GBのアームチェアCinema見ist:グレイテスト・ショーマン

グレイテスト・ショーマン

グレイテスト・ショーマン(原題:The Greatest Showman)

監督 マイケル・グレイシー
脚本 ビル・コンドン/ジェニー・ビックス
出演 ヒュー・ジャックマン/ザック・エフロン/ミシェル・ウィリアムズ/レベッカ・ファーガソン/ゼンデイヤ
音楽 ジャスティン・ポール/ベンジ・パセック/ジョン・デブニー/ジョセフ・トラパニーズ
製作 英・仏/2017


カミさんからLINEが届いていた。
「映画は16:30から」
そういやぁ、日曜午後のスケジュール確認されたっけ。
何を観るのかは聞いていないが、多分…

「X-Menだべ?」「レ・ミゼラブルだってば…」

いや、そっちは確かに本業だけどさ、三本爪の方が印象強いんだもの。

駅で池袋方面のホームへ行こうとしたら、逆だという。
ショッピングセンターのシネコンの方が客席傾斜が強く、前に座高の高い客がいても見やすいし、椅子も座り心地が良いのだと。
まぁ、この作品なら音響が少しでも良い劇場の方が良いだろうね。

これは19世紀に活躍したエンターテイナー、P.T.バーナムの成功譚を下敷きにしたミュージカル。

突然歌うなよ!
と、森田一義氏は怒った。

その上、辺り構わず踊るんじゃないっ!傍迷惑だろうが。

お話そのものは単純明快。感情表現も至って直球勝負。ストーリー運びも複雑な仕掛け一切無しで一気に進む。

まぁ、そんな事ぁ、どーでも宜しい。
この作品は唄と踊りを観て聴く物だから、多分。

気にし出すとキリがないのだが…

作中で主人公は被差別民達を救済しつつ一緒に昇って行くという描かれ方をしていたが、その辺り、何とも引っかかる。
上流階級出の妻の名前がチャリティ(綴りは分からん)というのにも引っかかる。
元々赤貧仕立屋の倅であった主人公が、差別される人々と共にある…雰囲気なのだが、なんともかんとも際どい印象がある。

多分、これは我が国ではまず扱えない、扱わない題材だろう。

かつて、この国でも街角で「普通の人と異なる外見の人々の演ずる興行」が行われていた。今から50年程昔、昭和40年代にはそんな“見世物”はいくらでも観る事が出来た。
今ではそんな興行は打てない。
逆に言えば「普通の人と異なる外見の人々」の活動の場を狭めてしまったとも言える。
海外には、例えば先天的に体が小さい人たちの役者ユニオンがあるという。
指輪物語のホビット達やスターウォーズのイゥオークは彼ら無しでは映像化できなかったキャラクターである。

まぁ、19世紀を舞台にした物語なので「慈善は持てる物の美徳(と自己満足)」であっても仕方ないのだが…

ともあれ、何度も言うが、本作、そんな事ぁどーでも宜しい。

何せ音楽もはっきり割り切って、舞台・衣装・背景とも19世紀なのに、現代のポップなリズムでダンサー達が画面狭しと踊りまくる。
そもそもミュージカルは筋書きが大ざっぱと相場が決まっている。
古今の名作と言われるミュージカルの殆どが、テキトーな物語である。

物語の背景にある、ある種の胡散臭さを頭の片隅に引っかけながらも、これは充分楽しんでしまった。

ミュージカルの国の役者の芸は凄いよな。
圧倒的な質量で叩きのめされる様な迫力がある。

つい、劇場のシートで体が動いてしまった。


return目次へ戻る