「夏の思い出」


私は今、夢を見ていた。心に深く刻み込まれた、昨夏の出来事――。

「おい、もっとちゃんと縛れ!そんなんじゃ、この娘が暴れた時にほどけるぞ!」
「はい!」
兄貴分の叱咤を受ける、純情そうな青年。
その彼の手で私は、なすすべもなく拘束されていく。
目の前には大勢の男たちがいて、好奇の眼差しで私を見ている。
そしてその中には、タカシの姿も。
どんどん山奥に入っていくから、何か変だとは思ったんだ。
あぁ、こんなことなら、スカートなんかで来るんじゃなかった。
「なぁなぁ、ロープ使って縛るんじゃねーの?」
「ああ。この辺じゃベルトが流行りなんだとよ。」
そんな声を聞いている間に、私の足首はしっかりと固定されてしまった。
もう、いいや。どうにでもなれ。
いまさら泣いて叫んでみたって、この状況が変わるわけじゃないし。
「かーのじょっ、その気がなくても濡れちゃうかもよー。気をつけなー。」
「バーカ、そんなのどっちみち自分でどうにかできるもんじゃねーだろ。」
そんな声は、もう意識の外。
私は、かすかな浮揚感を感じたあと、奈落の底へと落ちていった……。

……リリリリリリリリ。
ベッドから伸びた手が、目覚まし時計を止める。
んーっ、もう朝か。これからがいいところなのにな。
でも、ま、そろそろ起きなきゃね。
カワイイ旦那様のために、朝御飯作ってあげなくっちゃ!



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