「都への夢」


それは、起こるべくして起こった戦いだった。
互いの戦力の差はなきに等しく、されど戦術の差は大きかった。
巧妙に練り込まれた奇襲に我は、鉄壁を誇った城砦を追われた。
わずかばかりの供に守られ、寄り辺なき中原をさまよう。
次々と襲いくる敵の追っ手。我が盾となり、倒れていく味方たち。
いつしか我は死を悟り、最期の地に都を選んだ。
次の追っ手が来るまでには、まだ時間がある。
そう思ったとき我は、恥も外聞も捨て、ひたすらそこを目指していた。
必死になって逃げるその一歩一歩が、着実に我を都へと近づけていく。
都まで、もう少し。もう少し、あと半歩。
我はそこで愕然とした。己の生まれを呪った。
あと半歩。それは永遠に届かぬ半歩であった。
耳元で嘲笑う死神の声が聞こえたような気がする。
次の瞬間、我が首は敵の騎士に討ち取られ、戦いは終わった。
近くて遠い都。それは、永久(とこしえ)にかなわぬ夢。



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