GBのアームチェアCinema見ist:坂道のアポロン KIDS ON THE SLOPE
坂道のアポロン KIDS ON THE SLOPE
監督 三木孝浩
脚本 橋泉
出演
知念侑李(Hey! Say! JUMP)/中川大志/小松菜奈/真野恵里菜/山下容莉枝/松村北斗(SixTONES / ジャニーズJr.)/野間口徹/中村梅雀/ディーン・フジオカ
音楽 鈴木正人
主題歌 小田和正「坂道を上って」
原作 小玉ユキ『坂道のアポロン』
製作 2018
この原作に出会ったのはかれこれ8年も前。
ご多分に漏れず原作物、それも少女漫画。
当時タワレコのジャズ棚に何故かコミックスが置いてあった。
どうもジャズをテーマにした少女漫画らしい。
その時は「ふぅん…」以上の何物でもなかったのだが…
『月刊flowers』(小学館)にて、2007年11月号から連載。
単行本は2010年6月現在既刊6巻。
「このマンガがすごい! 2009」オンナ編で1位を獲得した作品だそうな。
当時、Bookoffに全6巻が揃っているのを発見して、つい大人買い。
最初の2巻位は「なんでこれが受けてるんだ?」と不思議に感じた。
全巻買ってしまったからには勿体ないので読み進むうちに、なんだか一寸感動してしまったり…
作者はそこそこちゃんとジャズを聴いているようだ。
少女漫画ではおざなりにされがちな小道具大道具、メカニズムなども…まぁ、突っ込みどころがないとは言わないがそこそこちゃんと描かれている。
舞台となった1966年と言えば、背景にはベトナム戦争と学園紛争。
そして、高度経済成長に向かい、若者の乱脈迷走が話題になり始めた頃。
いや、良いんじゃない?これ…
で、7巻はいつ?
と思ったら、あらら…
「坂道のアポロン」しばらく休載 2010年2月27日
理由は「作者がまもなく出産予定」のためだそうな。
最終的には『月刊フラワーズ』(小学館)に、2007年11月号から2012年3月号まで連載され、同年5月号から9月号まで番外編「BONUS TRACK」が掲載、完結したらしい。
単行本は全9巻と番外編1巻。
アニメ化もされたこれが実写映画になった訳だが…
そんな、気になっていた映画を観てきた。
一緒に行ったカミさん(小田和正ファン)はエンディングの曲が印象に残った、と…
うぅ〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!
はっきり言って、ジャニーズ映画だし、ベーシスト梅雀さんを見に行ったのだが…
これは良い意味で裏切られた。
梅雀さん原作キャラクターとは似ても似つかないけどね。
この監督、音楽の使い方が上手い、もう上手すぎる。(エンディングは…どうか知らんが)
冒頭からタイトルに移行する部分、作品全体のテーマともなっているMoanin'で、背筋がビリビリと、私ゃ完全にノックアウトされたぞ。
劇中で使われた曲、My Favorite Things、Someday My Prince Will Come、But Not For ME、そしてMoanin'それぞれの曲名や歌詞を知っていれば、ストーリーに応じてかなり気を配って選ばれた曲だと言う事も分かる。
体動きっぱなしだった。
安手の音楽映画にありがちな弾いてるフリ、一切無し。
それだけでもこの作品は満点付ける価値がある。
演技の多少の難などはどうでも良くなってしまう。
主人公二人の演奏力に辛い点を付けている方もいるようだが、よく考えてみた方が良い。
プロミュージシャンの伝記映画ではない。音楽で心を通じ合わせる青春の熱き思い。今から50年も前の、それも地方の高校生の学園祭がクライマックスですぜ。
音楽…ジャズ好きにはもう堪らない。血湧き肉躍り、映画館だから指と脚だけが踊る。
先週ヘタレすか映画を観てしまっただけに、今回は予想外の大当たりを引いた気分。
帰りはMoanin'を鼻歌ハミングで帰宅した。
感動は人それぞれだが、クライマックス文化祭の体育館セッションは圧巻。
一寸涙が出て鳥肌が立つ思いだった。
主役のジャニーズに色々という方もいるようだが、原作と映像は違うのだよ。
鬼気迫る演奏、ありゃ確かに「ビル・エヴァンスが降りて来」てたぞ。
全9巻に及ぶ原作、当然2時間の尺に収めるのだから、それは大変な作業。
誰も不幸にならないストーリーは素敵だし、音楽映画としても爽やかな青春映画としても充分及第点以上の出来と言っていいと思う。
エンディングの小田和正の歌はね…
ストーリーのピリオドを打ったシーンが、かなり印象的でこの最後の一瞬の後にまたJazzを聞かされてしまっては些か興ざめだろう。
個人的にファンと言う程ではない物の、昔から嫌いではないので、興奮の後のクールダウンとして、これは悪くないんじゃないか?
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