GBのアームチェアCinema見ist:ブラックスキャンダル

ブラックスキャンダル

ブラックスキャンダル(原題:Black Mass)

監督 スコット・クーパー
脚本 ジェズ・バターワース/マーク・マルーク
出演 ジョニー・デップ/ジョエル・エドガートン/ベネディクト・カンバーバッチ/ケビン・ベーコン
音楽 ジャンキーXL
原作 ディック・レイア、ジェラード・オニール
  『Black Mass: The True Story of an Unholy Alliance Between the FBI and the Irish Mob』
制作年 2015米


カミさんと三男坊が映画を見に行こう、と言う。
はいはい、映画ならいつでも。

で、何見る?

火星に取り残されるのとジョニー・デップで悩むけど、火星の方はロングランしそうだから、デップの方にしよう。

と、今回は完璧に全く予備知識なしに劇場へ。

始まって数十分、目つきの悪い(確かにあの目はジョニーだが)薄毛の悪党、主人公がジョニー・デップだと言うことにすら気付かなかった。

そもそも、本編が実録ギャング映画だと言うことすら知らないで観たのであった。

結論から言ってしまおう。

これは映画館で観るほどのものではない。と言うよりも観た後に不快感、何だかとても気持ちの悪い物が残るだけ。

結構絶賛している人がいるようだが、なぜこれを評価するのか、私には理解できない。

怪優ジョニーは確かに凄い。
あのふにゃふにゃのオチャラケ海賊や狂った帽子屋やチョコレート屋や髭の盗人や…
とにかく、そういった人を小馬鹿にしたようなキャラクターでは、今回はない。
やはり役者としての才能はとてつもないのだ、とは思う。

しかし、この作品は…

顔色一つ買えずに人を殺す。
抵抗する間も与えずに滅多打ちに撲殺し、ショットガンで蜂の巣にし、拳銃で息の根を止め、何も知らない娼婦を素手で絞め殺す…

そんなシーンが続く。

貧しい移民が地域社会で絆の繋がりでのし上がり生きてゆく。
だから、父親としてはとてつもなく子供を愛し、兄弟、(同じ血の)友人と強い絆を持つ。

原題Black Massは「黒ミサ」という意味らしい。

アメリカの暗黒街では、ゴッド・ファーザーで知られるイタリア移民のマフィアとアイリッシュ・モブ(アイルランド系ギャング)との縄張り争い、更にジューイッシュ・モブ(ユダヤ系ギャング)等もそこに加わるらしい。
イタリア、アイルランド、ユダヤが何故暗黒面で勢力を持ったか。
その辺りの背景が分かっていないと本作は理解しがたいのだろう。
本編の舞台となる、ボストン市南部はプロテスタントのアングロサクソン系市民が裕福な支配者であった。
要するに後から来た彼らは最初から、新世界に到達した時から1ランク以上低い位置にいる“アメリカ人”なのだ。
(WASP:正当なアメリカ人から見れば)元々貧しく怠惰で不道徳で無知と迷信深いカトリックなのである。
そして、こうした自衛のために自然発生した民族系のヤクザは必然として血のつながりと過去の怨嗟で生きている。
そうした彼らの立ち位置、その恨み節の深さが分からなければ、映像の残虐さはただの不快感でしかない。

あ〜やな映画観ちまった…



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