*紀尾井シンフォニエッタ 東京 第20回定期演奏会
  1999年7月17日(土) 18:00〜 紀尾井ホール
 紀尾井シンフォニエッタが、遂に外部から指揮者を招聘した。 この日の演奏会の指揮台に立ったのは、イオン・マリン。 若手の注目株である彼の指揮の下、紀尾井シンフォニエッタがどのような適性を見せるか、興味深いところであった。 このオーケストラにとって、今シーズン最後の演奏会である。
 まず、バルトークのルーマニア民俗舞曲。 マリンはこの小品を落ち着いたテンポで、上品に仕上げた。 そこには若手指揮者にありがちな、ある種の粗さはなく、逆にこの作品の「舞曲」としての要素を感じさせるリズム感がやや希薄ではあったが、オーケストラの充実した響きによって、これはこれできき応えのあるものになっていた。
 紀尾井シンフォニエッタの得意とするモーツァルトの作品からは、交響曲第29番。 第1楽章は、きびきびとしたアーティキュレーションと速めのテンポで、端整で現代的なモーツァルト演奏になっていたが、フィナーレでは、旋律をゆったりとうたわせ、ドラマティックな造形を築き上げており、そのあたりでスタイルとしての一貫性にやや欠けるきらいもあった。 しかし、そういったことを抜きに考えれば、マリンは内声のリズムをしっかりと刻み、管弦のバランスもよく整っていて、オーケストラをよくまとめていたと思う。
 そして、最後にチャーミングなビゼーの交響曲。 この演奏はなかなか活力があって、きいていて楽しかったけれど、特に個性的なものではなかった。 音楽の演奏は必ずしも個性的である必要はないけれど、マリンの主張がどこにあるのか、私にはこの演奏からはつかみ切ることができなかった。
 演奏会全体を通して、マリンの考えている音楽を感じ取りにくかったが、それは初めて外部から招いた指揮者に対して、オーケストラの順応性が欠けていたためか、あるいは指揮者の統率力に原因があったのかは分からない。 しかし、こういった試みは、オーケストラの柔軟性や、音楽の幅を広げるためにも、今後も続けていって欲しいものである。 それにしても、紀尾井シンフォニエッタは技術的に素晴らしいオーケストラであることを再認識した。 私見では、可もなく、不可もない演奏会ではあったけれど、一定の水準以下になりそうな気配は、まったく感じられなかった。
 アンコールに、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の第1楽章がサービスされた。



目次へ→
エントランスへ→