Low Pass Filter の比較と製作

 Bencher.Inc のHF用 連続1.5KW ローパスフィルターです。その昔1万円以上した代物です。

今回トライするのはローパスフィルターです。今や各メーカーから発売されているトランシーバーは技術適合証明がされていますので、HF帯でのスプリアス強度は-50db以下、また、50MHz帯でも-60db以下は当たり前になっています。
 いまさら何でローパスフィルター(以下・LPF)かと言うと、現在では、簡単・コンパクトにソリッドステートのリニアアンプが製作できる時代になりましたが、そのアンプの殆どが広帯域アンプになっています。モノバンドのアンプはあるにはありますが商品としてはあまり人気を得ていないので、コアを用いた広帯域アンプになるわけです。モノバンドアンプと広帯域アンプの一番の違いは、同調回路があるかないかです。モノバンドの場合は、インピーダンスの変換にもπマッチあたりが使用され、インピーダンス変換器+同調回路であり、フィルターとしての機能を持っているわけです。
 一方、広帯域アンプの場合は、インピーダンス変換を広帯域で実現する必要があるため、同調回路がありません。 そのために、広帯域アンプでそのまま出力してしまいますと、高調波丸出し状態になってしまいます。 そこで必要になるのがLPFとなるわけです。私もアンプを色々と作る傍らスプリアス特性をしらべたわけですが、オークションに出ているCB用のアンプなどは、基本波 0dbに対して第二高調波-25db 第三高調波 -20db 第四高調波 -28dbと全く高調波丸出しの状態です。上記例に習うと、7Mhzで100Wの電波を出すと、21Mhzで1Wのスプリアスが出ます。
 通常、CBの広帯域アンプは200-400Wの出力が出ますから、ピコシリーズの数十倍の強力な電波が基本波以外で発射されてしまいます。それこそ、"CQ 40mバンド"と言わなければ14Mhz 21Mhz 28Mhzでも呼ばれるかもしれません。そこで、質の良いLPFをどのように製作するかの研究を始めました。

 2006.4.9

 

  
 

 LPFの製作に欠かせないのが測定器です。アマチュア的にはこの測定器を入手するにはHFの無線機を数十台購入する(最近は100万円の機械があるが・・)費用がかかります。
 たとえば、スペクトルアナライザーは、一台100-200万円が当たり前ですし、SGでも数十万円します。放送局などのプロフェッショナルでもなければこのような測定器を新品で購入する方は少ないでしょう。私も素人無銭家ですので宝くじに当たらねば金なしです。だからといってプロに負けてはいらせません。なぜかというと、世の中には素人を馬鹿にした代物 (現物)があり、測定器がないためにカタログの数値を鵜呑みにするしかないわけです。実際に測定器を使用してメーカー製のLPFを見てみるとカタログとは全く異なる数値が出てきます。 これ本当にそうなのかメーカーに文句のひとつも言いたいところでありますが、そこは、このHPを使用して静かなる改善を要望したいと思います。素人=アマチュアですが、素=金欠病でもあり、すべての測定器は、中古品であり校正は一切していない事を前提にお話します。 上の写真は、上からアドバンテストR4131B(スペアナ) HP8657A (SG) WILTRON 6409(ネットワークアナライザー)です。これらを駆使してLPFを検査していきます。

BENCHER YA-1のケース

   さて、最初のLPFは、Bencher Inc.のYA-1からはじめたいと思います。Bencherといえば、CW用のパドルが有名ですね。 同社は、そのほかにYA-1というフィルターも製造しています。10年以上前に大阪・日本橋のハムショップでLPFの良いのがほしいのですが・・・とたずねたらこのフィルターを紹介してくれました。価格は、一万円以上したと思います。騙されたと思って使ってくださいといわれました。いつも利用している店なので店長の言葉を信じて購入することにしました。
 もちろん、そのときは測定器も何もなかったので信じるしかなかったのですが、実際に測定器を前にして、疑心暗鬼ですが、性能の検証をすることにしました。説明書には、ピーク-80dbのフィルタリング効果が期待できるとのことでした。
 
上の写真はちょっと見づらいですが、WILTON-6409ネットワークアナライザーで見た通過ロスの測定値です。測定器がMAX-70dbまでしか確認できませんが、37MHz付近をカットオフ周波数として、54Mhzでは70-73db以下の減衰があります。
 バンド幅300Mhz 10db divの画像です。見事ですね。きれいにカットされています。概ねこのYA-1はLPFとしては、良い性能を持っています。改めて、大阪の某無線ショップの店長に感謝。

COMET ANTENNA  CF-50MRのケース

    
価格的には6200円とお買い得の1KW PEP対応の50MhzLPF コメットアンテナのCF-50MRです。カタログには、-80dbの 価格的には6200円とお買い得の1KW PEP対応の50MhzLPF コメットアンテナのCF-50MRです。カタログには、-80dbのフィルタリング効果がうたわれていました。実際に測定しましたら75Mhzで-55dbあるものの-45db〜55dbと全く期待はずれの商品(ハズレ?)であります。まあ、アキバの某ショップで4980円に負けてもらったので、こんな程度か?でもカタログととことん違うので、コメットに電話してカタログどおりの商品を出してくれと言いたいところです。

自作"定K型9段"フィルターのケース

  
ここに乗せますは、素人が作成した定数KタイプのLPFです。ちゃんと調整すればフィルターはうそをつきません。カットオフ周波数60Mhzですが、97Mhzで-70db以上の減衰が300Mhzまでフラットに出ています。自作の方が良いのができるのは当たり前なのでしょうか?高い測定器を買って自分で作るか既製品を買って文句を言うか私はそのいずれもやってみます。笑

 我ながら時間をかけたのでなかなか良いものができました。要は、測定器があれば誰にでも作れるのがフィルターということでしょうか。私の測定器がもうすこし良ければ、-100dbに挑戦したいところです。

自作"定K型13段"フィルターのケース

   さて、年も明けまして、新年の2007年の記念に今まで暖めていたフィルターをパワーアップして、-80dbは稼げるフィルターに挑戦することにしました。今回は、測定器が無いと作れない代物ですが我が家のネットワークアナライザーが眠っていますので、このさいたたき起こして活用することにしました。まずはどんなフィルターを作ればよいかいろいろ考えながら、CQ出版のLCフィルターの本をひっくり返し、エクセルにデータをいれてみました。最初は、誘導m型+π型のデザインにしようと思います。
 まずは、部品集めです。エポキシの基板と銅板そしてマイカコンデンサー、最近は思う容量のマイカコンデンサーを見つけるのは一苦労ですが、いつかフィルターを作ろうと米国から取り寄せていた物を今回使用することにしました
 
 
製作用の部品を載せているところです。ヒートシンクを台座にして、フィルターのシールドは銅版でなく 両面のエポキシ板を使用しています。これは加工が簡単で、ハンダの乗りも良いし工作にはもってこいです。銅板だと最近の鉛フリーハンダでは相当熱量がないとうまくくっついてくれません。コイル類は、ポリウレタン皮膜の3mmの銅線を使用しています。サイズはだいたいですが、6つの区画が出来るようにしています。側面は、0.3mm厚の銅版を使用しました。こちらはあとで取り付けるので、園芸用のはさみを使用してカットしました。 
 みためは大切だということで、定規でサイズを確認しながらハンダをたらして仮止めし、フィルターをくみ上げていきました。 エンドの部分は、BNCのメスコネクターを取り付けることで一応インピーダンスにこだわっていますが、秋月の安物ですので どれほどの精度があるのかわかりません。でもサイズ的にすっきりとはまりました。満足。
 
 
銅箔の色がなかなか綺麗ですね。ベランダから太陽光に当てながら我が家の一眼レフデジカメNIKON-D80で撮影しました。ちょっと暗いのは、私の腕のせいで、全体的に暗く移ってしまい何が悪いのかわかりません。今度、ローカルさんに質問したいと思っています。あとは、コイルとコンデンサーを取り付けることとなります。最近まで使用していたLCRメーターのLの測定範囲が1uHまでなの
でもう少し小さい容量のものが測定したくなりオークションを見ていたら、L/C Meter UBなるものを発見しました。これは米国のAlmost All Digital Electronics という会社が販売しているキットで$100前後なのですが、なかなかの優れものです。
 早速購入しました。機会があればこの紹介をしたいとおもいます。LCのデータは、今回掲示しませんが実際はカット&アジャストと言った具合です。めぼしいところまでは上記のLCメーターで 事前に測定しておき、少し大きめのLの値をとっい取り付けることにしました。コイルの容量はあとで何とでもなります。
 
 

FILTERの調整にはある程度コツがあります。計画通りにキャパシタンスやインダクタンスを計測して取り付けても概してうまく働いてくれません。特に、空芯コイルで巻いたものは余りうまくいきません。コイルのインダクタンスを正確に計測してそれを取り付けても、容器
や配線によって自己インダクタンスを持ってしまいそれで実際よりも容量が多くなったりします。私は、だいたいの目安の容量を巻き込んだコイルを取り付けてあとは、伸ばしたり縮めたりすればわりと容易に目標とするインダクタンスになるはずです。あとは、ネットワークアナライザかTGのついたスペアナで調整すればよいのです。
  測定器がない場合ですが、その場合はNoise Bridgeとか直接微弱電波を放り込み、一番基本波でパワーが出るところに調整します。この場合、フィルターの特性は残念ながら測定不能です。こんな感じで、フィルターを追い込んで見ました。多くのフィルターの減衰値は-80db以上の効果で、挿入損失0.5db以下になっています。-80dbはπ型で9段あれば調整を十分すれば実現できます。挿入損失も0.5db以下ならよっぽどラフな作りをとなければクリアーできると思います。それ以上に追い込むためには手のかかる作業が必要となります。今回のFilterは、なんと13段になります。

測定結果は、50-51Mhz 挿入損失0.2db以下
減衰値    100Mhz -72db以下 150Mhz -71db以下  600Mhzまでこの数値ですというよりも、測定値の補償精度を超えているので測定不可能です。そこで、スペアナにSGを使ってむりやり強電界をいれて-85dbをこえているか測定しました。100MHz -83.7db 150MHz -93.3db のスコアーをマーク。 満足 ^_^
 

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JA1BOP 2007.2.14  2015.1.16 update

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