市民の皆さんへ -- 設計の値引きとはどういうことか


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記載者:高木恒英 on September 12, 2104 at 04:26:50:

自由市場の原理から、安い金額で設計を発注することのどこがいけないのか、という声を耳にすることがあります。私たち建築家の議論は、ともすると同業者どうしの利益を守るための話しのように思われるかもしれません。

私たち建築家が問題にしているのは、ダンピングが結果的に発注者である市民の皆さんの不利益になるということなのです。建築の設計は、多くの知識と経験にもとづいた知的生産であり、多大な手間と時間のかかる作業です。さらに建築は、それが民間のものであれ、公共のものであれ、社会と文化、環境に影響を与えます。設計を、それに必要な手間に見合わない金額で受注すれば、どうなるでしょう。

設計を受注した設計事務所では、まず、その業務報酬(設計料)から、何人のスタッフを何日その業務に携わるかを考えます。得られる報酬額から限られた人件費しか掛けられないのは当たり前ですね。それでは必要な手間に足りず依頼された仕事を達成できない場合、あなたならどうしますか? 少ない料金で、できれば無料で仕事を手伝ってくれる人を探すでしょう。

ふつう、タダで手伝ってくれる人なんてめったにいませんが、でもその人たちにとってメリットがあるなら手伝ってもらえますね。設計の手伝いをすることで工事を受注できるなら、あるいは製品が売れるなら、十分なメリットがあります。手伝うにはそれなりに費用が掛かりますが、それは工事代金で回収すればよいのですから。

入札をするのに、業者が談合をするのはいけないと言われます。この談合の席では、設計に協力した実績は、決定的な力を持ちます。メーカーにとっても、設計図の仕様により採用はほぼ間違いありません。けっきょく、皆さんが安い設計料で設計を頼んだことが、談合の温床となり、結果的には高い買い物になるのです。

建築とは、社会や文化をかたちづくる大切なものです。私たち建築家は、そのための責任を果たしたいと考えています。市民の皆さんの税金を使い大切な財産となる建築の設計依頼先を、設計料の安さで決めるという事が、いかに文明社会にあるまじき愚行かをご理解いただきたいのです。


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