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2012年4月20日(金)

増税の前に経済成長確保を

 政府・与党は消費税増税を最優先課題として取り組んでいます。増税の根拠として、「増税しなければ日本の財政はたいへんなことになる」「ギリシャやスペインのようになって良いのか」「銀行が保有する国債は金利が1%上がれば6.4兆円の損をする」というような国民に対する脅しのようなものから、「消費税を2倍にしても財政は再建できない」「景気が悪くても増税している国がある」などなど、政府とマスコミが揃って増税キャンペーンを行っています。

 それぞれの言い分は正しいかもしれませんが、そもそも誰がここまで財政を悪化させたかの責任を追及したことも無ければ、増税の前にやるべきことをやらないままに増税だけが急がれ、批判が相次ぐのも当然でしょう。そして、増税の前に行政の合理化をやるべきことは当然ですが、最も重要なことは経済成長をどのように達成するかです。

 公約したダム建設ひとつ廃止出来ない政権ですが、予算の無駄を省くと景気を悪化させる面があることも確かです。ギリシャやスペイン、イタリアなどで、財政再建の為に予算を削り、公務員の給与削減や年金のカットなどを含めた緊縮策を実行していますが、それ自体の景気後退圧力でマイナス成長となり、税収が減る結果、財政均衡計画の達成時期が大きく遅れるジレンマに陥っています。

 財政再建は順序が重要です。まず増税ありきでは財政再建は不可能でしょうし、行政の合理化の後に増税を行った場合でも経済成長はマイナスとなり、財政均衡は難しくなるでしょう。まず、経済成長を達成し、完全雇用を築くことが最優先の目標で、同時に行政改革を行い、増税は最後にくる政策課題としたいものです。今のように行政の合理化がないままに増税が優先され、経済成長の見通しも無いようなやり方では財政再建は不可能でしょう。

 具体的に説明すれば、現時点で既に社会保険料の段階的引き上げが行われ、所得税と住民税の復興増税があり、環境税が新設され、子ども手当ての減額と年少扶養控除の廃止まで決まっています。加えて、電気料金の大幅値上げも確実です。これらと合わせて消費税を2倍にすることにより、数年後には平均的な世帯で年に30万円以上の負担増加になります。

 そこへ景気悪化が加わることにより、ボーナス減少や残業収入の減少などが加わり、収入減少と負担増加の合計のマイナスのインパクトは所得の1割を超えるでしょう。これによって景気に悪循環を引き起こし、スパイラルな不況が始まる恐れがあります。更に、不況でも国際的な商品価格は下げ無い可能性が高く、どのような経済環境になるか想像に難くありません。後で政策を修正することが一層困難なものとなりそうです。

 日経平均はファンダメンタルズを軽視した流動性相場の反動で調整場面に入っています。再び流動性相場に戻るには経済指標がそれほど悪くなく、反対に、業績相場へ移行するほど景気は浮上していない状況です。しばらくはファンダメンタルズに従った踊り場ということになるでしょう。

2011年12月29日(木)

日本を暗くする「税と社会保障の一体改悪」

 90年以降のバブル崩壊後の日本は税収が減る一方で社会保障費が増加し、国の借金は構造的に増えるようになりました。そこへ大震災と原発事故が起き、更に欧州債務問題やタイの洪水被害など悪いことが波状的に生じ、現在も続いています。大災害などで税収不足が拡大する一方で社会保障費の増加も収まらず、財政は一段と悪化してしまいました。この事態を打開する為に政府は社会保障と税を一体で改革しようと進め、マスコミや世論も当然のことと受け止める傾向があります。また、欧州債務危機で国債価格が急落し、資金調達が不可能になりかねないスペインやイタリアまで危機が広がったことが日本を財政再建至上主義とでも言うべき方向へ突き進ませています。

 しかし、政府が唱える「税と社会保障の一体改革」が困難な状況を変える決め手になるでしょうか?政府の税の改革は「消費税引き上げ」を中心とした増税のことを意味し、社会保障の改革とは、「年金支払い年齢の引き上げ」を中心とする改悪案とされています。あるいは、社会保障の為の増税として目的税化したところで、他の支出を圧迫しない分、お金を区別する意味がないことは明らかです。もともと、支出はトータルで税収の範囲に抑えるべきものです。

 現状の「一体改革」の議論では増税と社会保障の削減による一体改悪にしかならず、国民にとって、「どちらに転んでも悪いほうにしかならない」という認識になっているのではないでしょうか。こうした八方ふさがりの政策が日本の将来を暗いものにしています。株式市場では割安感が強いにもかかわらず、割安状態が長期に放置されているのは政策の方向性に希望が無いからでしょう。政府が「税収不足だから増税するしかない」という前に、3兆円の整備新幹線の着工や大型ダム工事の復活など無駄な支出を削減する努力が消え、見直すべき予算が次々に復活する始末です。そうした予算を作りながら増税を行うことを決めるのは片手落ちで、国民が納得することはありません。

国民に希望を持てるようにする一体改革とは「国と地方の重複業務を全て無くす行政改革」や「特別会計と一般会計を一体化して無駄を省くこと」でしょうし、最も重要なことは「日本の雇用を創出する成長戦略」を打ち出すことに他なりません。完全雇用が実現していれば増税も恐れることは無いはずです。現在の改革の方向では国民から「税と社会保障の一体改悪」と見られ、増税に対して「消費者はモノを買わない」ことで激しく抵抗するでしょう。その結果、更に景気が落ち込み、不足分を増税する悪循環に陥る恐れが十分にあります。国を丸ごと一体改革する決断が必要でしょう。

日経平均は昨年末と比較して約18%下落しました。これだけの悪材料が揃えば下げて当然と思われそうですが、度重なるアクシデントにめげず最高益更新を諦めない日本電産の永守氏のように、逆境をプラスに転じる前向きの発想が投資家にも必要な時でしょう。

2011年10月17日(月)

公的債務危機の処方箋

 ユーロ加盟国によるギリシャの救済策が先週のスロバキアの承認によって17ヶ国揃って承認されました。しかし、7月に決まった救済策は金額が不足するという指摘が多く、このEFSFへの拠出金増額で揉めているようでは次の救済策が承認されるかどうか極めて流動的です。それ以前に、ギリシャよりはるかに貧しいエストニアやスロバキアがギリシャへの救済資金を出すことは合理的ではありませんし、ギリシャがマイナス成長下で財政削減を行い、借金を返済することも困難でしょう。せっかくの救済案の成立ですが、現状ではギリシャのデフォルトが避けられる見通しは数ヶ月間延長されただけかもしれません。

 加盟国は国民負担増加が世論の反発を受けることを恐れ、次の救済策ではギリシャ債を保有する金融機関などに大幅な負担を求める方向に議論が進んでいます。また、金融機関に資本注入を行うことが独仏首脳会談で決まったことは民間の金融機関の負担増加とセットとなりそうです。しかし、事実上のデフォルト負担を民間に強く求めることは金融不安を一時的に取り除く一方で、景気悪化への悪循環を招くリスクがある劇薬になりかねません。

 各金融機関は公的資金の注入を嫌い、自己資本充実の増資を行うか、資産縮小を急ぐことになります。大型の増資は資金を株式市場から奪い、銀行の資産縮小は貸し剥がしや貸し渋りとなり、景気を悪化させます。それでも、銀行への資本増強は預金者にとって「銀行が潰れないだけの資本がある」という安心感の為に必要と考えられているようです。独仏首脳会談による銀行の資本増強策を株式市場は歓迎して上昇しましたが、実際は銀行融資を縮小させることになり、景気悪化へ進むリスクがある諸刃の剣となる政策です。

 万一、クレジット・クランチが生じた場合、どの国も財政悪化の為に大規模な景気対策を打ち出せず、金融危機を一時的に回避した結果の不景気に対応出来ないことが問題です。これらは既に日本が実証してきたことばかりで、日本化しない保証はどこにもありませんし、日本が金融機関に公的資金注入を行ったから景気が回復したという点はかなり誤解があります。2003年5月にりそな銀行に公的資金注入を決定する前から世界景気の回復傾向に従って日本の景気が底打ちしていました。実際には金融機関の貸し渋りは少なくとも2004年前半まで続き、自己資本比率を上げようとする金融機関の動きが景気回復を鈍くした可能性さえあります。

 また、政治的なリスクが大きいことも問題です。各国の財政事情が厳しい中でオバマ大統領は富裕層増税と景気対策を議会で通すことが出来そうになく、メルケル首相はEFSFへのこれ以上の出資拡大を拒んでいます。インドや中国、ブラジルなど世界経済への影響が大きくなった新興国では高いインフレ率を抑制することが優先課題で景気拡大策に積極的になれません。果たして、沈みゆくタイタニック号のような世界経済を浮上させる方法は無いのでしょうか。

 足元では、投資マネーの一部が商品市場から撤退したことでインフレ懸念が後退していることはプラスになりそうです。もしかすれば、新興国が景気対策に軸足を移すことが出来るようになるかもしれません。問題は先進国の側でしょう。米国がQE3を実施すれば景気回復効果よりもインフレ再燃の副作用のほうが怖く、有効性にも疑問があります。欧州の景気刺激策は7月に上げたばかりの政策金利を引き下げることぐらいでしょう。

 こうした状況下で、財政出動を伴わず、景気を刺激する可能性のある政策が無いわけではありません。それは常識と逆に、「金融機関の自己資本規制を緩和する」ことです。そんなことをすればギリシャのデフォルト時は大混乱すると反対されそうですが、規制緩和と同時にデリバティブや仕組み債などへの投資に対しては規制強化を行い、メリハリを付けることがポイントです。

 現状のように大幅に下げた住宅市場に対する融資や株式保有のリスクを小さく見積もることを許し、一定水準以上に株価や住宅価格が上がればリスクを元に戻すという柔軟な自己資本規制を行います。銀行が現金や国債を多く持つことよりも本来の貸出業務を行う方向へ、規制強化と規制緩和を組み合わせて誘導するわけです。景気に対して自己資本の見方をスライドさせ、景気が過熱する場面で自動的に融資が厳しくなるように仕向けます。

 バブルが弾けてから対策を採るのではなく、金融機関にバブルを作らせず、不景気では資金を提供できるような自動調節機能を持たせるように仕組みを変えることが本当の金融政策になると思います。今のような景気悪化局面でバランスシート調整を強制することは結局、クレジットクランチとなり、大きな資金を持っている者とそうでない者の格差を拡大させる結果となるでしょう。

 日経平均は世界的な悲観人気の修正場面となり、中立水準を模索する段階となっています。売られ過ぎたユーロや商品市況、新興国通貨などが揃って修正されています。ある程度の修正が進めば、それ以上はファンダメンタルズの後押しを待つことになりそうです。

2011年9月13日(火)

無駄と増税の新内閣の始まり

 報道によると、『財務省は9日、東日本大震災からの本格的な復興対策や円高対策などを柱とする11年度第3次補正予算案について各省庁からの要求を締め切った。』と伝わりました。それにしても、「復興構想会議」の提言が報告されてから2ヶ月と少しの期間しかなく、地元とのすり合わせが進んだとは思えない時期に3次補正が決まってしまうことに不自然さを感じる被災者は多いのではないでしょうか。

 少なくとも「災害時の被害を最小化する減災の考え方」や「市町村主体の復興、学校・公民館の再建」、「平地の少ない市街地および集落の再編」など、地元で何も決まっていないことが多い状態で補正予算の要求が締め切られました。国交省は被災地再建の基盤整備として、「住民の高台への集団移転、低地のかさ上げも含む土地の区画整理」などの予算を要求していますが、住民がどうすれば良いかまとまっていない段階で予算を確保したに過ぎません。必要な数字に不足するかどうかさえ分からない予算です。

 あるいは、経産省が要求した空洞化対策の「企業の工場や研究開発施設の国内立地を推進する補助金5000億円」や「ハイテク製品の製造に不可欠なレアアースなどの鉱山買収費用」、「天然ガス探鉱やガス田などの買収を行う日本企業への支援策」などは緊急に補正予算で必要とされるものではありませんし、省庁が補助金を多く得る為の方便に見えます。エコポイントの付与や省エネ製品購入補助は景気対策の延長ですし、復興の為の補正予算に組み込んで急ぐ必要はないでしょう。被災者が求める制度はエアコンを買えばポイントがもらえる制度とは思えません。そもそも省エネ製品を買う余裕がありませんし、優先順位は低いでしょう。

 被災者が最も欲しいものは安定した仕事でしょうし、「企業の国内立地を推進する補助金」で被災地の職が増えるとは限りません。その補助金で急ぐべきことは他に山ほどありそうです。野田首相は所信表明演説で『正心誠意』東日本大震災からの復興に全力で取り組む決意を強調しましたが、省の権益優先の補正予算で復興を急ぎ、その後の増税も急ぐことがどのような結果となるか分かっているのでしょうか。

 ところで、日経新聞でも取り上げられた「官の無駄」の実例として、「仮設住宅の暑さ対策として、にがうり(ゴーヤ)の苗を8月中旬に被災地に配った」ということがありました。国の補助金を利用し、岩手県では1戸あたりの設置費を2万1000円と見積もり、総額1億6800万円の予算をかけ、福島県は1戸8000円から9000円の予算で8月中旬から設置しました。ゴーヤの苗は6月までに植えるべきで、暑さがピークの時に苗を植えても意味がありません。岩手県では事前に住民にアンケートを配り、いらないという回答が9割あったのですが、構わず設置してしまいました。

 仮設住宅に空き家が多いことも行政の怠慢が原因でしたが、ゴーヤの事例は行政の無駄を象徴しています。形式的に国民の要望ということにして予算を取り、結果は構わず使い切るという行動です。地方自治体は住民よりも上を見て予算をもらうことばかり考え、本当に必要なことの優先順位を誤ります。各省と各自治体は必要とする人の要望よりもまず予算をどのように多く取るかが大事というわけです。被災者が省エネ製品購入補助金を必要としているとは思えません。それ以前に省エネ製品を買う余裕がないにもかかわらず、補正予算が出来上がりつつあります。仕事を求める人に「国内立地を推進する補助金」があったとしても役に立たないことは誰でも分かることです。補正予算として緊急に被災者が必要としない項目が補正予算にたくさん並びました。

 本日、所信表明演説を行った野田首相は「正心誠意」東日本大震災からの復興に全力で取り組む決意を強調しました。しかし、ゴーヤの設置予算は野田首相が財務相として認めたものですし、第3次補正も今までの補正予算と変わらない考え方を積み上げたものに過ぎません。被災地の要望を聞いて復興に全力で取り組んだものとは言い難く、新しい日本の方向性を示すようなアイデアも見当たりません。この程度の内容で復興増税がセットとして組まれ、その後は消費税引き上げがあり、社会保障と税の一体改革で更に増税路線をひた走ることになりそうです。マスコミが新内閣誕生の御祝儀をやっているようでは杜撰な復興計画と増税が進むばかりです。

 日経平均はショートカバーや年金買いで反発しましたが、欧州債務問題の打開策は示されず、重苦しい雰囲気に包まれた状態が続いています。今や株価下落と共に先進各国が財政再建不況に陥る瀬戸際の様相を呈しています。ファンド筋など投資家も集合体であるユーロの判断が遅くなることを知りながら焦り過ぎの感があります。2003年に金融危機となった経験がある日本は先輩として市場の動揺を冷静に分析することが出来るかもしれません。何が必要で、どの程度売られ過ぎかなど、分かる部分もあるでしょう。株価は実体価値に対してあまりに売られ過ぎとなることも多く、チャンスをものにしたいところです。

2011年8月15日(月)

米国の格下げは40年前になされるべきだった 

終戦が決まる前年の1944年に米国のニューハンプシャー州のブレトンウッズで連合国側の国際会議が行われました。この会議でIMFと世銀を設立することが決まり、ドルは金を裏付けとした世界の基準通貨とし、国際通貨はポンドからドルへ移行しました。金とドルの交換率は金1オンスが35ドルと決められ、金本位制によるドル中心の通貨体制となりました。

 そして、27年後、今から40年前の1971年8月15日にニクソン大統領は金とドルの交換停止を発表し、ドル暴落を引き起こし、1944年から続いたブレトンウッズ体制は崩壊しました。「ニクソン・ショック」はアメリカの財政赤字が原因で金兌換制度が維持できなくなったことが原因です。そして、財政赤字の最大の要因は1961年から始まったベトナム戦争の軍事負担です。米国とソビエトの軍拡競争が過熱し、代理戦争が南北に分断されたベトナムで起こり、無益な争いで多くの人が犠牲になりました。南ベトナムを米国の支配下に置く権利は米国にありませんから、米国は必要のない戦争に大金を投じたことになります。

 結局、その戦争が財政悪化の大きな原因となり、1971年にドル安誘導となるニクソンショックを引き起こしたわけですから、既に米国のトリプルAの格付けはその時に失っていたのではないでしょうか。ニクソン・ショックから40年が経過しても米国の「双子の赤字」が改善する兆しは見えません。それもそのはず、ベトナム戦争後もアフガニスタンで同じような米ソの代理戦争を繰り広げ、2003年にはイラクに大量破壊兵器が存在するとして強引にイラク戦争を開始したことはご存じの通りです。もし、3つの大きな戦争の負担が米国に無ければ米国の格付けはトリプルAの最上級を維持し続けたかもしれません。

 歴史的経緯を考えれば米国がトリプルAの格付けを回復する為に何を成すべきか答えは明白でしょう。終戦記念日とニクソン・ショックが同じ日であったことは歴史の皮肉としか言いようがありません。大国の全ての軍事予算を削減し、軍隊は国連に世界平和維持軍として統一し、核兵器は全て廃止するというぐらいの高い目標を各国のトップは掲げるべきです。

 日経平均は先週の混乱を抜け出すように3日ぶりに反発しました。ドルの基軸通貨としての地位が不安定であることに変わりが無く、景気対策でQE3の実施でもあれば円高が進み、輸出企業に打撃となることが避けられません。しかも、金融緩和で景気拡大を計ることは粉飾決算のようなもので、いずれ今回のような急落でアジャストされてしまいます。肝心なことは米国も日本も無駄な出費を無くし、成長につながる方向へ投資できるかどうかです。また、米国が金融政策で出来ることは日本を反面教師として金融機関の貸し渋りをやめさせることでしょう。

2011年8月1日(月)

常識が通じない金融の世界

 専門家や格付け会社の見通しによると、「米国の国債発行額の上限が引き上げられなければ米国債の格付けが下がる」ということです。米国が国債の利払いを続ける為に制限を引き上げ、新規に国債を発行して資金を作る必要があり、それが出来なければデフォルトするからトリプルAの格付けは引き下げられるそうです。財政や金融を知らない常識的な個人から見れば、既に米国は多額の借金があり、新規の発行枠の有無と無関係に格付けが高過ぎるという疑問が生じるに違いありません。

 言い方を変えると、「借金が多い人が更に借金を増やす契約をすると格付けが最上級に維持される」ということになります。一般的な金融機関では返済が難しくなった個人や企業に貸すことを追い貸しと言い、一時凌ぎの悪しき融資と見なされます。米国の国債発行額の上限引き上げは追い貸しとどこが異なるのか、常識的な見方をする方には理解が出来ないことに違いありません。「もっと借金が出来なければ破たんする」と言っている米国の格付けがトリプルAとなっていることが甘いというのが常識的な見方でしょう。格付け会社は政府に脅されていると勘繰りたくなるかもしれません。

 また、イタリア国債が投資家による財政不信の高まりによって急落していることも不思議な出来事に映るかもしれません。イタリアの財政は確かに既存の国債残高が多いですが、既に良く分かっていたことで、残高がGDPの2倍の日本と比べれば1.2倍とはるかに少なく、国の収支は黒字予想です。それにもかかわらず、黒字化がはるかに遠く、財政赤字が多過ぎる日本の国債は買われ、イタリア国債は急落しています。財政赤字が多い米国債も買われています。日米の国債が買われていることは常識的な見方では理解できないことでしょう。

 結局、資金需給が債券市場に一般常識を通じさせないに過ぎないのですが、債券市場の参加者も常識に目覚める必要がありそうです。これは不健全だと感じる常識的な見方を持つことも時には必要でしょう。一方、常識的な判断が誤ることもあります。「円高が進み過ぎたから為替に介入すべきだ」という常識的な意見がそうでしょう。為替介入でドルを買い、その資金で米国の国債を買うことは財政赤字の国が同じ赤字の国を補てんするというおかしな構図です。介入以外の方法で円安にするか、円高メリットを最大限に活用する政策を行ってもらいたいものです。

 日経平均は米国の債務上限額の引き上げで合意と伝わったことで反発しました。問題先送りではあっても、市場は歓迎します。QE2で市場に出回った資金はそのまま回収されず過剰流動性の相場が維持されています。何よりも財政再建と国債発行限度額の引き上げを引き換えにする米国では景気対策で財政出動が許されません。財政以外の方法で株価を上げる方法を考えて景気対策とする必要があります。まずは出来る限りショートカバーを有効に利用したいところでしょう。

2011年7月5日(火)

科学技術は常に未完成

 ようやく自宅でインターネットを使える環境を整えた知人がPCを使えず立ち往生しているそうです。勤務先では日常の業務でコンピューターを使いこなしているつもりでも、新規にPCはすぐに使えるようには出来ていません。例えば、日本で販売されているにもかかわらず、言語として日本語を選ぶかどうか聞いてくるようなことに最初は面食らうでしょう。あるいは、「管理者に問い合わせて下さい」というメッセージに至っては自分が所有者であるにもかかわらず、他に管理者がいるのか?と理解出来ない質問に思えます。インターネット設定の初心者が立ち往生した原因は様々な状況で「許可しますか」と聞いてくることにあり、どう対処して良いか分からなくなったということでした。初心者でなくても多くの方が質問の意味が分からずに適当にどちらかをクリックしてやりすごしている問題です。

 また、毎日のように「更新の準備が出来ています」という案内も厄介で、更新すべきかどうか、何を更新するのか面倒です。コンピューターを「完成されて便利なもの」という捉え方で利用しようとすると様々な困難に阻まれます。基本ソフトを日々更新する必要があるということは未完成な商品であることを示しています。ソフトウェアが書き換え可能ということ自体が中途半端な技術ということになり、ソニーへの大規模なハッカー攻撃のような事件を引き起こしました。便利なシステムが突然止まってしまうことがあり得ます。消費者は未完成なものを便利なものとして利用しているに過ぎないと自覚する必要がありそうです。

 原子力発電はその典型でしょう。電気を安く作り、低炭素社会に貢献できる便利なものと思い込んでいたようです。原子力発電は災害や人災に対してあまりに無防備で未完成の技術だったわけです。私達は便利さを求めるとその一方で同じだけの不便さが隠れたところに蓄積されることを忘れがちです。極端な例では「自然エネルギー」も無限ではありません。太陽光発電の太陽は46億年の間、軽い元素の水素を核融合することによってエネルギーを放出してくれましたが、その能力の半分を既に使い切っています。便利で温かい太陽光は受益した分だけ使えなくなっていることが事実です。エントロピーの法則には誰も逆らえません。今や原子力を制御したというのは思い上がりに過ぎず、未完成の技術だったことを多くの方が理解することになりました。これからは自然エネルギー関連株を買っている投資家に限らず、効率が良く、安全で環境に優しいものを選ぶ知恵を出し合っていくことが全ての人々の責務に違いありません。

 日経平均は6連騰となりましたが、問題の多くは解消されない状態です。ギリシャ債務問題については30年物の長期債へロールオーバーする方針になり、現在の責任者がいない将来へ問題を先送りする手法に過ぎません。米国の雇用問題や日本の債務問題など解決の糸口が見えない問題は山積しています。何より、売買代金が増加しないことが力強い上昇ではないことを示しているようです。

2011年6月7日(火)

二重債務問題と政治家の身勝手

 震災被害で既存のローンが残り、再起の為に新たに融資を受ける必要がある個人や企業が二重債務を抱える問題に対して、与党のみならず、自民党、共産党、みんなの党など、全ての政党で救済の必要性が叫ばれています。しかし、他の小さな地震災害や台風被害のような自然災害で二重債務を免責する特別な政策が実行されたことが無く、大災害なら免責となる政策がフェアなものかどうか、あるいは票を意識してのことかと疑問を感じる国民も多いことでしょう。

 住宅で言えば、ローンを支払い終えた人も現金で購入した人も被害を受けたことに変わりがありません。支払い終えた人の住宅が全壊してプラスが無く、万一に備えてローンを長期のものにした人が自然災害で有利になるということで良いのでしょうか。また、金融機関の債権放棄が税金で行われる場合は被害者支援の大義を掲げながら金融機関の支援を行うことになり、具体策について安易に決められることが無いようにチェックが必要でしょう。自民党案では「債務を公的機関を設けて買い取らせ、個人の住宅ローンも整理を行う仕組みを作り、住宅の建て直しに向けた低金利融資を検討する。」と報道されました。非常に曖昧で誰の救済か分からない怪しい雰囲気が漂います。

 しかし、どの政治家や政党も、そもそも、金融機関の融資制度に誤りがあり、震災が生じた後で対応しようとするから公平で無くなることを理解していないようです。二重債務問題が生じる仕組みは既存の融資制度に大きな欠陥がるからです。問題が震災で大きくなる前に政治家が全てのローンをノン・リコース・ローンにするように法整備をしていれば問題は大きくならなかったでしょう。住宅を建てれば住宅のみが担保であって、借り手は担保を放棄すればローンから解放される仕組みがノン・リコース・ローン(非遡及型貸付)です。中小企業の融資では機械購入の担保は機械だけでなく、借り手が保証することを要求され、その時点で「二重ローン」となっています。住宅ローンの返済が滞った場合に借り手にどこまでも責任があるリコース・ローンを採用しているのは世界的にも日本ぐらいで、日本の融資制度が金融機関に圧倒的に有利で特殊な形態を採用していることが根本の問題です。残念ながら、そのことを指摘し、変えようとする政党や政治家はいません。

 非常時に行われる政党の政策や政治家の言動が日頃の対策が出来ていないことに由来する例が多数あります。雇用調整金を受け取ろうとすると復旧を優先すべき時に1日中研修をしなければ受け取れない決まりがありました。非常時に優先的に機能する法律が未整備だったわけです。また、原発を推進する省庁が同時に安全を管理する部門を抱えていることが今回の原発事故の大きな問題だったことが分かりました。日本の政治家は志が低いか、信念が無いのでしょうか、根本的な問題解決策を作ることが苦手なようです。事故を起こす前の管理体制の甘さを正し、災害対策以前の問題として、金融機関と借り手が公平な立場でノン・リコース・ローンを組めるように改革することが政治家の役割でしょう。また、本当に重要な復興予算は何かについて国民が納得できる案を早急に提示していただきたいものです。

2011年4月26日(火)

原発問題で分かった日本の構造問題
福島を自然エネルギー先端特区として改革を

 福島第一原子力発電所の事故で浮かび上がったのが経産省と東電の癒着関係の強さです。経産省からは石田徹・前資源エネルギー庁長官が1月に東京電力の顧問に就任したばかりですが、東電は古くから重要な経産省官僚の天下り先です。顧問と言っても過去の例に倣えば将来は副社長ポストが約束されていたと言われています。また、監督すべき立場の原子力安全・保安院が推進する側の経産省にあることのリスクが浮き彫りとなりました。

 電力会社と原子力安全・保安院の癒着構造については10年前に大きな問題となったことがあります。2000年に東電でエンジニアをしていた社員が「東電の福島第一、第二、柏崎刈羽原発の検査記録の数値が改ざんされている」という内部告発文書を原子力安全・保安院に送りました。しかし、原子力安全・保安院は文書を2年間放置した後に、事情も聞かず、実態も調べず、告発者の資料ごと東電に渡しています。

 お蔵入りとなりかけた告発は当時の佐藤福島県知事が検査数値の改ざんに対する政府と東電の態度に業を煮やし、経産省と東電批判を強く行ったことで世間に知られるようになり、経産省と東電の癒着関係が暴露され、再検査に追いまれました。再検査で全ての原発の運転が止まりましたが、幸運にも冷夏で大規模停電は起きず、原発のリスクは忘れ去られたようになりました。その後も福島原発の工事が欠陥工事だったとの指摘が工事関係者によって明かされ、また、国会では津波で原発を冷却出来なくなる可能性を指摘する質問もありましたが、電力会社と経産省は「原発は何重にも安全装置がある」との答弁を繰り返し、今の危機を招いています。

 地震と津波は天災ですが、原発事故は安全に十分なコストをかけなかった東電や監督が疎かだった経産省による人災だったことが明らかになりつつあります。他の電力会社も難を免れただけで、最近では余震で女川原発に想定以上の揺れが生じ、想定する地震レベルが低いことが分かって問題になり、非常時の電源に用意された各電力会社の現在の電源では冷却装置の電源にならないことを電力会社が明らかにしています。非常時の電源が無い原発は即座に停止すべきですが、福島の事故を経験しても尚、リスクを軽視する姿勢が変わりません。構造的な癒着関係が社会の非効率性につながり、事故対応は迅速性を欠き、危機を拡大しています。原発事故はこれまでのように「安全だ」で済まされてきた問題ではなく、現実に起きてしまった大問題です。何がこのような大事故を起こしたか気付き、変革を求めるべき場面でしょう。

 そして、原発事故の安定的冷却に成功した後に福島には原発をゼロにし、自然エネルギーの最先端地区として再生する方向へ進んで欲しいものです。原発付近の土地は東電が補償すると同時に太陽光発電所や風力発電所を集中させ、福島のイメージを180度変える必要があります。原発事故処理後に何年も立入り禁止とするだけでは福島のイメージが悪化したままになるでしょう。福島産、福島出身というだけで差別されるようなことが続いて良いのでしょうか?福島県は自然エネルギー開発の世界最先端地区として、世間を見返すぐらいでなければ困ります。

 その為にはあらゆる可能性を試してみるべきです。例えば、塩分濃度が高くなった水田で沖縄の海で発見された重油と同質の油を作り出す藻類(オーランチオキトリウム)を大量生産する実験はどうでしょうか。候補となる技術は日本にいくつもあります。福島県東部にあらゆる自然エネルギーの開発技術を結集し、最先端の自然エネルギー開発地区として変貌し、首都圏への自然エネルギー供給源として「福島ブランド」を再構築して頂きたいものです。スマートグリッドは福島が世界のトップとされ、自然エネルギーは福島に学べと言われるほどになれば日本に対する風評被害も変わるでしょう。

2011年4月4日(月)

過疎化が解決しない理由

 東日本大震災の被災者に向けて、全国の過疎に悩む自治体は移住プランを掲げてメッセージを出すべきだと書きました。しかし、残念ながら、過疎に悩む自治体が被災者を積極的に招く動きはほとんど無いようです。いくつかの自治体で既に移住希望者向けに住宅を建てたり、まとまった補助金を出しているところがありますが、そのような自治体ですら積極的に被災者を招へいする気配がありません。移住者を求めているように見える自治体ですら、実際の動きは鈍く、他の自治体は期待出来ない状態です。これは一体どういうことでしょうか?

 どうやら、過疎に悩む自治体の「過疎対策」とは『住民の生活交通を確保するため、地域交通の維持・確保に要する経費の助成措置を強化せよ』ということだったり、『道路、下水道等全国水準より大きく遅れている生活環境施設の整備を促進せよ』ということや、『遠距離通学や寄宿舎生活を余儀なくされている児童・生徒の家庭負担軽減のため、スクールバス運営に対する支援、通学費・居住費の支援等の要請』、あるいは『地方交付税を充実し、道路・橋りょうの維持補修などに過疎対策事業債を適用する対象事業の拡大』などの要望を実現することであり、住民を増やそうとするものではなく、減少する地域にもっと予算を出して暮らしやすくして欲しいということのようです。人口を増やす為の「過疎対策」では無く、予算が欲しい為に口実を列挙しているに過ぎないようです。

 しかし、過疎化が進み、不便になったから予算を多くして欲しいというだけでは税の使い道として非効率と言わざるを得ません。過疎化対策として実行される移住者向け施設などはアリバイ作りの政策のようにも見えます。現状の「過疎化対策」としての税金の使われ方を見る限り、「1票の格差の存在理由」を知る結果しか出てこないというのが実態です。

 東日本大震災の被災者の方々が元の生活に戻るには仮設住宅の建設だけでも半年待たされるそうですし、その後、仕事の確保が出来るのか難問が待ち構えます。それまでは国が補助を行うことになりますが、これに対して、過疎の地域には多くの空き家があり、休耕地もたくさんあります。過疎の地域に即戦力となる「農業のプロ」や「畜産業のプロ」が来ることは被災者への希望につながり、節税にもなるはずです。東日本大震災を受けた日本は今、本当の構造改革に向けた努力を試されているのではないでしょうか。国債格下げを防ぐ為にもプラス思考で動くべき場面でしょう。

2011年3月24日(木)

『東電不況』となる

 12日に福島第1原発の1号機が水素爆発を起こし、大震災後の翌週の14日は日経平均が1万44円から始まり、その日の11時過ぎに3号機が水素爆発を起こし、日経平均は633円安の9620円へ下げました。翌15日は6時10分過ぎに2号機が水素爆発を起こし、日経平均は再び下げて始まり、菅首相が「かなりの放射能漏れの可能性」を警告するとともに付近の住民に避難勧告するに至り、日経平均先物は7800円まで売られる場面がありました。

 現在も綱渡りが続く福島第1原発が建屋の爆発でなく、原子炉爆発を起こすような最悪の事態になれば7800円でも止まらないかもしれません。現状程度の放射線量でも農産物の出荷制限や水道水が危険な状態になるなど、悪影響が広がっています。また、信用取引を行う個人投資家の多くで追い証が多発するなど、多額のロスカットに追い込まれ、信用買い残高が急減しました。証券会社には多額の立て替え金が発生し、証券業の廃業に追い込まれる会社も出ました。

 恐らく、大震災だけの直接的な被害だけなら日経平均は先物で7800円まで売られることは無かったでしょう。と言うのも、主な調査期間によれば、地震と津波による直接的被害を15〜20兆円程度とし、その後の復興需要がGDPを押し上げる部分と相殺して11年度のGDPは小幅ながらプラス成長が見込めるとしているからです。大和総研ではトータルで0.2%の押し下げ要因に過ぎないとしています。

 しかし、東電の原発事故で日経平均は大きく下げ、その後の計画停電によってGDPはマイナスになるという見方がほとんどになりました。BNPパリバでは計画停電が続くと11年の成長率はマイナス6%と試算しています。4月で停電が一旦終了しても、夏と冬の需要期に再び停電せざるを得ないとするとマイナス成長は確実でしょう。つまり、東電の原発事故が無ければ11年度のGDPはプラス成長となるはずでしたが、東電の原発事故と停電の影響でGDPはマイナス成長となると予想されます。11年度の日本経済のマイナス成長、すなわち『東電不況』と言うべき事態になるわけです。

 また、原発事故で汚染され売り物にならなくなった農産物の補償問題があり、これから米の作付を行い、それが売りものになるかどうかの問題もあります。停電による被害も大きな問題です。多くの飲食店や小売業、サービス業の売り上げが激減し、製造業も受注が減り、受注があっても停電で生産に支障をきたす状態が続きます。消費者は余分にミネラルウォーターを買わされました。こられの補償の責任は全て東電にありますが、東電は天災による免責を主張する権利もありますし、支払い能力が不十分なら国が支払う法制度になっています。「国の支払い」とは、責任が無いばかりか被害者となった国民の税金によって支払われることを意味します。

 果たして、原発事故に「想定外の自然災害」という言い訳が存在するのでしょうか?放射性物質が拡散する被害はどのような自然災害でもあってはならないことです。「5メートルの津波までは想定していたが、それ以上は想定外の自然災害」と言い逃れることが出来るような性質の事故ではありません。原発事故による社会全体の損失を考えれば、どのような津波にも耐えられる構造にすることのコスト上昇は微々たるものでしょう。今回の原発事故を反省して、他の稼働中の原発に対策が進められるという話も指導もまだ聞こえません。全ての原発を止めると日本中が停電するという現実と過剰なまでの地震・津波対策は矛盾するものではありません。すぐに可能な対策はいくつもあるはずです。そして、復興支援の予算も必要ですが、風力発電や太陽光発電の拡大や無害の新エネルギー開発に大きな予算を振り向け、国の構造改革を行う決断が求められる場面でしょう。

2011年3月22日(火)

過疎化に悩む自治体は避難民のスカウトを

 テレビの地震特番は避難民の間で食べ物や水や燃料がなどが不足している実態を長時間にわたり流しています。しかし、不足するものが手に入り、避難生活が上手く出来たとしても、元の場所に生活する場所が無ければ避難民に希望がありません。レポーターが避難所で「何が不足していますか?」と繰り返し尋ねますが、避難民に不足しているのは「希望」に違いありません。今の空腹や寒さを防げたとしても何か明日の為にプラスになることはないでしょう。多くの避難民は元通りの生活を望んでいることは言うまでもないことですが、どの程度の期間と資金があれば戻れるのでしょうか?

 現実的な方策として、全国には過疎化に悩む自治体がたくさんあり、移住する人を求めている実態を活用してはどうでしょうか。しかも、被災者の方々は農業や漁業のプロが多く、いわば「即戦力」です。

 過疎が進む地域は空き家や多数あり、休耕地も十分あるでしょう。人口減少に悩む自治体は移住プログラムを携えて、続々と避難場所にアピールに駆けつけるべきです。上手くマッチすれば過疎の地域は人口が増え、避難家族は仕事を得ることが出来、共に希望に向かって歩み始めることが出来ます。

 その昔、大阪の佃に住んでいた人たちは東京(江戸)に移住し、第2の佃の地で佃煮を作り、名産にしました。あるいは、和歌山の白浜や勝浦の住民は伊豆や千葉でも同じ名前の町を作り、黒潮に乗って移住地を広げたのでしょう。原発の付近に住む方々は町ごと移住するくらいの話が必要かもしれません。

 被災地の復旧も大事ですが、あれだけの被害では復旧に相当な時間がかかりそうです。原発周辺では今後住めるかどうかも分かりません。過疎に悩む全国の自治体は第2の故郷を選択するアイデアを持って宣伝部隊を避難場所に送り、アピールする運動を始めてはどうでしょうか。ボランティア活動を行う方たちの中にも日々の救援と同時に「明日の救援」作戦もお願いしたいところです。

2011年3月7日(月)

日経平均のTOPIX化

 パナソニック電工は3月2日に臨時の株主総会を開き、株式交換でパナソニックの完全子会社となることを承認しました。また、3月4日には三洋電機も同様の決議を行いました。これにより、2社の少数株主の持ち株についても強制的にパナソニック株と株式交換され、4月1日にパナソニックの完全子会社となります。議決権の3分の2を超える株主は特別決議を行うことが可能で、パナソニックは既に両社の株式の80%以上をTOBで取得し、完全子会社化に向けた提案を行い、この度「大パナソニック」が実現することになりました。そして、「日経平均採用」という観点ではパナソニック電工三洋電機は採用除外となり、パナソニック1社が残ります。

 また、正式発表はまだですが、みずほFGみずほ証券みずほインベスターズを統合させ、みずほ信託と共に完全子会社化する方針と伝えられていますので、近い将来、日経平均採用のみずほ証券みずほ信託は日経平均の採用除外となるでしょう。更に、来年は住金新日鉄の経営統合が行われる見通しになっており、ここでも日経平均採用の1社が減ります。

 このような大型の経営統合を繰り返すことによって、統合後はそれぞれ巨大化した日経平均採用会社が残り、TOPIXが加重平均株価という違いがあるものの、日経平均が大型株の指数となり、TOPIXに接近することは避けられません。また、日経平均への新規採用は今週中に恐らく第一生命のような大型株を優先的に採用することになるはずで、日経平均のTOPIX化に寄与することでしょう。代表的な日本株の2つの指数が徐々に接近することになります。

 「日経平均のTOPIX化」は日経平均の指数としての魅力を低下させるばかりで無く、このことがグローバリゼーションと関係していることに注目する必要があります。日本国内では大きなシェアを持つ企業でさえ、国際的なシェアは低く、価格競争力では世界で勝てる力を持てなくなってきました。これが巨大なM&Aを推進する動機になっていることは明らかでしょう。グローバリゼーションによる合理化は各企業において避けられない必然的な経営統合になりつつあります。

 投資家は企業価値の面でこれらを歓迎すべきですが、その先には確実に合理化が待ち受け、国内空洞化や人員削減も行われるはずです。個々の企業は正しく行動していても全体では誤りが生じるという合成の誤謬となりかねません。日経平均のTOPIX化は雇用創造が最も優先的な政策課題であることを政府に突き付けていると言うことが出来そうです。

 日経平均は米国のファンダメンタルズの改善を確認しつつつも、政治の混迷や原油高騰の煽りを受けて大幅反落となりました。中東情勢の緊迫化が米国の債券買い・株式売りとなり、為替市場でリスク回避の円買いとなったこともマイナス要因です。ただ、売買代金の低下が示すように実需売りが多く出たというより、買い手が参加し辛い面が大きく、そこへ裁定解消売りが生じて下げ幅を拡大しています。リビアについても多国間の戦争では無く、内戦であり、原油関連施設は双方にとって重要な意味があり、地政学的リスクにやや市場は神経質になり過ぎているようです。

2011年2月22日(火)

支持率20%の崖っぷち政権

 自公政権に嫌気がさし民主党に委ねた選挙民は今や期待した改革が次々と裏切られ、最近の内閣支持率は各新聞社の調査で20%程度へ落ち込み、時事通信の世論調査では17.8%と末期的な支持率となっています。民主党政治の裏切りとして最初に目立った躓きは普天間基地の県外移転を実現出来なかったことでしょう。次に、無駄な公共事業の象徴だった八ッ場ダムを「再検証」することになり、建設再開の道へ戻っていることがあります。公共事業はいくつかの仕分けで見直された事業を除き、無駄を排除する意欲が現状ではほとんど見られなくなりました。そもそも、政権与党なら仕分けをするまでも無く、予算を仕分けした状態で国会に提出すれば良いことです。この点は会計検査院の検査官人事を政治主導で行わず、官主導の人事がそのまま承認される見通しとなったことにも現れています。あるいは、外交問題では北方4島の問題で、ロシア大使を更迭するはずが、そのままだらだらと任命していることなど、多くの問題で政治力を発揮していません。あるいは、子ども手当ての行方が定まらないまま、扶養控除の廃止だけ決まるというような不手際があり、予算が通らなければ「日常のごみ収集が出来なくなる」というような不安まで国民に与えています。

 政権交代に賭けた国民は何を強く望んだのでしょうか?恐らく、雇用問題や年金問題に代表される少子高齢化社会に対する不安を解決して欲しいということでしょうし、既存の非効率なシステムを改善し、その後で納得できる状態で増税を議論することだったのではないでしょうか。残念ながら、国民の期待はことごとく破られたと言っても良い状況です。現状は公約と掛け離れ、政権に留まることが目的化したように映ります。しかし、もっと大きな問題はトップを交代したり、野党と政権交代したところで展望が持てないことでしょう。国民の期待に応えるだけの力量がある政治家が存在しないことが明らかになったことが政治不信につながっています。

 日経平均は産油国へ拡大した民主化運動が原油価格を急騰させるなど不安感を煽り、連騰の反動もあって大きく下げました。改めて世界には独裁政権が多いことに気付かされ、長期政権は腐敗し、国民の不満が高まっていたことを知らされます。命懸けのデモは決して中東戦争などの危機とは異質なもので、大衆の願いが無事に叶うことを願わずにはいられません。一方、株式市場は不透明感が強まるほど買いチャンスとなることは経験則で明らかで、好需給の相場が持続する可能性が高いと見たいところです。

2011年2月7日(月)

既得権益を打ち破れ(3)

 7日の日経新聞5面の「オピニオン」欄に論説委員長の平田氏が『増税の前に「既得権仕分け」を』と題して、高齢者の「年金既得権」と「公務員給与の高額既得権」について疑問を呈しています。年金に関しては既得権扱いすることに問題もあり、約束された支給年齢を引き上げるべきではないと思いますが、公務員が財政難にもかかわらず高級を維持していることは見直されるべきでしょう。

 あらゆる論調がS&Pによる日本国債の格下げで消費税増税が当たり前のようになりましたが、その前に見直すべきことが多いという点で日経新聞の平田氏の意見は賛成できることです。その昔、中世のヨーロッパでは十字軍の遠征費用が嵩み、どの国でも財政がひっ迫しましたが、国王や領主の政策はだいたい同じで、君主は「財政が不足すれば税金を上げれば良い」と言い、「税金を納めることは国民の義務だ」とも言いました。江戸時代の財政難も同様に、自らの失政は問題視せず、税金(年貢)の引き上げで立て直しを図ることが当たり前でした。

 日本が財政赤字で国債も格下げされ、首相や与謝野氏などが「このままではたいへんだから消費税を引き上げる」とか、「税制と社会保障を一体化して見直す」という発言しています。それは責任ある態度に見えますが、実は江戸時代の悪徳代官や中世の専制君主と何ら変わらない性質のものです。「不足すれば税金を多く取り立てる」、「税を納めるのは義務だ」という2つのセリフは大昔から悪政の象徴です。その程度なら小学生でも言えるでしょう。否、小学生にも失礼で、増税するだけなら誰でも言えます。あるいは、話を分かり難くするだけの「増税と社会保障を一体化する議論」も無責任というほかありません。無責任という意味は更に不景気が深刻化することや失業の増加に対する答えがないからです。

 ではどうすれば良いのでしょうか?一般の会社が赤字続きならどうするか考えれば結論は至ってシンプルです。一般企業なら、製品値上げ(増税)が難しければ、売り上げ増加(景気拡大)を目指すと同時に、合理化(公務員給与下げ、無駄の排除)で対応するでしょう。政府や識者の意見は常に重大な点が抜け落ちています。お分かりのように、政府や識者の意見で最も抜け落ちている点が『売り上げ増加(景気拡大)』の部分です。『少子高齢化』だから税収の自然増は見込めないと決めつけ、責任ある立場の人間が揃って一番重要な点を避けてしまうことが最大の問題点でしょう。要するに、増税は言えても、雇用や所得を伸ばすアイデアが無いわけです。本来は増税という前に、「既得権益の見直し」と「行政の節約」や「資産処分」があり、更にその前に、「景気拡大、雇用増加」をどうするかの議論が必要です。結果として増税の議論が無責任なものばかりとなり、後ろ向きに進むようなことにしかならないのでしょう。

 日経平均は米雇用統計に対する楽観的な見方から、直近高値を上回る続伸となりました。流動性相場としての株高はある程度自然な流れでもあります。その一方で、資源上昇なども同じように進み、矛盾も大きくなります。どちらも問題無くコントロールすることは出来ず、エジプト問題のようなショック安はハプニングでは無く、膨らんだ流動性に対する警告として、避け難いものと認識する必要があります。楽観過ぎる見方は問題点の多くを隠しがちです。逆に、悲観的な見方に陥ると踏み上げられるのが流動性相場の厄介な一面でしょう。

2011年1月25日(火)

既得権益を打ち破れ(2)

 既得権益には一般常識が通じないことが珍しくありません。一つの例として、JRの運賃の「2重価格」があります。鉄道マニアには常識でも、一般の利用者が知らずに高い金額を支払うケースがごく普通に存在します。一般常識では、例えば、タクシーで駅から目的地まで行く場合、途中で降りて別のタクシーに乗り換えると高く付くことが当たり前です。しかし、JRでは都市部に「電車特定区間」という乗車賃が安い区間があり、特定区間外から乗車する場合に特定区間内の安い運賃を適用せず、割高になるケースがあります。特定区間を区切って購入したほうが得をするという常識とは異なる制度です。

 具体的な例では、「京都から天王寺」まで乗車する場合、運賃は890円ですが、途中の大阪駅で区切り、「京都−大阪、大阪−天王寺」に分けて乗車券を購入すると730円になり、160円安くなるということが起きます。タクシーなら途中で降りると必ず割高になりますが、JRは特定区間で切符を乗り継ぐようにして購入すると安くなることが良くあります。この区間の6ヶ月の定期では「京都−天王寺」は128520円かかり、「京都−大阪、大阪−天王寺」と分けて買うと合計で104330円に収まるので、24170円の節約が出来ます。何も言わず普通に購入すると高い運賃を支払うしかりません。

 あるいは、「横浜−池袋」を途中通過駅の品川で「横浜−品川、品川−池袋」と分けて購入した場合、1回の運賃は90円安くなり、6ヶ月定期では13610円安くなります。また、「浦和−品川」間をでは、「浦和−田端、田端−品川」の2枚に分けて買うと6ヶ月定期で7550円安くなります。品川に本社があるソニーが京浜東北線や中央線を利用する社員の定期を電車特定区間で分けて購入する工夫をすれば交通費を年間で数百万円以上節約できるでしょう。リストラした社員の数を少し減らせたかもしれません。都市の中心に本社や店舗を構え、多数の人が通勤するデパートやメガバンク、通信各社などの交通費をかなり安くすることが出来ます。

 鉄道の乗客は利用する際に、「特急券はどの程度遅れると払い戻されるか、などを記した国語辞典並みの細かな契約(旅客営業規則)にサインした」ことになり、一方的に規則が適用されます。乗車券については競合私鉄や地下鉄がある区間は特定区間として安い料金が設定される傾向があり、特定区間外から区間内の乗車賃は特定区間外の高い運賃が一方的に適用され、安い料金の恩恵がありません。しかし、利用者が区切って購入することは規則違反ではなく、どの駅でも可能です。問題は安い運賃を利用しようとすると自動販売機で買えなかったり、Suicaなどが使えず、自動改札を通れないなどの障害が多く設けられていることです。

 日本経済は長くデフレに苦しんでいますが、全く値下がりしないのが様々な公共料金です。それらは既得権益で守られているだけで実は値下げ出来るかもしれません。始めの一歩として、大手企業が揃って「自動改札を2枚投入可能にせよ」と迫れば電車特定区間外から都心への交通費は大幅に下がることが今すぐ可能になるかもしれません。高い運賃を払っている利用者が安い購入を一斉に始め、有人改札を利用するようになるとJR各社も利用者目線で修正せざるを得ないでしょう。誰にでも既得権益を変える機会があるわけです。

 日経平均は米国株高を映して続騰しました。日本株の出遅れ感による上昇から米国の写真相場の傾向に戻ったようです。米国株の強さは際立っていますが、ドルは方向感が無く、景気が強ければ上がるはずの米債金利も低迷が続いています。個別企業の業績が予想を上回ったことが米国株の主な上昇要因となっていますが、主要な個別企業の業績が良いことと米国全体の景気が良くなることは必ずしも一致しません。個々の企業の最適行動が合成されると誤謬となることもあります。余った資金でM&Aを行い、買収先企業のリストラをすれば業績は上がりますが全体は良くならないこともあります。決算シーズンはその辺りの感覚が鈍くなることに注意が必要でしょう。

2011年1月17日(月)

既得権益を打ち破れ

 今月上旬に経済産業省から東電への天下りがあり、各マスコミが報じました。その中でアサヒ・コムの記事が詳しく、そのまま引用しましょう。

 『経済産業省資源エネルギー庁の石田徹前長官(58)が退官して4カ月余りで、東京電力顧問になったことがわかった。東電では過去3人の通産省(現経産省)OBが顧問を経て役員になっており、石田氏も役員就任が有力視されている。
 顧問就任は1月1日付。報酬は支払われるが、公表していない。
東電は「見識や経験などを総合的に勘案して就任をお願いした」としている。政府内では、温暖化対策のための排出量取引など電力業界に負担が重い制度が検討されており、経産省との関係強化を図る狙いがあるようだ。 東電は旧通産省時代から同省OBを受け入れてきた。エネ庁長官経験者も石田氏で2人目。最近では、エネ庁で部長職も務めた白川進・元通産省基礎産業局長が昨年6月に副社長を退任したところだ。
 エネ庁は、電気料金改定や発電所建設などの認可や監督の権限を持ち、電力業界に大きな影響力がある。国家公務員法では以前、退職後2年間は関連業界に再就職できない規定があったが、自公政権時代の2008年の改正法施行で自ら就職先を探す場合は制限がなくなった。鳩山政権は省庁の天下りあっせんを禁じたが、石田氏は
東電が直接就任を要請したため、対象外という。今後、官僚がこれまでの企業との関係を使って再就職し、「天下り」をする例が相次ぎそうだ。』―(引用終わり)

 つまり、前政権による法改正により、『退職後2年間は関連業界に再就職できない規定』が変更され、『自ら就職先を探す場合』は制限がなくなり、鳩山政権で『天下りあっせん禁止』となったものの、『企業が直接就任を要請した場合の天下り』は禁止されず、今回のような官民癒着以外の何物でもない天下りが堂々と出来る制度になったようです。

 アサヒ・コムの記者が指摘するように、『エネ庁は、電気料金改定や発電所建設などの認可や監督の権限を持ち、電力業界に大きな影響力がある。』わけで、企業側の要請なら問題はないというのは詭弁に過ぎないことは明らかです。恐らく、将来の役員ポストを用意した上で天下りを受け入れたのでしょうし、電気料金改定や発電所建設などの際は宜しくという意図が露骨に伝わります。

 企業が発電設備を持つ特殊な例を除き、全ての企業と個人が独占的地位を持つ電力会社から電気を購入している状況で許認可権限のある省庁と企業が馴れ合い、癒着することは消費者の利益に反することは明らかでしょう。デフレに苦しむ日本経済にあって、電気料金だけはデフレと無関係でインフレ要因になる原因はここにあると言っても過言ではありません。政権交代後でも既得権益の見直しに消極的な政治姿勢が日本の閉塞感のひとつの要因ではないでしょうか。

 日経平均は米国株上昇でもアジア株が安く、米国の連休の影響もあって、アジア株の下げにつられて伸び悩む結果となりました。企業決算の好調を既に織り込んできた感もあり、指数は調整気味となる可能性もあります。信用買い残の損益が改善し、個別銘柄の短期売買を日替わりで行うことになりそうです。