HIT株式教室        QRjoin201.jpg

携帯からのメルマガ申し込みはこちらから出来ます。


「HIT Mail Magazine Free!」の発行を始めました。登録はこちらです。

Twitterでも情報を発信しています。1fyuragiでフォローして下さい。


FXトレーダー向けのメールマガジンはこちらから購入可能です。


2012年4月20日(金)

増税の前に経済成長確保を

 政府・与党は消費税増税を最優先課題として取り組んでいます。増税の根拠として、「増税しなければ日本の財政はたいへんなことになる」「ギリシャやスペインのようになって良いのか」「銀行が保有する国債は金利が1%上がれば6.4兆円の損をする」というような国民に対する脅しのようなものから、「消費税を2倍にしても財政は再建できない」「景気が悪くても増税している国がある」などなど、政府とマスコミが揃って増税キャンペーンを行っています。

 それぞれの言い分は正しいかもしれませんが、そもそも誰がここまで財政を悪化させたかの責任を追及したことも無ければ、増税の前にやるべきことをやらないままに増税だけが急がれ、批判が相次ぐのも当然でしょう。そして、増税の前に行政の合理化をやるべきことは当然ですが、最も重要なことは経済成長をどのように達成するかです。

 公約したダム建設ひとつ廃止出来ない政権ですが、予算の無駄を省くと景気を悪化させる面があることも確かです。ギリシャやスペイン、イタリアなどで、財政再建の為に予算を削り、公務員の給与削減や年金のカットなどを含めた緊縮策を実行していますが、それ自体の景気後退圧力でマイナス成長となり、税収が減る結果、財政均衡計画の達成時期が大きく遅れるジレンマに陥っています。

 財政再建は順序が重要です。まず増税ありきでは財政再建は不可能でしょうし、行政の合理化の後に増税を行った場合でも経済成長はマイナスとなり、財政均衡は難しくなるでしょう。まず、経済成長を達成し、完全雇用を築くことが最優先の目標で、同時に行政改革を行い、増税は最後にくる政策課題としたいものです。今のように行政の合理化がないままに増税が優先され、経済成長の見通しも無いようなやり方では財政再建は不可能でしょう。

 具体的に説明すれば、現時点で既に社会保険料の段階的引き上げが行われ、所得税と住民税の復興増税があり、環境税が新設され、子ども手当ての減額と年少扶養控除の廃止まで決まっています。加えて、電気料金の大幅値上げも確実です。これらと合わせて消費税を2倍にすることにより、数年後には平均的な世帯で年に30万円以上の負担増加になります。

 そこへ景気悪化が加わることにより、ボーナス減少や残業収入の減少などが加わり、収入減少と負担増加の合計のマイナスのインパクトは所得の1割を超えるでしょう。これによって景気に悪循環を引き起こし、スパイラルな不況が始まる恐れがあります。更に、不況でも国際的な商品価格は下げ無い可能性が高く、どのような経済環境になるか想像に難くありません。後で政策を修正することが一層困難なものとなりそうです。

 日経平均はファンダメンタルズを軽視した流動性相場の反動で調整場面に入っています。再び流動性相場に戻るには経済指標がそれほど悪くなく、反対に、業績相場へ移行するほど景気は浮上していない状況です。しばらくはファンダメンタルズに従った踊り場ということになるでしょう。

2011年12月29日(木)

日本を暗くする「税と社会保障の一体改悪」

 90年以降のバブル崩壊後の日本は税収が減る一方で社会保障費が増加し、国の借金は構造的に増えるようになりました。そこへ大震災と原発事故が起き、更に欧州債務問題やタイの洪水被害など悪いことが波状的に生じ、現在も続いています。大災害などで税収不足が拡大する一方で社会保障費の増加も収まらず、財政は一段と悪化してしまいました。この事態を打開する為に政府は社会保障と税を一体で改革しようと進め、マスコミや世論も当然のことと受け止める傾向があります。また、欧州債務危機で国債価格が急落し、資金調達が不可能になりかねないスペインやイタリアまで危機が広がったことが日本を財政再建至上主義とでも言うべき方向へ突き進ませています。

 しかし、政府が唱える「税と社会保障の一体改革」が困難な状況を変える決め手になるでしょうか?政府の税の改革は「消費税引き上げ」を中心とした増税のことを意味し、社会保障の改革とは、「年金支払い年齢の引き上げ」を中心とする改悪案とされています。あるいは、社会保障の為の増税として目的税化したところで、他の支出を圧迫しない分、お金を区別する意味がないことは明らかです。もともと、支出はトータルで税収の範囲に抑えるべきものです。

 現状の「一体改革」の議論では増税と社会保障の削減による一体改悪にしかならず、国民にとって、「どちらに転んでも悪いほうにしかならない」という認識になっているのではないでしょうか。こうした八方ふさがりの政策が日本の将来を暗いものにしています。株式市場では割安感が強いにもかかわらず、割安状態が長期に放置されているのは政策の方向性に希望が無いからでしょう。政府が「税収不足だから増税するしかない」という前に、3兆円の整備新幹線の着工や大型ダム工事の復活など無駄な支出を削減する努力が消え、見直すべき予算が次々に復活する始末です。そうした予算を作りながら増税を行うことを決めるのは片手落ちで、国民が納得することはありません。

国民に希望を持てるようにする一体改革とは「国と地方の重複業務を全て無くす行政改革」や「特別会計と一般会計を一体化して無駄を省くこと」でしょうし、最も重要なことは「日本の雇用を創出する成長戦略」を打ち出すことに他なりません。完全雇用が実現していれば増税も恐れることは無いはずです。現在の改革の方向では国民から「税と社会保障の一体改悪」と見られ、増税に対して「消費者はモノを買わない」ことで激しく抵抗するでしょう。その結果、更に景気が落ち込み、不足分を増税する悪循環に陥る恐れが十分にあります。国を丸ごと一体改革する決断が必要でしょう。

日経平均は昨年末と比較して約18%下落しました。これだけの悪材料が揃えば下げて当然と思われそうですが、度重なるアクシデントにめげず最高益更新を諦めない日本電産の永守氏のように、逆境をプラスに転じる前向きの発想が投資家にも必要な時でしょう。