GBのアームチェアCinema見ist:1917
1917
1917 命をかけた伝令(原題:1917)
監督 サム・メンデス
脚本 サム・メンデス/クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
出演 ジョージ・マッケイ/ディーン=チャールズ・チャップマン/マーク・ストロング/アンドリュー・スコット/リチャード・マッデン/クレア・デバーク/コリン・ファース/ベネディクト・カンバーバッチ
音楽 トーマス・ニューマン
制作 2019/英・米
いや…
凄い物を観てしまった。
最初は「要するに英吉利版走れメロスやん?」と思っていた。
誤解を恐れずに言えば…
途轍もなく美しい映画である。
確かに破壊された大地、硝煙たなびく塹壕、放置され崩れかけた死体…
個々に観ると凄惨この上ないのだが、映像全体がとにかく美しい。
オープニングとシンメトリカルに作られたエンディング、泥の中をのたうつ兵士、チェリーの満開の中蹂躙された果樹園、残置狙撃部隊と死闘を繰り広げる破壊された街の燃えさかる教会、石灰岩を掘り進めた塹壕とその先に広がる緑の平原。
そして『驚愕の全編ワンカット映像による ほんの一瞬先すらも予測できない緊張感』と煽るだけのことはある。
(本作は全編ワンカットで撮影されたように見えるが、実際には複数回の長回しによって撮影された 映像をワンカットに見えるように繋げたものである。)
常に主人公と行動を共にしているかのような錯覚を覚える画面作り。
映画は小細工無しで観たいし、そもそも隠居の年金生活者は割増料金が嫌なので、IMAXを避けたのだが、それでも何度も肝を冷やし、「臭いつき上映(あるのかそんなの?)でなくて良かった』と何度も思った。だ。
当然劇場に映像の臭いはないのだが、桜の花を渡る風の、疲弊した塹壕の饐えた、砲撃クレーターの血、折り重なる戦死者の腐敗…そして、オープニングとエンディングの樹木のそんな臭いが全て感じられた。
私は2時間、ほぼ主人公と一緒に戦場を駆け回ったのであった。
本作はサム・メンデス監督が祖父のアルフレッドから聞いた話を元にしたフィクションだと言う。
だが、名作“西部戦線異状なし”のあの情景が更にリアルに戻ってきた。
筋書きよりも何よりも“息も継げぬ程映像に感動した”映画は久しぶりであった。
しかし、この陳腐な邦題は何だ?
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