*NHK交響楽団 第1372回定期演奏会
  1999年2月6日(土) 14:00〜 NHKホール
 N響の1月の定期演奏会は、このCプログラムの日程だけが2月にずれこんでいる。 指揮は、注目のスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ。 すでにAプログラムで、ブルックナーの第7交響曲の名演を成し遂げている(この演奏はテレビできいたのだけれど、ききに行かなかったことが痛恨事となってしまったほどの名演であった)だけに、大きな期待を胸に出かけた。
 まずは、パヌフニクの夜想曲。 初めてきく曲であったが、連綿とした流れを持った15分ほどの作品。 部分部分で、美しいところはあったものの、一度耳にしただけでは、私には作品の真価を理解することができなかった。 スクロヴァチェフスキは共感を持って指揮していたことは分かったが、あまり興味深い作品にはきこえなかった。
 ショパンのピアノ協奏曲第2番は、ギャリック・オールソンをソリストに迎えて演奏された。 オールソンは、明確で粒立ちのはっきりとしたタッチと、明るく開放的な音色で、この作品を楽しくきかせてくれた。 やや陰影に乏しかったものの、リリカルな側面は失われておらず、ショパンらしい味わいを持った、明快な演奏であったと言える。 スクロヴァチェフスキ指揮のN響も、これにぴったりとつけて、この作品の演奏としては水準以上のものであった。 オールソンはアンコールに、ショパンのワルツ第5番を弾いたのだが、これも同傾向の演奏。
 そして、この日の最大のききものは、やはりメインに置かれたベートーヴェンの交響曲第5番であった。 スクロヴァチェフスキは、非常な勢いを持ってこの曲を開始し、フィナーレまで一気に駆け抜けた。 その演奏はアグレッシヴであったとさえ言えるもので、旋律の歌い込みを短めにして、リズムや各主題を明確に提示し、「闘争から勝利へ」の図式を生々しく表現したもの。 勿論、それは決して勢いにまかせたものではなく、細部では独特のアーティキュレーションや管弦のバランスをきかせ、演奏設計はあくまでも緻密である。 オーケストラのアンサンブルは、常に最上のものであったとは言えなかったけれど、それはオーケストラの演奏能力を極限まで引き出そうとするスクロヴァチェフスキの棒に、必死に食らいついていこうとするN響の熱っぽさが、かえってはっきり伝わってくる類の「ずれ」で、私もききすすむにつれて、どんどん熱くなってしまった。 ベートーヴェンの第5交響曲をきいて、こんな思いをするのは久し振りである。 これこそ、生演奏の醍醐味である。
 終演後の聴衆の反応も熱いもので、ステージ上の楽員たちも満足そう。 N響の演奏会は、オーケストラも聴衆も、一昔前に比べて随分変わってきた。 この日の立役者は、名指揮者スクロヴァチェフスキであることには違いないのだけれど、充実した定期演奏会をきく機会が、俄然多くなってきたことを、とても喜ばしく思う。



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