自分で作る50Mhz帯リニアアンプ

アマチュア無線家は確かに素人ですが、素人なりにメーカーには負けないものが出来ると信じている今日この頃、メーカー製のアンプが買えずに負け惜しみを言いたい素人無銭家に贈るページを作成したいと考えています。しかし、私のような素人無銭家にとって、結局自作をすると言うことはそれだけリスクがあり、色々な測定器や電源回りの機器を少しずつ集めてら、次第にメーカー製のものより高くついてしまう実態があることは申し上げたいと思います。全てうまくいくことが大前提の自作品なら非常にローコストで済むわけです。しかし、そうは問屋が卸さないのが現実、そこで、いかにローコストで自分の思うリニアアンプを作るのかが今回のメインテーマとなります。もちろん、電気的にも感電しても安全な電圧でしかも調整が容易なほうがいい。測定器がなければないなりにどのようにしたら測定できるかも、今回の考え方のなかに盛り込んで生きます。当然、実体験がベースとなります。私はこうなったというケーススタディです。

200W-300Wクラス<メーカー製>

 

 出力が100W程度であれば、それほど苦労することなくリニアアンプを作成することが出来ます。トランジスターも安価な物が使用できますし部品にしても秋葉原で容易に手に入ると思います。ところが200Wくらいになるとちょっと中途半端な出力となり、メーカー製でも東京ハイパワーのHL206Vが税込定価¥71400ということで、57000円前後が実売価格と思いますが、少しと思いますが、少し高くつきます。HL-206Vはオークションでも45000円前後と人気がありメーカーも儲かる商品のひとつではないかと思います。HL-206ひにはSTmicroのSD1477というトランジスターを使用しています。175Mhzで100W出力できるトランジスターで2SC2782少し大きめバージョンです。前のHL-166は、独自のトランジスターでしたが160Wしか出なかったと聞いています。電圧を16Vくらいにして石を2SC2782に交換すれば200Wはかたいとの情報もあります。
 左の画像はHL-206Vです。なかなか綺麗に出来ていますね。さすが東京ハイパワーさんだと思います。でもちょっとまてよ。出力段のフィルターは、多分π型の5段LPフィルターですね。どなたか、高調波を図ってもらいたいと思います。第二以上の高調波は-60db以下でしょうか?入出力特性はあるが高調波特性は書いていませんよね。メーカー製なので大丈夫か?さて、このリニアのメリットはなんといっても13.8Vで動くということです。IMD特性なんぞ気にしません。13.8Vで使用できることに意義があるのだと思います。このアンプを2合成で400Wにされている方もおられるようです。とにかく電源が安い!13.8V32Aの電源は13000円以下で買えます。このことから、お手軽メーカー製、電圧13.8V前後で、出力200Wが欲しい方は、多分自作をするよりお買い得かもしれません。安価に自作するには別途28V以上の電源が必要ですからね。
200W-300Wクラス<トランジスター選択編>
 今度は本題の自作のはなしです。HL-206Vに使用しているBLF1477は国内では入手が困難な為、28V〜50V系の石にその鉾先がかわります。もちろん、IMD特性もよくて200Wが余裕で出力されるリニアアンプを作りたいと思いますよね。その際に、トランジスターの選択となるわけです。 トランジスターは、IMD特性の良いMRF150,SD2931,BLF177,MRF151G,SD2932,等が50V系でよく使用されるFETです。FTDX9000もIC7800はSD2931、そしてTS950SDXはMRF150を使用しています。どのトランジスターも似たものですが、一番強い石はモトローラーのMRFシリーズだと思います。別途MA/COMのMRFシリーズもありますがモトローラーの方が使用感として強い。 STマイクロの石は感度が良いせいか発振しやすく、数10本を飛ばした私としては初心者には余りお勧めしない石です。出来れば、モトローラーのMRF150あたりがオークションに出た際に購入するのがベターかなと思います。そして、ある程度自分の腕に自信が湧きどんな石でもヘッチャラになったらそのほかの石に手を出してみるのもコツだと思います 。
 低電圧のバイポーラなら、2SC2782 SD1447 SD1477 あたりがお手ごろかも知れません。ただ、現在は廃版であったり、とっても価格が高くて買えないかも知れません。他にも28V系FETでは、MRF140 MRF141G BLF147 などがあります。こちらも価格が高く手に入れるのが困難です。
私は、国内の代理店を通じて価格を照会しましたが、SD2931で、5500円〜16000円まで格差があり50個のロットで注文しても価格は変わりませんでした。こんなに価格の差があるのは流通経路が複雑であることが原因といえます。ちなみに、STマイクロに電話をかけて製版価格をといつめましたところ、ここでは公開できませんが、私的には納得価格で卸されていることがわかりました。素人無銭家が入手できるパワートランジスターは限りがありますが、どうしても欲しい場合は、代理店よりも、RF PARTSより並行輸入することをお勧めします。ここなら店員の対応は悪いが、何回か催促すればなんとか石をリーゾナブル価格で手に入れることが出来ます。最初は、FAXにてクレジットカードのコピーを送る必要があります。また、手数料と送料がかかります。何回も注文しなくても良いように、スペアーパーツも考えて注文してください。

ヤフオクの格安アンプについて

 ヤフオクで、リニアアンプがよく出品されています。私もその一人ですが、驚くことが良くあります。CB向けのHL400などはまだかわいいものです。そのままつないで波を出したら高調波まるだし状態でローカルさんを悩ますこと必定。正しい情報を発信していないものが多く見受けられます。基板のままの出品は、もちろんある程度腕に自信のある方が購入されると思いますが、HF用でケースに入ってローパスフィルターが一個入ったようなものを見ると、非常に危険に感じます。これを入札した人はそのまんま使えると思っているのでしょうか?

これはある人の説明文を載せたものです。

VHF帯用のRFトランジスター「2SC3147pp」を用いたHFワイドバンドのリニアアンプ(完成品)です。ゲインが高いので、最大入力は10Wで使用出来ます。動作電圧13.8V時の各バンドの出力は・・・3.5MHz/200W,7/200W,10/200W,14/200W,18/180W,21/165W,24/150W,28/80でした。アンプユニットの入力に−3dB(電力比1/2)のATTが入れて有りますので、実際にアンプに入っているパワーは5Wになります。もし5Wのトランシーバ(FT−718等)で御使用場合は、取り去って整合回路を入れるように改造致します。外部コントロールは「GNDでリニアON」になっていますが、+DCでリニアONへの変更も可能です。

これって、すぐ使えるといっているんですよね。エッ-----。
まず、2SC3147は、175Mhz 50W アウトのトランジスターです。がんばっても80W程度が実用の限界とも考えられます。2本で160Wも出ればあとは飛ぶのをまつのみです。次に、バンドの出力です。フィルターは見る限りカットオフ50-60Mhzのл型で基板から想定するに35dbも落ちればよいところ。各バンドの出力ですが、広帯域ということなので、7Mhzを出力すると、7 14 21 28 35 42 49 56Mhz位までは、10-20db落ちで高調波として出力されます。この合成パワーが200Wと言うことになります。これが、完成品といえるのでしょうか? 最低、"各バンドごとに50db程度のローパスフィルターが必要です。そうしないと高出力高周波逓倍器となり、インターフェアーで困ります。ご注意ください。私は責任をとりません。"このくらいは書いて欲しいところですね。笑 なんと、4-5人のひとが入札しています。価格はたしかに安いですね。

まあ、ローカルキラーとしてのアンプならともかく、通常のリニアアンプとしてはいささかお粗末としかいいようがありません。また、リニアアンプ
はその名のとおり、増幅度の直線性が求められるわけで、綺麗な電波を出すためにもちゃんと測定器をそろえて作ってもらいたいものです。ヤフオクを覗いていると、この類のアンプを購入後、自作したり使ってみたがTVIやローカルに よるクレームによって、再出品している人もいます。やすかろう悪かろうのアンプを、安かろう、でも、改良してよくなったみたいなアンプに仕上げるためには、測定器がなければ不可能です。10-20Wならまだしも、100W以上出るものはしっかり対策を打ったものをおつくりになることをお勧めします。
余裕を持った200W「リニアアンプの製作」<50Mhz-6M>
 2008年に入り、久しぶりに書き込みをしたいと思います。200W出力のアンプは帯に短しタスキに長しでお手ごろの石と回路を選択するのが第一のステップとなります。50V系の石ならば容易に200-300Wを出すことが可能なのですが、電源で大変苦労することになります。そこで、13.8V限界ぎりぎりでそこそこのアンプがほしいわけですが、今度は石の選択に苦労するわけです。
13.8V系でお手ごろの石といえば三菱のRD70HVF1などやSTマイクロのSD1477あたりが現行のリニアに使用されています。次に入出力をどのような回路にするかも重要な要素です。というのも広帯域のプッシュプルにするか、LCマッチの単発を合成すかでずいぶん部品点数や回路が変わってきます。そして、最後に必要なのが電波法に準拠するために確実なスプリアス防止回路を挿入する事となります。このフィルターの作成がなかなか難しくカンコツと測定器が必要となります。 さて、右の写真は、SD1446を2本使用した80WX2の50Mhz用アンプです。2系統となっている為、電力分配と合成が必要です。特殊なコアを使用しなくても国内で調達可能な部品で作成していますので、どなたにでも作成できると思います。トランジスターはバイポーラタイプなので、バイアスにも結構な電流が流れます。そこで、バイアスの安定化が必要となります。ここは、三端子レギュレターと抵抗による分圧でも問題ありません。TRの温度を感熱することでTRの熱暴走を防ぐためにある程度、電流も流せて熱によるバイアスを低下させる効果のある回路があればよいわけです。
 入力側はLCマッチ、同様に出力側もLCマッチです。入力50Ωを相当低インピーダンスに変換し、 今度は出力側の相当低いインピーダンスを50Ωに変換するわけです。実際に、SD1446の実験では、90W出力に10W入力が必要でした。ゲインは9dbといったところです。25Wくらいを電力分配すれば、180W程度の出力が得られます。しかし、高調波も含んでいますので160Wくらいが限界 であると考えられます。
同様の回路に、SD1477を接続すると片側110Wくらい出力しますので、これを合成すると200Wはぎりぎりカバーできると考えられます。HL206Vはこの石を2本使用して200Wアンプとして販売していることはご承知のとおりです。50Ω同士の合成は、ウイルキンソン合成がコストも安く容易です。3C2Vを100cmにカットして100Ωの抵抗を加える簡単な回路ですが、非常に快調に動いてくれます。注意としては、テフロン同軸など、分布定数の波長短縮率が変わるときはその定数に従って カットしないと発熱をしたりファイナルをいためたりしますので、ご注意ください。<2008.1.5>

 

 
 

 あれから月日は流れ7年が経過。2015年の1月16日となりました。私はどうやら年初に執筆活動をやっているようです。その間、リニアアンプの大御所であった東京ハイパワーが倒産しまともに使える200W級のアンプがなくなりました。本日のヤフオクではHL206Vの中古がなんと75,000円で落札されるなど市場が枯渇しているようです。一方でKW級のアンプは隆盛を誇っています。ICOMのPW-1やYAESUのVL1000では飽き足らず、福岡のくまさんアンプや工人舎(熊さんのOEM)とか2-3KWのアンプが出現しています。
いったい何処で使うのだろうか?と思いたくもなりますが、電源が200V40Aくらいいるでしょうから半端な電源ではありません。やはり、医科向け、または、農業向けの電源供給が必要でしょうか。

 さて、本題は今となっては買えないリニア”50Mhz・200W”に焦点を絞るほうが良さそうです。石は一番よさげなのが2SC5125当たりの12V系バイポーラか三菱12V系FET-RD70HVでしょうか。RD100HHもいいですね。私の好きなSD1446はST社が廃版にしたので中国版 (SDI)は手に入りますが50Mhzでは随分特性が落ちており、今後あまり使う気がしません。結局TSSの認定を通すのなら3本組にしないと損失の関係でだめかもしれません。以前、私の12V系アンプ(SD1446X4)で認定通そうとした方が駄目だったそ うです。MRF150X2はOKなのにどうしてかはわかりません。この辺は前例が物を言うのでしょうか。そうすると3合成という今までやったことがない合成です。偶数はやりやすいのですが奇数はね・・・。CBのアンプで 見かけたくらいです。安定性を考えるとやはり偶数のほうがやりやすいですよね。ちょっとこの辺を考えてみましょう。 続く

 
 
 
 
 
 

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