「生まれ変わるものたち」


 振り返ると、もう50年以上も前になる。1948年。戦後初めての記念切手が発行された。有名な「見返り美人」である。「切手趣味の週間記念」として発売されたもので、額面は5円。図柄は菱川師宣の同名の浮世絵を使用している。1980年代の切手収集ブームにおいては、この切手は若いコレクターたちにとってまさに高嶺の花であり、この切手をスタンプ帳に収めている者は仲間内での羨望の的であった。
 そして1996年6月。郵便切手の歩みシリーズ第6集として「見返り美人」が甦った。額面は80円になり、図柄には新たに加わった「NIPPON」の文字が見られる。また、発行当時を偲ばせるモノクローム調のものに加えてカラーのものが発行されたのも特徴で、発売日には久しぶりに郵便局の前に長蛇の列ができた。

 振り返ると、もう10年以上も前になる。1987年。日本ファルコムからアクションRPG「イース」が発売された。「優しさ」をテーマに、不可解な謎解きを捨ててストーリー性を重視した作りや、古代祐三氏らの手によるFM3声+PSG3声を駆使したサウンドが、当時のパソコンゲーマーたちを魅了し、パソコンゲーム界を席捲することとなった。アクションゲームが苦手なユーザのために、戦闘シーンではかの「半キャラずらし」テクニックが使えたことも有名である。
 そして1998年4月。「イース」はWindows版「イースエターナル」として甦った。オリジナルのストーリーを保ったまま、グラフィックは現在のハードウェア性能に合わせて全面描き直し、サウンドは旧作での未使用曲まで含めてCDクオリティ(あるいはMIDI)となっての堂々の復活である。キャラクタの動きが滑らかになったために「半キャラずらし」は難しくなってしまったが、これは、ゲーム世代のユーザのレベルを汲んだ上での措置とも取れよう。オールドゲーマーを中心に人気も高く、初回特典付パッケージは発売から間もなく、通信販売を含めた各ショップで売切れ御礼となった。

 いいものは、時代を超えて甦る。人々の支持を得て。何らかの進化を伴って。しかしリメイクは、過去の経験を活かすことができ、技術の進歩にも後押しされるのだ。何らかの進化を伴うのは当然である。その上で新しい「何か」を混ぜ込まねば、それは単なる逃げにしか過ぎない。結局は過去の遺産を食い潰しているだけだ。過去を偲ぶのは悪いことではないが、リメイクの意義はオリジナルを超える崇高さを身に纏って初めて出てくるものなのではないだろうか。私は、そう思う。読者諸姉諸兄の御意見や如何。



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