*サマーフェスティバル1999 <20世紀の音楽名曲展> 管弦楽
  1999年8月30日(月) 19:00〜 サントリーホール
 サントリー音楽財団が主催する毎夏恒例の現代音楽を中心としたサマーフェスティバルが、今年もサントリーホールで開催され、その最終公演をきいてきた。 <20世紀の音楽名曲展>と題されたこのシリーズは、新作の演奏会ではなく、今世紀に作曲され、ある程度評価の定まった作品が取り上げられるのだが、今年はシェーンベルクの大作、「グレの歌」である。 この曲をこれまで何度か演奏し、確かレコーディングもあると記憶している秋山和慶指揮の東京交響楽団による演奏である。
 滅多に実演に接する機会のない作品であるが、こういった曲を指揮すると、秋山はその実力を余すところなく発揮するようだ。 秋山はこの作品を、濃厚で劇的な表情作りにポイントを置き、ストーリー性と叙情性のバランスを上手くとりながら、全曲を一貫したスタイルでまとめあげた。 恐らく、エキストラの奏者を大量に投入したと思われる超特大のオーケストラを、アンサンブルを整えるというレベルを超えて、強靭な求心力で同じ方向を向かせた手腕には、正に脱帽である。 時として、もっと繊細な弱音や、透明度のより高い和音の響きを求めたくなった瞬間もあったけれど、パワーのある管楽器、打楽器と、その大音響に決して負けることのない、うねるような弦楽器の旋律をきいていると、シェーンベルクの、後期ロマン派の作曲家としての側面が嫌と言うほど浮かび上がってくる。 これは、「12音技法」云々のシェーンベルクではない。 時を置いて作曲された第3部をきくにつけても、この思いは変わらない。 ある意味では、とてもききやすい演奏であり、シェーンベルクにアレルギーを持っている人でさえ説得されてしまうかも知れないと思わせた。
 そして、合唱。 東響コーラスは、全員暗譜でこの作品に臨み、見事な成果をあげていた。 これも秋山=東響の、この作品の演奏を定番化させることに一役買っているのだろう。 この組み合わせは、彼らなりにこの曲を消化しているようであり、それは同じシェーンベルク作品である、「ヤコブの梯子」などの演奏と比べて、より説得力の高い演奏を実現していたように見えたことからもうかがえた。
 ソリストは、みんな悪くなかった。 しかし、「グレの歌」を演奏するには、サントリーホールのステージは少し狭いようで、歌手は合唱団と共に、ステージ後方のPブロック客席で歌った。 大オーケストラの強音を乗り越えてゆくのは大変なことで、特にヴァルデマールの田中誠は、かなり苦労しているようだった。 第2部など、ほとんど何を歌っているのかききとれなかった。
 いずれにせよ、大人数の演奏者が全力を尽くし、協力してひとつの音楽を作り上げてゆくさまは、やはり感動的である。 久し振りにきいたコンサートであったが、こういう単純で、当たり前かも知れないことが、嬉しい。 忘れていたものを思い出した気分。 やはり、ききに行かなければいけない。



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