”ともお話はかなり哀しい物が…
この愛の姿は…壮絶である。

杉本!もちろん美しいのだが、“1”のラストの石橋蓮司と遠藤憲一、そして杉本の三つ巴のエピソードが、ものすごく哀しい。
(三つ巴ったって3P濡れ場ではない…)
そしてエンディングの哀愁が堪らない。

“2”では、美しい妻杉本の、年老いた夫宍戸錠の限りなくも屈折した、そして命を賭けた愛。
ラストの死を賭したベッドシーン、これは涙無くしては見られない。

どちらの作品も、ただのエロ映画ではなく、ある意味究極のそして異常な愛の物語なのだ。そして、その切なさをかき立てる音楽もまた、なかなかのものである。

これは大きな声では言えないけれど…
ふたつとも名作だ。
描かれる世界に抵抗さえなければ…ね。


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