「今夜のオカズ」


「えと・・・ね、あたし・・・はじめてなの・・・」
目が合って、そう言われたとき、思わずドキッとした。
「だから・・・ね、おねがい、やさしく・・・」
恥ずかしそうに、消え入りそうな声でそう言うと、おずおずと体をひらいていく里美。
その、小さな体が小刻みに震えているのがわかる。
かわいそうに、緊張してるんだろな。俺がしっかりサポートしてやらなきゃ。
「そんなに怖がらなくても大丈夫」
里美の手に重ねた手を、きゅっと軽く握ってやる。
「力を抜いて、僕にまかせて」
いつもとちょっと雰囲気の違う里美に違和感を感じつつも、たまにはこういう里美もいいかな、なんて思ってみる。
さて。
動き易いように、俺は、重ねていた体を少し離した。
くっ、ぐっ、ぐっ。
柔らかい身を、慎重に、ゆっくりと裂いていく。
この感触を、里美の体に覚えさせるように。里美が少しでも気持ちよく感じるように。
しばらくすると、切っ先が何かに当たった。
無意識のうちに、くっと力を入れて、強引にそこを突破する。
「痛ッ!」
里美が顔をしかめた。
「ごめんっ!」
とっさに謝って、ぎゅっと握っていた手をゆるめる。
いけないいけない。いつもの癖で、つい乱暴になってしまった。次から気をつけるから、許してね、里美。
そうして最後まで達したところで、体をやさしく裏返して一息入れ、ふたたびゆっくりと裂いていく。
「アッ」
小さな声を洩らして、ときおりびくっと体を震わす里美。
でも、だいぶ慣れてきたのか、気がつけば里美が悲鳴を上げることはほとんどなくなっていた。
今、里美の顔に浮かぶのは、悦びに満ちあふれた表情――。

僕らはそれから、何度も何度も、そんなことを繰り返した。
そして、最後にふたりで、流れる水で身を洗う。丁寧に、丁寧に。
そうして綺麗にしてみて、あらためて感じる、惚れ惚れするような肌ざわり。そして、美しい色。
なぁ、こんなの、イキのいいうちに食べてやらなきゃ、かわいそうってもんだろう?

それからしばらくたわいない話をして過ごした後、少し遅い夕食を一緒に食べると、よほど疲れたのだろう、里美はそのままベッドへと倒れ込んだ。
その隣で缶ビールを飲みながら、俺は久々の満足感に酔っていた。顔が自然にニヤけてしまう。
今夜のオカズは、いつにも増していいアジだった。ボリュームも、文句ナシ。
初めてで、ちょっとくらい下手だって、愛がこもってるってのはいいもんだ。
すぐそばで満ち足りたように静かな寝息を立てている里美を眺めながら、俺はそう思った。



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