
*東京都交響楽団 プロムナードコンサート No.277
1999年2月7日(日) 14:00〜 サントリーホール
都響の今回のプロムナードコンサートは、かつてこのオーケストラの指揮者陣に名を連ねていた大野和士の客演。 モーツァルトとチャイコフスキーの名曲プログラムである。
前半のモーツァルトで大野は、オーケストラをヴァイオリン両翼配置にした。 歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲を若々しく演奏した後、話題の若手ピアニスト、ジャンルカ・カシオーリをソリストに迎え、モーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」をきかせた。 カシオーリは第1楽章のオーケストラの序奏部から体を動かし、控え目ながら自らのピアノで演奏に参加し、この演奏に対する並々ならぬ意気込みを見せる。 ピアノが主役になると、微妙なルバートや刺激的なスフォルツァンドを多用し、その表現意欲はとても旺盛。 強烈な集中力ゆえ、演奏は個性的ではあるが、一貫した主張を持ったものとなり、聴衆を湧かせた。 しかし、この個性は音楽の自然な流れをやや妨げていた感もあり、どこか落ち着かない印象を受けた。 明晰なタッチと、作品を充分に研究した解釈をきくことはできたが、要するに私の好みと少し違った演奏になっていた。 個人的には、カシオーリは現代ものは面白いけれど、モーツァルトでは音楽的な感興を得られなかった。 大野と都響の伴奏は手堅く、この自在なピアノを充分に引き立てていた。 カシオーリはアンコールに応え、モーツァルトのピアノ・ソナタ第8番の最終楽章を弾いたが、これはたたみかけるような、情熱的な演奏。
オーケストラの配置を通常のものに戻した後半は、チャイコフスキーの交響曲第4番。 大野のチャイコフスキーは、確かかつて第6交響曲の録音があったと記憶しているが、正面切って取り上げたのは久し振りに思える。 大野はこの作品の最大公約数的な解釈を高いレベルで示し、作品の素晴らしさを楽しめる演奏となった。 指揮者もオーケストラも、前半のモーツァルトに比べ、いい意味で力が抜けており、旋律を程よくうたわせ、ここぞという場面では劇的で圧倒的な表情を作り出す。 中間楽章の叙情性も爽やかで、まずは万人向けの模範的な演奏であったと言える。 都響の状態も良く、このような作品で重要な役割を果たす管楽器群も、パワーとメリハリのあるサウンドをきかせていた。
アンコールにチャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」からのポロネーズが演奏され、これはオペラ指揮者でもある大野の面目躍如たる痛快な演奏。 大野にはいつか、このオペラの全曲演奏をしてもらいたいものだ。
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