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杉原千畝

杉原千畝 スギハラチウネ

監督 チェリン・グラック
脚本 鎌田哲郎/松尾浩道
出演 唐沢寿明/小雪/ボリス・シッツ/アグニェシュカ・グロホフスカ/ミハウ・ジュラフスキ/ツェザリ・ウカシェヴィチ/塚本高史/濱田岳/二階堂智/板尾創路/滝藤賢一/石橋凌/小日向文世
音楽 佐藤直紀
製作年 2015


杉原千畝
(すぎはら ちうね、1900年(明治33年)1月1日 - 1986年(昭和61年)7月31日)
日本の官僚、外交官。
第二次世界大戦中、リトアニアのカウナス領事館に赴任していた杉原は、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等欧州各地から逃れてきた難民たちの窮状に同情。1940年7月から8月にかけて、外務省からの訓令に反して、大量のビザ(通過査証)を発給し、およそ6,000人にのぼる避難民を救ったことで知られる。その避難民の多くが、ユダヤ系であった。「日本のシンドラー」などと呼ばれることがある。
(Wikipediaより)

オスカー・シンドラーはチェコ生まれのドイツ人実業家で、やはり第二次世界大戦末期に、多くのユダヤ人の命を救ったことで知られる人物。
彼がユダヤ人労働者の保護を申請するために作成したリストは「シンドラーのリスト」と呼ばれ、これをタイトルにした映画は大きな反響を呼び、シンドラーという人物はさらに多くの人の知るところとなった。

私がシンドラーと杉原、どちらを先に知ったかは、記憶にないが…
少なくとも映画シンドラーのリストよりは前だったはずである。
「映画で随分有名になったけれど、日本にだって杉原千畝という人がいてだな…」などと話をした覚えがある。

ただし、領事館員でユダヤ人のためにビザを発給した、程度の知識だったが。
どちらにしても「東洋の何とか」やら「日本の何チャラ」の様な形容は本当に止めた方が良い。
背景・状況が違うしどちらがエライなどという問題でも無い。
「東洋の何とか」等という冠は「世界の誰それ」に対する一段低い二番煎じにしか見えないし、そもそも比較元に対しても失礼である。

杉原は一言で言えば諜報員であったという。
平たく言えばスパイ。

本作のタイトルにも出てきたペルソナ・ノン・グラータ※とされるほど優秀な人物だったらしい。

※(ラテン語: Persona non grata)とは、「好ましからざる人物」を意味する、外交用語の一つ。原義から転じて慣用的に「歓迎されざる人物」を指すこともある。外交関係に関するウィーン条約や領事関係に関するウィーン条約で明記されている。

本編の終盤近くに出てくる「善き人」というフレーズと対比する物である。
「要注意人物」は国際情勢に精通し、戦乱を巻き起こし滅びの道を進む日本を予見していたという。
しかし、その情報と分析結果は全く生かされることなく、大日本帝国は消滅した。

杉原手記には、「当時の日本では、既に軍人が各所に進出して横暴を極めていたのであります。私は元々こうした軍人のやり方には批判的であり、職業軍人に利用されることは不本意ではあったが、日本の軍国主義の陰りは、その後のヨーロッパ勤務にもついて回りました」とあるという。

そんな歴史の一幕を、映画は気負い無しに淡々と描く。
全編(日本の場面も)ポーランドで撮影したそうで、映像は、その色調質感も含めて美しい。
映画の尺の中で全てを描くのは困難であろうが、無難にまとまった映画ではある。
何かの主張を強く訴えたりはしていない作風には好感が持てる。


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