
*チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
1999年6月9日(水) 19:00〜 サントリーホール
デイヴィッド・ジンマンがチューリッヒ・トーンハレ管の音楽監督に就任して、初めての来日公演になる。 最近になってにわかに脚光を浴びている組み合わせであり、特に話題のベートーヴェンがきける公演とあってか、ホールは満席に近い状態であった。
まず、最近のレコーディングもある、オネゲルの「パシフィック231」。 強烈な力感は感じられなかったものの、各パートが見通しよく響き、作品のつくりがよく分かる、まずまずの演奏。
ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲は、ソリストに竹澤恭子を迎えて演奏された。 竹澤はいつも通り、力強いヴァイオリンを響かせ、芯のある音と、思い切った歌い込みが、この作品にぴったり。 音色そのものにやや美感を欠く場面もあり、それが粗さに感じられたところもあったが、表現はよく練られており、きき応えもあった。 ジンマン指揮のオーケストラは、竹澤のヴァイオリンによく反応し、協調してゆくところと、対立するところを適確に見極め、伴奏としても立派なものであった。
さて、ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管は先頃、新ベーレンライター版によるベートーヴェンの交響曲全集をリリースした。 私はこれらのディスクをまったくきいていないが、この日、演奏されたベートーヴェンの交響曲第5番は、予想通り、かなり速いテンポで演奏された。 これは版の問題だけではなく、ジンマンのベートーヴェン解釈を反映したものであると推測できる。 耳慣れない和音の衝突や、装飾音、独得のアーティキュレーションがいたるところできき取れて、とても面白かった。 反復は、スケルツォ楽章も含めて、すべて実行されたが、演奏時間は30分くらいだったように思う。 勢いと活気に満ちあふれており、ティンパニもわざわざ古いスタイルの楽器を使っていて、古楽器による演奏が意識されていたと、言えなくもないけれど、弦楽器など、しっかりとヴィブラートをきかせており、現代オーケストラを使って演奏する意義も見出そうとしていたようだった。 音色は明るめで、演奏の傾向も純音楽的なものに傾いたものであり、ジンマンのエネルギッシュな指揮振りに、オーケストラの迷いも感じられなかったため、説得力はあった。 ただ、ベートーヴェンの第5交響曲をきいたあとの、あの充実感はあまり得られず、これは新しいタイプのベートーヴェン演奏と言うべきであろう。 刺激的で、好奇心をくすぐる演奏であったが、「面白かった」以上の感想を持つためには、私の耳は少し柔軟性が足りないようである。
アンコールは4曲。 なかでも、ワーグナーの歌劇「ローエングリン」から第3幕への前奏曲は、ベートーヴェンで疲れた(?)耳を癒すのにふさわしい、輝きのあるサウンドをきくことができた。 このオーケストラは、さほど上手いオーケストラではないように思ったが、ジンマンの指揮の下、よくまとまっていた。
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