住品確保促進法案への異論反論(改行版)


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記載者:ビルダー経営研究所、主宰、中川 惠章 on April 08, 1999 at 03:06:51:

・言うまでもないがこの法律は、住宅の性能を表示する基準と、性能を評価する仕組み、そして欠陥住宅の紛争を処理する体制の三本立てとなっている。
何れも我が国の住宅性能の向上と消費者(住宅の購入者)保護に立脚した法案であり、その面では誰も反論する者はいない。 恐らくこの法案に関する記事を大新聞が取り上げたなら、これで我が国の住宅も品質が向上出来、欠陥住宅に対する消費者保護に大きく寄与するであろうと書かれるに違いない。
・しかし今回上程される法案と、現在検討されている性能評価及び検査方法に関する資料等を読めば読むほど、これで良いのかとの疑問や不安が湧いてくる。消費者保護と言う大義名分により誰も本当の事が言えないのではなかろうか。
大体この法律に直接影響を受ける人達、特に我が国の住宅施工に関わる圧倒的多数の地域地場工務店からの意見が全く聞こえてこないのはどうした訳か。 更に不思議なのは、本来住宅の構造上の安全性や性能条件を計画する設計者側(建築士会等)からの声もあまり聞こえてはこない。
・確かに法案の立案過程では、学識経験者と住宅業界を代表する立場の一部メンバーによって構成される検討委員会などで検討されるし意見を言う場も与えられている。又、住宅産業各団体としての意見も求められてはいる。
しかしながら、その様な場には地域地場の工務店レベルの参加は無いし、又、仮に参加出来たとしても中央のお歴々の前で思う所を自由闊達に発言するなどはとてもとても。

・ …で、ここは地域ビルダーの目線に立って法案を読み込んでみる。
まずは性能表示の是非論。 先日、住宅業界の先鋭的発言者として知られた某氏と法案の是非について議論となった。
住宅購入者が客観的な数値によって住宅の性能を知る事により、選択肢の基準の一つとして必要な仕組みと言う所までは同意的な意見交換であった。 だが、話しの展開の途中で彼はこう述べるのである。
「今、取り決めようとしている性能標準、特に気密性や断熱性などの熱環境の要求水準は最低の水準だ。次世代省エネルギー基準などの更なる性能に向かって表示レベルを一層向上させるべきだ。性能表示住宅として商品化する才覚や、熱環境の性能計算などの技術知識、或いは性能を表示し、啓蒙し、販売にアピール出来る仕組みを持つ事が出来ない工務店であるとすれば当然ついてこれないだろう。それはしょうがない事ではないか…」
「ちょっと待って欲しい。性能表示というのは住宅購入者が選択する一つの指標としてあるべきであり、性能表示が最低の要求水準であるとの概念は、その性能以下の住宅は否定されるという事に繋がらないか。
確かに次世代省エネルギー基準等の要求性能は日本の住宅性能を向上させるものだが、住宅の全てが高気密高断熱である必要はないのではないか。無論隙間風だらけの住まいで良い訳はないが住まいの価値観を別のものに期待する消費者も数多く存在する。
例えばツーバイフォー工法は論理的で標準化がしやすく技術基準が明確な工法であるし、構造上の特性から気密性が確保しやすい。しかし最近の軸組み在来工法も標準化が進んでおり、気密断熱への工夫もされた商品が多く開発されている。在来切り捨て論的な思考はいかがなものか。
性能を担保した商品開発や、それを表現する手法や販売技術、或いは十分な技術知識を持ち得ない圧倒的多数の地域地場のビルダーはどうすれば良いのか。商品化や販売力や啓蒙宣伝力を有する業者は大手ハウスメーカーか一部の有力ホームビルダーに限られる。それでは地域ビルダーは技能の受け皿として大手の下請けになれと言っているようなものではないか。
結局は大手指向の政策になってしまう危険がないだろうか。」

議論の噛み合わない点は以上の視点であった。

性能表示という仕組みは、性能を表示する場合に機能する法律であり、性能を表示しない住宅は販売してはならないと言う訳ではない。しかし、性能を評価された建物(商品)は国から性能票という公的看板を得る事が出来、それを販売のツールとして活用出来る訳であるから、当然に大企業は性能票を錦の御旗に掲げて、安心ですよと消費者にささやき、性能票がない住宅は欠陥商品ですよとのささやきがまかり通るのである。
何度も言うが性能表示と言う仕組みは、住宅購入者にとって必要なものである事は言うまでもない。
只、もう少し枠組み作りに議論が必要なのではないかと言っているのだ。地域ビルダーの声も聞いてほしいと言っているのだ。
住宅の構造安全性や性能をきちんと計画し図面化し、それを設計上で担保して責任を持つ設計者と、その設計図通りに施工する技能者とが互いの専門性を分業して機能させる枠組みがきちんとすれば、消費者にとっても安心で割安な住まいが手に入るのではないか。医療でも医薬分業じゃないですか。建築士会あたりが何故発言しないのであろうか。・・・と言ったら一笑に付された。大体、日本の建築士は勉強不足で何も判っていないではないか… と。

同様の話しを某建築家に話したら、「全く その通りと思う。だが大方の建築士というものは現場も知らない、構造も知らない、熱計算のイロハも知らない…知っているのは代願申請の事務作業か、施主の言いなりの図面を自社のマニュアル通りに如何に早く作図(それもCADで)するかであって、そもそも基準法改正の意味する所も住宅品質確保促進法案の動きさえも判っていない輩が大多数だ。まあ、代願屋としての時間の切り売り屋か、ハウスメーカーに属する営業の言いなりの作図屋が建築士の圧倒的多数なんだからしょうがないか…」との反応が帰ってきた。

そこで、設計者と造り手としてのビルダーと発注者としての消費者の良好なトライアングルが何故出来ないかとの議論で盛り上がった。

そもそも発注者側(消費者)から見て、設計料というものがが良く見えない。所謂建築家という作品主義の先生方のイメージが強く、多分すごい報酬を請求されるのだろう。私が注文する40坪程度の庶民の住まいは扱ってくれないのではないか。大体、どこに頼んだら良いのかすら判らない…と言った反応が大方の所だ。つまり消費者から見て設計事務所というものが良く見えないと言う事。

一方、ハウスメーカーで契約すると必ず設計打ち合わせなどの場面で初めて登場する設計者が出現する訳であるが、それらのメーカー組織にいる設計者というものは、企業の論理と営業の契約優先で言いたい事が何も言えない組織設計者が大半であり、下手な提案でもしようものなら営業サイドや上司から苦情を言われるのが落ちというものだから、如何にして早く着工に結び付けるのが設計者の仕事かと考えているのが一般的だ。つまり貴方の住まいを限られた予算と建築条件の中で、如何に住み心地の良い、安全で快適な住まいを計画しようかとの思いはあっても、設計者としての主張が出来ない存在と言って良いだろう。但し、会社の設計マニュアルや地域の建築行政のクセ、或いは設計上の工夫でコストを安く(会社の粗利益を高く)する手法や、違反建築をうまくかわす工夫などには長けている。しかし、自分の設計した住宅の現場を確認すると言う事すら満足に出来ないのが現実の姿だ。そして残業時間は月間平均60時間を有に超えるのが普通だから、勉強をする時間も無いのは当然か。

我が国の住宅に関わる建築基準法や建築行政のスタンスは、がんじがらめの法律で木目細かく規制をしないと工務店は何をやるか判らない。ほっておけば欠陥住宅の山となる。という考え方が根本にあるようだ。米国の場合は日本で言う所の基準法が州毎に制定されているが、構造の安全性が計算により確認されれば設計者の責任による建築物の許容範囲が極めて広い。公的な試験機関によって基準レベルの性能評価を得る事が出来れば、工法でも建材でもかなり大胆な施工がされている。無論、設計者としての義務と責任は極めて重い事は言うまでもない。
一方、我が国の建築士というものは、粉飾決算を黙認して責任を取ろうとしない公認会計士と同じ枠組みだ。

今回の基準法改正は、国が全てを細かく規制するのではなく、性能評価と検査の枠組みを作った上で、規制を緩和して設計者と施工者の責任の上で広く建築の可能性を広げていこうという狙いがあるはずだ。
しかしながら、今回の住品確保促進法案に関わる評価と検査、そして弁護士会中心の紛争処理の枠組みは、狙いとは逆に又もや規制の屋上屋を重ねる結果となりはしないかとの危惧がある。
・・・文句を付け出したらきりがないので、この辺にします。暇があったら小生のHP「言いたい放題」でもご覧下さい。


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