GBのアームチェアCinema見ist:ALWAYS 三丁目の夕日

ALWAYS 三丁目の夕日

ALWAYS 三丁目の夕日

監  督 山崎 貴
主  演 吉岡秀隆、堤真一
助  演 小雪、堀北真希、三浦友和、もたいまさこ、薬師丸ひろ子
音  楽 佐藤直紀
主 題 歌 「ALWAYS」D-51
製 作 年 2005
原  作 西岸良平「三丁目の夕日」(小学館:ビッグコミックオリジナル連載中)

ALWAYS 三丁目の夕日 雑誌で背後に建設が開始された東京タワーを望む夕日町三丁目のスチールを見て、この映像を見るだけでもこの映画を見たいと思った。
そんな独り言をぼそっと漏らしたら、日曜日の朝、カミさん、三男坊と意見の一致を見た。
見たいね、この映画。

最近カミさんは私を時々映画に誘う。何故なら、夫婦50割引:夫婦のどちらかが50歳を過ぎているとふたりで2,000円で映画が見られるのだ。


ALWAYS 三丁目の夕日 漫画を原案にした映画であり、かつて子供向けの特撮SF映画を撮っているチームの作なので…さして期待はしていなかった。
ただ単に自分が生まれた頃の映像を見てノスタルジーに浸れればそれでとりあえずは満足だと思っていた。

短編漫画の寄せ集めであろう、本編は、少なくともその程度の期待感しか持たせないものだった。
上映開始。

のっけからやってくれる。
冒頭の配給映画会社のロゴ画面、ここから既に昭和30年代にタイムスリップである。



ALWAYS 三丁目の夕日 本編映像が動き出す…
いや、こんな映像が実在するわけがない。これは絶対にSFXなのだが…
そんなことはどうでも良い。
若干退色気味の色調の画面は既に幼い頃の過ごしたあの横丁に完全に気持ちを引き戻してしまった。
架空の映像だろうが何でも良い、この世界に少しでも長く浸っていたい…


お話そのものは、夕日町の人々の、特に何の変哲もない生活を季節の一回りに沿って綴ったもの。
何の変哲もない、ただの生活。
便利な物が少しずつ生活に入ってきてはいるが、人々は貧しい。
貧しいけれど、支え合って、そして明日への大きな希望を抱いて力一杯生きている。


ALWAYS 三丁目の夕日 そこには若き日の私の親父やお袋がいた、幼い頃の私が、いた…

画面一杯に溢れる、物や金では満たすことが出来ない豊かな優しさも…

衝撃的な事件があるわけではない、派手なアクションが展開されるわけではない、人死にもなければ、スペクタクルも大ロマンスも悲劇もない。


ALWAYS 三丁目の夕日 しかし、小さな小さな優しさや触れ合いで、こんなにも涙が出るのは何故だろう。

カミさん、息子と三人で笑い、そして泣いた。

沈んで行く夕日は、おしまいを象徴するものではない。
明日の朝日へと続いて行くものなのだ。

この映画はこの時代を知らない若い制作者達からの贈り物。
これはもしかしたら、日本映画の宝物になるかも知れない。


追記

この映画を作った連中は真性のヲタクなのだ。
昭和33年の町並み、商店の作り、置いてある小道具。
あの懐かしい上野駅の壁画、本物まで担ぎ出した、東北本線の大型旅客機関車C-62…

機関車はナンバーや銘板まで作り直してあった。普通は小型機関車C11で誤魔化す事が多い。
蒸気機関車が映画に出てくると大抵大井川鉄道のC11でお茶を濁すことが多い…
C11はローカル線や貨物の入れ替えに使われた小型機関車で幹線の長大な客車を引くことはなかったはず。
とにかく本作は妥協無く昭和33年を再現している。

しかし、この映画の本質はそんな単なる映像面の拘りではなく、かつての日本映画が好んで扱ったテーマ、何でもない庶民の何でもない四季折々を描いているという事なのではないかと思う。
どこにでもいる、無名の人々の喜び、悲しみ、優しさ、希望…
そんなものが、この作品には一杯詰まっている。
邦画としては少々長目の2時間強。速度感もあり、展開も速く、決して飽きさせることはない。
細かい能書きはどうでも良い。
これは見ても損をしないと思う。
エンディング、荒川土手に沈む夕日は確かに明日への希望に続いている。

return目次へ戻る