「山への挑戦」with RICOH GR1s and FUJIFILM SUPER400.

山への挑戦

先人は尋ねた.
「何故あなたは山に挑むのか」

先人は答えた.
「そこに山があるから」

遥かなる歳月が流れた.
そして今,男の前に,山があった.

ひろびろとした緑に覆われた裾野.
そこを軽い足取りでゆるゆると登って行くと,
雪に覆われた中腹に辿り着く.

ふわふわと軽い雪質.
それでいて,人肌を思い浮かべさせるような,
どこか暖かい雪...

「これは...幻覚か...?」

次の瞬間.
男は我を取り戻し,新たな一歩を踏み出した.
こんな程度のことは,折り込み済みだとでも言うように.

雪の丘を乗り越え,
山頂への道を,
ゆっくりながらも確実に,
先へ先へと歩を進めていく.

そして...山頂.
臙脂の台座の上にそそり立つ紅い塔と,
黄橙の岩が男を待っていた.

すかさず塔と岩とを攻略する.
言い知れぬ達成感.

しかしそれは,数瞬の後,絶望に変わった.

「これは...幻覚か...?」

男の目の前に,かつて見た,緑に覆われた裾野があった.

しかしそれは.
今まで足を踏み入れられた様子のない,処女の大地.

そして.
見上げた先に,臙脂の台座が男を嘲笑っていた.

男は,衝撃でぼろぼろになった意識を掻き集める.
本能のまま,ただひたすら手を動かす.

そんな男に追い討ちをかけるように,
ねっとりとまとわりつく大地.

疲れを癒すように,男は水を口に含んだ.

それが,男の敗因だった.

さらに粘度を増す大地に,
男は,もう,耐えることができなかった.
完全制覇を目前にして,男は,倒れた.

そして...

悠久の時を越え,山は制覇された.
男を継ぐものに.

山は制覇された.
しかし,それは山のほんの一面に過ぎない.
男達の山への挑戦は今後も続くだろう.
そこに,山がある限り...

取材協力:梶田氏,河島氏,小川氏 (アルピニスト) ありがとでした.(^^)