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2010年2月9日(火)の更新はありません。
2010年2月2日(火)
人知の及ばない価格形成を助長する東証の新システム「アローヘッド」
東証は速度が遅くキャパが小さい為に評判が悪かったシステムを更新し、アローヘッドと名付けた超高速の取引システムを導入しましたが、執行が速い一方で、価格形成を歪める問題点が浮上しています。東証社長はアローヘッド導入で海外からの要望が強いアルゴリズム取引を取り込む事が可能となり、出来高の倍増すら期待出来ると発言しました。しかし、ここに大きな落とし穴がありました。東証は2年連続で赤字となる見込みで上場構想が遠のくばかりとなっており、出来高を伸ばして黒字体質を築くことに熱心な余り、「株価は参加者が企業の適正な評価を考えて形成されるもの」という基本を逸脱してしまったようです。
問題となる取引は注文が一方向に殺到する場面で1秒以内の瞬間に株価が急落したり急騰することです。東証が130億円の開発費をかけただけあって、アローヘッドの処理速度は1秒の500分の1という速さです。注文が殺到する場面では1銘柄の取引が1秒の間に数10回も成立することがあります。注文量が多いほど取引所と証券会社が儲かる仕組みですから、優先順位は執行の速さに置かれたのでしょう。
品薄銘柄が乱高下するならともかく、日経平均採用銘柄のような主力株がこれまでの値動きでは想像できないような乱高下が繰り返されています。例えば、2月1日の富士フィルムの例では、まず28円高の2921円で寄り付き、その後下げに転じ、10時50分に急落し、瞬間的に寄り付きから200円以上も安い2712円まで下げました。大引けは23円安の2870円と平凡な動きでしたので、参加者の正常な評価で付けた安値ではなく、秒単位で売り注文が集中し、一時的に買い注文が薄い価格帯に突っ込むことで急落した機械的な安値と見ることが出来ます。参加者が安い場面に気付いたとしても安値は1秒以内か数秒で終わり、実際に買える価格ではありません。事前にプログラムされたアルゴリズム取引や逆指値を叩いたことによる自動発注が突然の安値を付けたに過ぎません。
これは現在公開中の映画に例えれば、興行収入世界一となった「アバター」やブルース・ウィルス主演の「サロゲート」の世界のようなものです。人はどこかに隠れて指示を出すだけで、実際の行動は人工生物か身代わりロボットが行います。アローヘッドの東証では参加者が気付く前にシステムが自動的に売りを出して株価を急落させ、売られ過ぎと感じて投資家が買いを入れようにも、コード番号を入力する間に、株価は売られ過ぎを感知したコンピューターシステムの買いによって戻りに入っています。突出した安値は「たまたま指値を入れていた」参加者以外は機械同士が自動的に(不自然とも感じず)売買を終えているわけです。
しかし、そもそも「取引所」とは開かれた市場であるべきでしょうし、多くの参加者が参加することで適正な株価形成を目指す場所ではなかったでしょうか?執行速度が速いアローヘッドでは注文が一方向に偏る場面で、個人投資家や機関投資家など本来、市場で価値判断をすべき参加者を置き去りにしています。もし、現状のシステムを放置すれば数10年に1度の確率しかないはずのブラックマンデーが数年に1度起きるかもしれません。出来高が増加して収益が上がることは東証だけでなく証券会社も期待していますから、残念ながら、大きな暴落でもない限り改善しない問題となりそうです。
日経平均は米国株高を率直に反映して上昇しました。一方、アジアの各市場は依然として不安定で、中国やインドの引き締めの行方を注視している段階です。為替市場では、ギリシャ債務問題でユーロの一人負けの状態が終わったとしても、ドルが信頼できるわけでもなく、円の抱える過剰債務が問題ないとも言えません。当面は世界経済のそれなりの回復に合わせた株価の調整局面といったところでしょう。
2010年1月25日(月)
東証の適時開示の姿勢に問題
決算発表シーズンとなり、投資家は個別企業の決算に注目しています。注目の決算が取引時間中の13時や14時というようなザラ場に発表されると、短期的に数字だけが先行して材料視され乱高下し、しばらくして東証の適時開示の内容を吟味して更に変化するか、元の鞘に戻るというようなドタバタが起きます。取引所は混乱を防ぐ為にザラ場の決算開示は出来るだけ避けるように企業に指導すべきです。企業側の都合で取引所がそこまで関与できないとしても、本日、あまりに粗末な適時開示があったことは問題にされるべきでしょう。
これはKDDIが15時に行った決算の適時開示で、決算だけでなく、同社がジャスダックに上場するJCOMの筆頭株主となることの開示を行ったことの問題です。ジャスダックは大証と4月1日に正式合併する準備の一環として、2009年9月24日から取引システムを大証のシステムに移行しています。肝心な点はジャスダックは大証のシステムへ移行すると同時に「取引時間を大証と同じ15時10分まで延長した」ということです。KDDIが適時開示を行った15時はジャスダックのJCOM株は通常の売買を行っていましたが、重大な情報が開示された状態になってからも15時10分まで取引を続けてしまいました。当然、そのことに気付いた投資家の一部が直後から買いを入れ始め、15時に84200円だったJCOMの株価はすぐさま上昇を始め、数分で9万円の大台に乗り、数分間もみ合った後に引けにかけて更に上昇し、引けは97000円となりました。
KDDIが開示したニュースの内容は『平成22年1月25日開催の取締役会において、LGIグループが保有する中間持株会社3社(Liberty Global Japan II, LLC/Liberty Jupiter, Inc./Liberty Japan, Inc.)の持分の全てを、取得価格3,617億円で、譲り受けることについて決議し、本日、LGIグループと譲渡契約を締結しました。』というもので、『議決権ベースでは37.8%保有することになる結果、JCOMはKDDIの関連会社となります。』という経営権に関する重大な発表です。
ここで問題となることは3点です。1.KDDIがJCOM株が15時過ぎても取引を行っていることを知らずに発表したか配慮しなかったこと。2.ジャスダックが重要な情報開示があったにもかかわらず、気付かず売買停止措置を取らなかったこと。3.東証が他市場で取引している会社の重要な情報の開示を他市場の取引終了まで待つことが出来なかったこと。−の3点です。いずれの当事者にも問題がありますが、一番の問題は東証がしっかり企業に指導を行い、監視していなかった点ではないでしょうか。KDDIがジャスダックの取引時間の延長を知らなかったとしても専門家ではないでしょうし、ジャスダックは他の市場の情報を管理するだけの人手があるとも思えません。
いずれの責任としても、情報を知らずに売ってしまった投資家は取引所かKDDI相手に訴訟でもしない限り、安売りした被害を取り返すことは不可能です。勝てる見込みもあまり無いでしょう。決算発表シーズンでは開示があまりにも多く、内容を十分に理解できる時間が投資家に必要です。取引所が交通整理しなければ今後も同様の被害が生じるでしょう。
日経平均は続落となりましたが、海外株式市場の大幅下落に対して、あまり大きく反応せず、下げ幅は限られました。先週末は一部の証券会社が大量に先物を売り越した為に下げ幅が大きくなり過ぎた面があったようです。外国人投資家の売買姿勢が米国の新金融規制案を受けて大きく変化したかどうか現状では明らかではありません。どちらかと言えば、どのようにポジションを変化させるべきか、規制の内容が決まったわけでなく、判断しかねている印象です。慌ててポジションをクローズしたところは少ないのではないでしょうか。実際にどのような規制となるか、しばらく見る必要がありそうです。
2010年1月19日(火)
「子ども手当」を使わずに運用すれば?
日本で代表的な「外資系企業」と言えば、洗剤のP&G、ネスカフェでお馴染のネスレ、ポストイットで知られるスリーエムや日本IBMなどがすぐに思い浮かびます。あるいは、シェルのガソリンスタンドは昭和シェル石油が経営していますが、株主はシェルとサウジのアラムコで外資系の代表格です。「日産自動車」はどうでしょうか?外資系と認識している方は意外と少ないかもしれません。日産はルノーが44%の大株主で、外国人の持ち株は全体で67%もあり、実は代表的な外資系企業です。
あるいは、内需系企業の代表のようなヤマダ電機ですが、株主構成では53%が外資系の企業ですし、国内に優良な貸ビルを多く持つ三井不動産も既に48%が外資ですから、日本の会社というイメージを変える必要がありそうです。生活用品の花王も47%が海外株主になっていますので、株主構成だけを見ればP&Gとあまり変わらない外資系企業です。他にもたくさんの実質的外資系企業がありますが、この状態に金融機関のリスク資産圧縮の動きが加速し、持ち合い解消売りが加われば、一段と「実質外資系企業」が増えることは確実です。経済界のトップは「日本の成長戦略に法人税減税が欠かせない」と主張しますが、このままでは外資系企業の優遇策になりかねないでしょう。株式所有のリスクが大きくなるIFRSの導入も日本企業の「実質外資系化」に拍車をかけるに違いありません。
現状は国内の事業法人や年金基金などが株式の所有を減らす方向にあり、国内勢で株主シェアを伸ばすことはほとんど期待できません。わずかに期待出来ることと言えば、久々の大型上場となる第一生命の株式会社化による個人株主の急増ぐらいでしょう。しかし、個人でもささやかな抵抗を試みることが出来ることがあります。予算が成立すれば「子ども手当」が支給されます。扶養控除の廃止と子ども手当の差し引きで、例えば、年収500万円の子ども2人の世帯で40万円前後の年収アップがあります。これを「無かったもの」と考えて、投資に回してみてはいかがでしょうか?全国規模で投資すればかなりの額になるでしょう。
今のような就職難の状況が続く限り、賃金は上がりそうにありませんし、平均すると下がる傾向にあります。低賃金で働き、優良企業の過半数が外国人の所有になると、収益を上げるように努力しても利益が海外に流出するだけになってしまいます。足元で外国人買いの大量の復活を喜んでばかりいられないのではないでしょうか。
日経平均は米国休場の影響で参加者が大幅に減少し、上昇の反動で下げた形になりました。外国人投資家の参加比率が低下すると日経平均は下がる構図のようです。しかし、外国人投資家の買いが単に新年度入りによる「1月効果」に過ぎないのか、長期的な日本の代表的企業への買いが始まったのか良く分からない部分があり、外国人投資家次第の状況です。それにしても、保険会社や大手銀行、年金までも株式所有を減らすことが確実な情勢ですが、再考の余地がありそうです。
2010年1月13日(水)
JALの上場維持の是非と民主政治の根本問題
米国では株式投資において、値上がりで利益を得た人より空売りを利用して値下がりで利益を得た人のほうが称賛されるということを聞いたことがあります。それは大半の企業は自社の良い部分を誇張して投資を誘い、証券会社の営業マンやアナリストなども買い推奨のほうが営業上都合が良く、買いから入って利益を得ることは普通ですが、(隠されることが多い)企業の問題点を探し出し、空売りで利益を得る人は独自の観察眼が必要ということになり、同じ利益でも空売りによる利益のほうが素晴らしいと見られるようです。
その点、日本では空売りは罪悪のようにされ、資金を提供する売り方から金利を取る法制度が行われていますし、空売りによる利益を賞賛する意見はあまり聞かれません。しかし、今回、JALを空売りし、利益を得た投資家は褒められるべきでしょう。
不思議なことに、JALの株価は年末に「法的整理か私的整理か」の議論において、法的整理の方向が強まり、大納会では21円安の67円まで急落していましたが、大発会では政策投資銀行が2000億円の融資枠を設定するとのニュースで株価は年末の下げと逆の21円幅の上昇となり、急落前の88円に戻しました。その後の数日は「法的整理の場合でも上場は維持する」とマスコミ各社が伝えた為に、市場では「減資の可能性があっても上場維持なら買える」という思惑で急落せずに商いを続けました。
マスコミの報道は「東証のルールでは会社更生法申請後も上場が維持できるようになっており、支援機構は上場を維持しつつ会社更生法を申請する方向で検討している。」(1月4日のロイター)などの配信記事があり、買い方の根拠とされました。しかし、足元では支援機構は責任の明確化の為に「上場廃止」の方針と伝わっています。ここで疑問があるのは、年初の時点で支援機構の方針、すなわち、政府の方針が「上場維持」だったかどうかです。果たして、報道された通りだったのでしょうか?上場維持を通そうとしたのは金融機関やJALであり、損失を少なくしたいだけであったり、「倒産」によるイメージダウンを嫌った自己の都合に過ぎず、公的資金の性格を無視した言い分に過ぎなかったかもしれません。
ところで、会社更生法では現時点で債務超過であった場合でも、100%減資を行う必要があるとは規定していない為に、銀行による多額の債権放棄や大型増資がセットになれば、100%減資しない限り、上場を継続することは理論的に可能です。2003年4月に東証は企業再生の為に上場ルール改正を行っていましたので、99%減資でも減資後の時価総額が10億円以上あれば上場維持を選択することが出来ます。しかし、その方法を使って上場維持する場合は巨額の公的出資を含む再建案を合理化することはできません。株主にとって上場維持か廃止では雲泥の差がありますが、それは国民の税金の使途を決める政権の本質においても重要な意味があります。JALの上場問題は国民の負託にこたえる政権か否かが問われているわけです。
もし、JALの株主が上場維持を望むなら、公的資金ではなく、株主割り当てで1株当たり数100円の増資に応じれば良いでしょう。そうすればJALは経営再建の資金を得られます。それをせず、倒産した場合は株主は有限責任であり、出資以上の負担が無く、債務超過分の「追い証」が無いだけでも良しとすべきでしょう。関係者はそれぞれ公的資金の性格を自覚すべきでしょうし、空売りで利益を得た投資家は「信念で筋を通した投資家」として称賛されても良いでしょう。
日経平均は年初からの上昇相場に対して、ようやく下げらしい下げとなりました。中国の金融政策の変更が大きなインパクトだったことは言うまでもありません。問題は日本の89年バブルにおいても、行き過ぎていると感じた投資家が多かったにもかかわらず、一般的な金融引き締め策ではバブルが止まらなかったことです。米国の住宅バブルにおいても同じで、サブプライムローンを金融機関が広げ過ぎたと多くの人が自覚していたにもかかわらず、バブルは膨らむだけ膨らみました。中国政府がこれをコントロールできるかどうか、たいへんな難問に違いありません。第一弾の引き締め策程度では収まらない可能性が高いのではないでしょうか。
2010年1月5日(火)
メガバンクは収益力に自信がないのか?
メガバンクの増資は2008年の11月に三菱UFJフィナンシャルグループが6億株を超える公募増資と自己株式の処分による3億株の売り出しを行ったことに始まりますが、既存株主の損失は大きく、記事となった10月27日にストップ安売り気配となったことをまだ覚えている投資家もいらっしゃることでしょう。昨年の12月に再び同グループが1兆円増資を敢行し、株価低迷も再現しましたが、今度は三井住友フィナンシャルグループが2回目の増資と報道され、本日の後場の相場を大いに冷やしました。
しかし、三菱UFJフィナンシャルグループの1回目の増資の際に、ライバルの三井住友フィナンシャルグループの北山禎介社長は決算会見において、「一義的には内部留保や優先出資証券の発行などの希薄化を伴わない手段で行う。」と述べ、普通株の増資に否定的な見解を示していました。それにもかかわらず、三井住友FGは6月に9000億円規模の増資を行ったわけですが、更に、増資後の半年間は次の増資を行えないロックアップ期間が過ぎた途端に新聞社のインタビューに応じて、「一義的には利益を高めていくべきだが、競争力維持のため、資本増強を検討せざるを得ない」と異なる見解を述べ、実際、2回目の大型増資に踏み切ることを決めたようです。
また、みずほフィナンシャルグループの塚本隆史社長も2008年11月13日の決算会見で「現在増資の計画はない」としていましたが、昨年の7月に5500億円の増資を行い、来週にはロックアップ解除となることから、2回目の大型増資の有無に市場の関心が高まっています。再び、「現在増資の計画はない」と発言するかもしれませんが、その場合は、BISの自己資本規制の強化でTier1から優先株と優先出資証券を除いたコアTier1比率を6%以上とするには2兆円近い規模の資本増強が必要であり、かつ、引け値で164円の株価では希薄化の悪影響が大き過ぎる為に躊躇せざるを得ないことによるものでしょう。にもかかわらず、「競争力維持のため、資本増強を検討せざるを得ない」とする可能性もあります。現在、みずほフィナンシャルグループは3メガバンクの中で最も難しい立場に置かれています。
新BIS規制では金融機関との資本かさ上げの為の株式の持ち合い規制の範囲を保険や証券、海外法人などに広げると見られ、生保との持ち合いが多い日本の大手銀に不利となっています。しかし、どのような規制があったとしても「一義的に収益を上げて資本を充実させる」ことが株主に対する本筋であることは変わりません。収益力を上げ、内部留保を厚くし、株価の評価が高まってから増資の有無を判断すれば良いのですが、「競争力維持」の為に既存株主軽視で増資を強行されたのでは市場全体にとっても迷惑な話に違いありません。また、資本増強後の銀行においても資本増強したがゆえに持ち合い解消が早まるリスクを考える必要があるでしょう。
2010年1月4日(月)
2010年、明けましておめでとうございます。
今年もHIT株式教室を宜しくお願い致します。
2009年12月30日(水)
2010年も続く金融危機の後始末
2009年の日経平均は大方の予想に反して19%の上昇となりました。しかし、11月に比較的大きな下落が先行したことやその後の一方通行的な上昇に乗り切れなかった投資家が多く、日経平均の上昇率ほど個人投資家は潤っていない印象があります。米国の不良債権の多くが政府やFRBに移っただけの面もあり、流動性バブルで強い展開を見せた米国株に乗り切れなかったとしても仕方がないところでしょう。
そして、2010年も金融危機の後遺症は残り、不動産価格の調整が長引き、雇用の改善は穏やかなものにしかならないと思われます。金融当局はこのような状態でどこで出口政策に踏み切るか、たいへん難しい舵取りを迫られます。一歩間違えると金融危機と財政危機が重なりかねません。公的な支援には限界があります。2010年は金融危機が財政危機となる前に景気浮揚が図れるか正念場となりそうです。
そして、HIT株式教室の読者のみなさん、今年もありがとうございました。HP開始10年となる来年も引き続き宜しくお願いします。良いお年をお迎え下さい。
2009年12月22日(火)
増資銘柄は「希薄化」で下がる?
大型の公募増資が盛んに行われ、増資した企業の株価は「増資で発行済株式数が3割増加するから株価が3割下げた」というような解説がもっともらしく語られます。実際、公募増資を行う銘柄はダイリューション(希薄化)によって、1株利益が低下することは確実でしょうから、一般的な解説に投資家は納得しがちです。しかし、増資による資金調達は返済義務のない資金であり、企業活動にプラスになることも確かで、増加した株数に応じて単純に株価が下落するという考え方は誤りでしょう。
理論的には1株当たりの価値の低下により株価下落を説明したとしても、実践的に株価下落はどのようなメカニズムで起きているか検証する必要があります。公募増資を発表した企業の株価は発表当日に大きく下がり、その後、やや戻しを入れつつ、結局、値決め日に向けて下げるケースがほとんどです。値決め日に売っている投資家の多くは公募株を買うことが決まっているか、買う予定のある投資家です。つまり、公募で株価が値下がりするメカニズムは「希薄化」ではなく、「アービトラージ(鞘取り)」の行動にあるわけです。
公募株は必ず値決め日の引け値よりも安くなることが決まっていますから、値決め日に向けて売り崩していけば確実に公募株で利益を得ることが出来ます。恐らく、この行動に拍車をかけているのが既存の株主でしょう。機関投資家や取引先の多くの株主は公募増資を引き受けざるを得ない立場にあり、既に大量の株式を持っているにもかかわらず、増資株を買うことになり、決して潤沢でない現金を減らすわけにいかず、公募までに持ち株を売却し、その資金で公募株を買うという「入れ替え商い」を行っている可能性があります。この過程で、結果的に既存株主もアービトラージを行っていることになりますが、目的はキャッシュフローの維持に過ぎません。このように仕方なく株主が値決め前に株式を売り、株価を下げるケースもあるでしょう。
しかし、既存のホールダーは株価が下がれば損失を受けたことに変わりがなく、利益を得たのは純粋のアービトラージを行ったヘッジファンドや引き受け手数料が入る証券会社と増資した企業ということになります。増資企業と無関係の銘柄を持つ投資家も市場全体の需給悪化で損失を被るでしょう。そして、証券会社の引き受け部門では手数料欲しさに、メガバンクが増資する前に増資を行うようにセールスを行うことがあると言います。取引所などの関係者は必要でない公募増資を防ぐ基準作りやアービトラージをさせない制度を構築する必要があるでしょう。
日経平均は海外株高と円安を受けて比較的大きく上昇しました。クリスマス前特有の参加者が急減するマーケットでは価格が振れ易いことがあり、今回は上昇率を高めました。金融危機以降の金融緩和場面で日本は他の国と比較して、特に大きな緩和措置を実施したとは言い難く、今になって緩和姿勢が強まっていることを反映していると見ることも出来そうです。年明けに大型増資が再開される可能性もあり、需給が良い間に利益を得ようとする動きが強まると見たいところです。
2009年12月16日(水)
就職難で大学教育が形骸化
来春卒業予定の大学生で依然として就職先が決まらない学生は勿論のこと、3回生から就活が盛んに行われ、各企業も採用数を絞る一方で採用セミナーを活発に開き、学生のいない大学教育の現場が抜けがらのようになっています。これまでも大きな問題でしたが、ここ2年間の金融危機以降の就活は一段と厳しくなり、学生が講義を欠席してセミナーや面接に向かう時間が急増しています。都心との距離がある大学では1日が潰れることも多く、教授達は講義よりも就活に傾斜する学生の行動に悩まされています。
企業は平日ではなく、大学教育を優先する為にセミナーや面接を土日のみに限定すれば良いのですが、ほとんど平日に行われます。企業の担当者は土日祝に受け付ければ休みが取れない事情もあります。しかし、学生が就活でエントリーする企業数は少ない学生でも数十あり、多い場合は百社を超えます。一方、大学の講義数は前期・後期で90分講義が15回程度行われ、年間通しの講義では30回程度の講義数が基準です。平均で50社程度にエントリーしたとしても、数回は企業を訪問するので100日程度出席できない講義があり、事実上、大学の講義が崩壊していると言っても過言ではない状況です。
問題はそればかりではありません。大学生は多額の学費を支払っています。1回の講義のコストは4千円から7千円程度になり、就活は交通費だけでなく、大きな経済的損失を伴います。2回生までの一般教養レベルなら独学でも学べなくもありませんが、肝心な専門過程が就活でボロボロの状態では何の為に大学に進学したのか分からなくなります。特に、実験などが多い理系は深刻です。一度逃した講義は再度受けることが出来ず、かといって、休みを多く取れる文系学生と競合するケースでは就活を休むわけにもいきません。「単位を取るか就活を取るか」は本来、学生が考えることではありません。
この状況はたいへん非効率で、学生と大学だけでなく、企業にとっても損失で、誰にもメリットがありません。早急に土日祝に就活を集中させるルール作りや活動時期を規制すべきですし、企業側もスカイプなどを使った「インターネット面接」を行うなどの工夫が必要でしょう。貧すれば鈍する日本経済にならないように願いたいものです。
日経平均は銀行の資本規制強化を延期する報道を好感し、3メガバンク中心に上昇しました。海外市場は決算前、休暇前でポジション整理的な商いが目立ち、日本株だけが逆行高となった感があります。これまで海外株高を日本株が僅かしか反映せず、下げた時は大きく反応するということがありましたが、このところは逆転しています。出口政策に向かう国もあれば、日本は金融緩和を拡大する方向にあり、その差が株価の修正を促していると見るべきところでしょう。
2009年12月8日(火)
COP15と科学技術予算の仕分け作業
国連気候変動枠組条約国会議・第15回締約国会議(COP15)がデンマークで始まりました。会議が始まるまでに京都議定書以降の2013年からの地球温暖化対策の合意が出来ないままの国際会議となり、会期末の18日までに次の合意形成は不可能に近い状況です。金融危機のような目前に迫る危機は具体策を協調することが出来ても、将来のどこかで大きな障害となるようなことは各国が世界のことより自国中心に主張し合い、具体的な成果を得ることは難しいようです。
今回は京都の国際会議とは異なり、米国と中国が具体的な削減目標を示したことで最終的にまとまるという期待もあります。しかし、いずれの場合でも「温暖化ガスの削減目標」は実際の地球環境にとって「悪化のペースを緩めること」に過ぎず、悪化した水準から回復することではありません。現在の地球温暖化対策では問題が極めて悪化するまでの時間稼ぎの議論をしていることが現実です。そのレベルでも各国が協調できないようでは困ったものです。
結局、画期的な削減目標を達成するにはコストが安く、効果が絶大な科学的進歩に期待するしかない現実があります。温暖化ガスを削減するだけでは悪化は止まらず、改善できる仕組みまで踏み込む必要があります。日本は環境技術は最先端ですし、再生可能なエネルギーシステムや環境改善システムの輸出国になれるだけのポテンシャルを持っています。
ところが、行政刷新会議の事業仕分けでは学術予算の削減が相次ぎ、研究開発に厳しい態度が示されました。予算削減に対して、ノーベル賞受賞者や最先端の研究者たちから猛反発を受ける事態が起きました。研究予算は環境に関するものだけではありませんが、地球環境を持続可能なようにするには全ての方面で研究を進める必要があるでしょうし、予算削減どころか増税してでも研究開発の予算を増やすぐらいの積極性があって良いでしょう。あるいは、公立高校授業料の無償化よりも、大学生の理系離れは深刻で、大学以上のところで理系重視の政策を打ち出す必要があります。COP15で枠組みが決まらない可能性は充分ありますが、その場合でも日本が最先端で環境保全の研究を進める気概が求められます。
日経平均は6連騰後の反動もあり、小反落となりました。売り方としては下げ渋る指数に落ち着かない場面でしょう。一方、個人投資家は11月下旬の相場で信用評価損が大きく、仕方無く安値でロスカットした向きも多く、今の高値につけない問題もあります。押し目待ちに押し目無しの状況と言えます。急騰相場に上手く乗れなかった参加者が多く、今週のメジャーSQで玉整理を行い、仕切り直してから次のステージに参加することになりそうな雲行きです。SQ後の掉尾の一振相場に期待したいところです。
2009年11月25日(水)
世界金融戦争
リーマン・ショック後の世界的な金融危機に際して、世界各国は大量の流動性を供給し、財政出動を通じて国際協調し、金融市場の安定を取り戻しました。しかし、金融市場は各国が協調して緩和しましたが、協調して「出口政策」を行っているわけではありません。米国や日本は利上げが相当期間不可能と見られる一方で、既に、10月6日に主要国で初めてオーストラリアが25ベーシス利上げし、政策金利を3.25%とし、その後、ノルウェーも追随しました。いずれも世界的な流動性の拡大で景気後退よりもインフレ懸念が強まったことが背景にあります。「デフレ宣言」を行っている日本とは対照的な動きです。
今や金融危機はすっかり影をひそめ、先進国から溢れ出た資金が新興国に流れ込み、通貨高の軋轢を生じています。米国の金融は一部で史上最大のボーナスを支給するほどに回復し、投資資金は商品市場を大きく上昇させました。資源国ブラジルは投資資金の流入で通貨高が進み過ぎ、ついに、海外から投資するだけで入金時に2%課税する措置を講じるほどになり、投資資金を排除する実力行使に踏み切りました。一見、世界は金融緩和で協調したままに見えますが、現実は出口政策を巡って金融戦争を引き起こしていると言っても過言ではありません。
利上げを行ったオーストラリアやノルウェーの通貨は買われ、輸出がダメージを受け、出口政策を単独で行うことの弊害が強まっています。金融危機ではG20などが揃って金融緩和し対応したものの、出口政策で協調する姿勢はほとんどありません。出口政策を行わない米国のドルは下げ続け、韓国や中国、シンガポールなどのアジア各国は断続的に為替介入を行い、ドル安をけん制しています。あるいは、インドはドル安の対抗手段として、IMFが放出した金地金の約半分を外貨準備として買い取り、市場を驚かせました。その一方で、先物取引所最大手のCMEは金地金を先物の担保とすることを世界で初めて認めるという手段を使いました。金の用途拡大で米ドルの地位低下を促進する政策と言えます。
そして、日本は少子化・低成長・財政悪化の悪材料がありながら、円が買われ、外需は報われず、財政出動で内需の落ち込みをカバーし、失業者などへのセーフティネット構築などに大きな負担を強いられています。日本は円高で内需振興策を採らざるを得ず、それが財政赤字を拡大させる悪循環に陥っています。また、米国が通貨安を放置する政策が資源価格を高騰させる矛盾があり、米国自身も消費の落ち込みを防げるかぎりぎりのところでしょう。金融安定化策が過剰流動性となり、次の危機の芽を育てているかもしれません。各国は金融安定化で協調した時と同じように、出口政策でも協調すべき時でしょう。このままでは、やがて、日本も為替介入などの手段で非協調的な金融戦争へ巻き込まれることになりそうです。日本株についても為替介入の有無が次のステージへの分岐点となる可能性があります。
2009年11月13日(金)
金融安定化策は誰の為?
金融機能が正常であることは個人と企業にとって必要不可欠なことです。リーマン・ショック後の金融市場の大混乱に対して世界各国の政府は一致団結して流動性を供給し、債券を引き取り、倒れかけた金融機関に公的資金を注入し、大手自動車産業などを救済しました。その結果、フリーフォールの経済悪化から世界は脱出し、多くの個人と企業にプラスになったことは間違いありません。しかし、それにも増して潤ったのは金融界でした。米金融界は4兆円を超える勢いの史上最高額のボーナスを受け取ることが確実ですし、英金融界でもボーナスは昨年より5割増加し、1兆円近くになる見通しです。
その一方で、米国とFRBが引き受けた債務やその保証額と公的資金の出資額の合計はGDPをはるかに超える額になり、現在も債券買い取りなどを通じて資金供給を続けています。英中銀であるイングランド銀行は26兆円規模の資産買い取り制度を現在も続行しています。不良債権が政府機関に移行しただけで処理が進まないばかりか、依然として流動性供給を行っている最中に金融機関は史上最高額の報酬を受け取ったり、5割アップの報酬が得られるというのはどこかおかしな光景です。多額の税金を注ぎ込んだ金融安定化策はいったい誰を救済したのかと疑問に思う方は多いことでしょう。
世界金融危機に対する対応策はサブプライムローン問題と直接関係が無い日本や中国なども流動性の供給で協調しましたし、現在も続行中です。両国はIMFへの出資増額などの貢献もあります。しかし、足元では世界的な流動性供給で困る人たちが急増しつつあるという不都合な真実も見えてきました。米国の住宅は安定した職がある個人なら誰でも買える手頃な価格まで下落しましたが、香港では今年に入ってからの住宅価格の値上がりが3割に達し、平均的な所得の人が住宅を買うことは不可能になりました。北京などでも住宅を買えなくなる人が増えています。日本では政府がJ−REITに資金を提供するようなことをしなかったこともあり、不動産価格は低迷したままですから、シンガポールや香港、北京、台北などで住宅バブルが起きていることは信じられないかもしれませんが、住宅バブルの崩壊を防ぐ措置が別のバブルを生み出していることは事実です。
遡って、リーマン・ショックの直後の昨年9月、「AIGショック」が起きないように、NY連銀がAIG救済に乗り出し、AIGの80%の株式と引き換えに約8兆円の融資を行いました。フジサンケイ紙のブルームバーググローバルファイナンスの記事によれば、NY連銀はAIGと他の金融機関とのCDS契約の全額支払いを指示した結果、ゴールドマンやソジェン、ドイツ銀などが破綻を免れたAIGから保険料を受け取ることが出来たとしています。その時のNY連銀の理事長はゴールドマンの元会長のフリードマン氏で、財務長官はゴールドマンの前会長兼最高経営責任者だったポールソン氏でした。ウォールストリートジャーナルによると、フリードマン氏はAIG救済決定後にゴールドマンの株式を大量取得したと報道しています。AIGがゴールドマンに支払ったCDSの総額は今年の3月までに既に1.2兆円近い金額に達し、AIGが救済されたことはゴールドマンを救済することと同じ意味がありました。
AIGがCDSの支払いを行うことになった時に、受け取る側のゴールドマンやソジェン、ドイツ銀の株式を購入すればたいへんな利益を得ることが可能でした。そして、今や大手銀行は多大の利益を得て米金融界が史上最高額の報酬を受け取る状況になり、その一方で、米商業用不動産の価格は下落が尚続き、商業用不動産ローンの比率が高い米地銀の破綻が100件を超えています。果たして、世界各国が協調して行った金融安定化策は誰を救済したのでしょうか?あるいは、誰に損害を与えようとしているのでしょうか?再検証する必要があるでしょう。
日経平均はオプションSQ通過後も冴えない展開で、小幅に続落しました。株価は冴えませんでしたが、国債の大量増発懸念で大きく下げていた債券市場は債券先物が4日続伸となり、指標債金利が1.34%まで低下するなど驚異的な回復ぶりです。行政刷新会議による事業仕分けの進展がセンチメントを大きく変えました。株式と債券の同時安からは抜け出した感があります。株式市場にもこの点はプラスになります。しかし、その後の展望がはっきりしません。今後は金融緩和からの出口戦略について、どのように国際協調を行うかが大きなテーマとなってくるでしょう。
2009年11月5日(木)
懲りない米金融業界
リーマン・ショックから1年数か月経ちましたが、米国は今月のFOMCでも金利は据え置きで、異常な低金利から抜け出すことが出来ないままです。その一方で、米金融業界は今年のボーナス支払い額が史上最高額になる可能性があると言います。中でも高額報酬を出すのはゴールドマン・サックス(GS)となることが確実で、既に同社は1−9月期に報酬の引当金として約1兆5千億円を積みました。年間では約2兆円になる見通しです。他の金融機関の報酬と合わせると全体の報酬額は2倍以上に膨れ上がる可能性があります。米国では政府からの支援を受ける金融機関の報酬を制限する法案が議論され、多少は減額されるかもしれませんが、公的資金を完済したGSなどに強制力は及びません。
金融機関の高額報酬制度が関係者を目先の利益獲得に奔走させ、金融危機を招いた要因であることは多くの人が指摘する通りです。「利益さえ得られば、報酬を得た後に問題が大きくなっても関係がない」という商法が蔓延していました。ゴールドマンはポジションをヘッジする目的などで(政府が救済した)AIGからCDSを大量に購入し、今年の3月までにAIGからCDSの実行分として1兆2千億円近い金額を受け取っています。米政府がAIGを救済しなければゴールドマンの報酬積立金とほぼ同額のCDS支払いを受け取ることは不可能でした。しかも、AIGの救済を決めたのはゴールドマン出身のポールソン財務長官(当時)でしたから、ゴールドマンの収益基盤は万全で念入りだったわけです。
金融危機を少し忘れかけたところでウォール街は巨額の報酬を受け取ろうとしていますが、公的資金を返済したり、公的支援を受けていない金融機関は規制の対象外と言えるでしょうか?AIGの例だけでも金融界は大きな利益があり、政府の金融政策で多額の恩恵を受けたことに違いありません。米金融業界は良く言えば逞しく、悪く言えば懲りないということでしょう。更に、FOMCで出口政策に言及出来なかったことで優勝劣敗が進む問題が懸念されます。
日経平均は中国株を除くアジア株の全面安の流れの中で下落し、再び10月上旬の安値に接近しました。FRBが金利上昇時期を示せず、米国景気回復によるドル高期待が後退し、円高傾向が変わらない問題が残りました。また、株価下落と同時に金利が上昇する悪い状況に陥り、日本経済の「出口戦略」にも暗雲が立ち込めます。海外市場との連動性が強まる日本株ですが、政府が徹底的に無駄を省く予算を作れば状況が変わる可能性があります。他力本願でなく、公約通り、やれることを徹底する姿勢が鳩山政権に必要でしょう。
2009年10月28日(水)
紛らわしい決算発表前の「観測記事」
決算発表シーズンが近付くと新聞社は盛んに企業決算の予想や今期の見通しについて書きます。紙面には会社が発表した内容の記事と新聞社が予想して書く記事が同じように具体的な内容で並びます。新聞社による観測記事では文の末尾が「なったようだ」となったり、「〜の見通し」などとなっていますすが、内容はかなり具体的で、例えば、先週の日経新聞では「住友電、今期営業益28%増」や「ツムラ営業益18%増」など、多数の観測記事がありました。
新聞社による観測記事が出ると、ほぼ全ての企業がHPに当社とは関係ないことを強調する案内を掲載します。住友電工は『本日の一部の新聞において、当社の業績予想等に関する報道がありましたが、本件は当社が公表した内容ではございません。』とあり、ツムラは『本日、一部報道機関において、当社の22年3月期 第2四半期の業績見通しに関する報道がありましたが、当社の公表した内容ではございません。』となっていました。新聞の掲載と間髪を入れずHPに会社側の見解が述べられます。ほとんど全ての企業が同じように行動し、まるで記事が掲載されることを知っていたかのような手際の良さを見せます。
しかし、会社側による無関係の主張とは裏腹に「観測記事」の内容は売上高から利益予想の細かい数字まで関係者しか分からないような情報で満たされています。決算についてのルールは新聞社は東証などが適時開示を行った後ならすぐに開示することが可能ですが、独自に知りえた情報は適時開示が行われるまでは開示できない決まりがあります。仮に、インサイダーと全く係わりがない情報であれば新聞社は言論の自由として業績見通しを掲載することに何の問題もありません。適時開示の情報がデジタル化される以前は適時開示前に新聞社と通信社向けに文章として作成した内容がプレスリリースとして「投げ込み」されており、適時開示前に情報を流すルール違反が横行していた問題がありました。
また、会社側にも適時開示する前に紙面に掲載される可能性がある情報を外部に伝えるなど、疑いを持たれる行動は慎むべきです。まさか、記者に数字を漏らしておいて「一部新聞の記事は当社と関係がない」ということは無いと思いますが、実際に発表された数字と全く同じになると疑いたくもなるでしょう。いずれにしても、決算の具体的な数字を示す観測記事は紛らわしく、誤解を招く可能性は否定できません。決算数字は発表後の事実で充分であり、それで公平です。企業の新製品や戦略、方向性などの動向を記事にするほうが投資家には向いているのではないでしょうか。
日経平均は消費者信頼感指数の急低下を受けた海外株安の流れを引き継ぎ、比較的大きく下げました。国債に対する信任低下で金利が急上昇していることも悪材料になり、企業業績や住宅ローンなどへの影響が懸念されています。また、原油先物や貴金属の先物相場が実需が乏しいにもかかわらず大きな相場を出し、足元ではやや反動が生じています。景気回復の為の流動性供給がマネーゲームとなる弊害に対して、反省する機運が出てきたかもしれません。更に、債券と株式が同時に安いと機関投資家によるリバランスの買いも入り難くなります。投機資金の動きも問題でしょう。米国の景況感が悪化するとドルの金利低下で円高になり、日本の景況感と無関係に投機筋の資金の流れで相場が大きく変動します。実体経済と無縁なマネーの動きを少し制御する政策が必要かもしれません。
2009年10月21日(水)
価値観の転換を迫られる投資家
株式市場で重視される経済指標のひとつがGDPであることは言うまでもありません。しかし、今後はGDP信仰を捨て、新しい価値観を持つ必要がありそうです。ニューヨークで開かれた国連気候変動首脳会合で鳩山由紀夫首相が演説した通り『温室効果ガス削減の中期目標として2020年までに25%削減を目指す』なら、避けて通れないのがGDP拡大を目指す経済政策の転換です。特に、株式市場はこれまで企業が売り上げを伸ばし、成長し、国全体も成長することを目標にしてきました。25%削減という大きな目標には「成長をある程度制限せざるを得ない」という意味があるわけですが、投資家の誰もがそれを口に出しません。
これまでのように、GDPのプラス成長を第一に考えると、不動産価格が投機資金で高騰するだけでも帰属家賃が上がり、何も生産しないままにGDPが拡大することがありました。あるいは、気象変動で予期せぬコストがかかった場合でもGDPは増加します。例えば、今週のニュースで季節外れに中国から黄砂が日本に飛散し、洗濯物が外に干せないというようなことが起きています。洗濯物を外で干さず、乾燥機で乾燥させた場合でもGDP増加に寄与しますが、個人にとって何のプラスもありません。あるいは、温暖化で海水面が上昇すれば防波堤を高くすることになりますが、そのようなことでGDPがプラスになっても国民生活にプラスとは言えないでしょう。
株式投資においても、生活上、プラスどころかマイナスになるような事項でもGDPがプラス成長なら良いという意識が強かったのではないでしょうか。投資家にとって、GDPは離れることが出来ない拠り所のようなもので、信仰に近いものがありますが、どこかで転換する必要に迫られたというのが新しい削減目標と言えます。当然、価値観は成長第一から中身を重視する方向になり、GDPのプラス成長から、「現在の幸福度」や「将来不安の少なさ」を新しい基準と考えるようなパラダイムシフトが必要です。投資家の価値観が変わるかどうかさえ、予想がつきませんが、社会的な期待に応えられる企業かどうかが投資尺度に切り替わらなければ大きな目標が達成不可能なことは確かでしょう。
日経平均は先週末から小幅な値動きが続いています。個別銘柄の株価材料に対する反応も参加者不足の影響でしょうか、低下しているように見えます。ただ、債券市場の金利上昇が充分進んだことに加えて、狭い範囲の動きが続くほどその後の変動が大きくなる経験則があり、小動きに馴染み過ぎないようにしたいところです。
2009年10月14日(水)
JAL債務超過なら政府関与で法的整理すべき
国土交通相直轄の専門家チームである「JAL再生タスクフォース」が13日にまとめた再建策の素案は各紙によると、『JALは「少なくとも2500億円規模の債務超過」になっていると指摘し、3000億円規模の債務削減を求めた。』とあり、『1500億円規模の出資を含む最大4800億円の資金調達や年金債務を3分の1に削減することも盛り込まれた。』とあります。この再建策に投資家が感じる疑問はいくつかあるはずです。
まず、再建策で示された「JALは少なくとも2500億円規模の債務超過」という見方は「9年3月期の連結決算で1968億円の純資産がある」とした決算を認めた監査法人の決算内容はいったい何だったかということがあります。JAL再生タスクフォースの指摘が正しければ、純資産と債務超過額の差は約4500億円もあります。この巨額の差異は「決算で債務超過とならないように粉飾した」のか、あるいは、「こうした決算が認められるような曖昧な監査基準が合法となっている」かのいずれかということになります。合法的に4500億円の差が発生するような会計基準なら、投資家にとっては意味を成しません。投資家はいくらでも騙されてしまいます。恐らく、7000億円以上の就航中の機体の簿価に対する見方が全く異なることが原因と見られますが、そのようなことが生じないように合理的な基準があるべきでした。
次の疑問は巨額の債務超過が明らかなら、当然、再建策に株主責任を問うべき内容が盛り込まれるべきですが、その点に触れていないばかりか、金融機関に債権放棄を求めるだけでなく、優先権があるはずの年金債務を大幅に削減するように求めていることです。また、金融機関の貸出シェアはメガバンク3行よりも株式会社化された政府の公的金融機関2行の与信金額が圧倒的に大きな額を占めていることも問題です。政府系金融機関の損失は税金の損失と同じことですから、責任について明確にすべきでしょう。それらの政府系金融機関には元財務次官などが天下りしています。
そして、現段階では再建の素案があるだけで、銀行団や労働組合とも何ら合意が出来ていませんので、国土交通相主導の再建案がどうなるか分かりません。債務超過状態が明らかで増資も困難となると、公共性からも再建策を決めた上で法的整理を行うことが上場企業として当然のはずですが、現実には「法的整理」は政府によって、銀行や労働組合との交渉のカードにされています。株主の権利は株主責任という基本から外れて、単に政府案を受け入れるかどうかの取引材料であって良いのでしょうか?基本を外れた解決策によって問題がこじれる可能性は否定できないでしょう。
日経平均はアジア株が全面高だったにもかかわらず、米国株に連動したのか、上昇できませんでした。米国市場でドルが対ユーロで売られ、NY金先物が史上最高値を更新するなど、為替市場や商品市場の不安定な動きが投資家の様子見気分を強めたようです。現実問題として、米国の景気対策となっている「ドル安政策」は商品価格の上昇となり、米国内で問題となるだけでなく、日本にも外需低迷をもたらす弊害があります。米国は通貨安によって景気浮揚を図る安易な姿勢を改める自制心が必要でしょう。今後、ドルとユーロの軋轢が強まれば株式市場にとっても大きな問題となるに違いありません。
2009年10月9日(金)
セーフティネットの再構築を急ぐべき
新政権は、まず「後期高齢者医療制度の廃止」で国民の信頼を得るべきということを9月14日の本欄で述べました。次の参議院選挙でも圧勝したければ、最優先で急ぐべきことでしょう。小泉政権との対比において、現在の多くの識者の評価は小泉政権が最も力を入れたことは医療や年金制度の改悪による財政再建を行ったことであり、その一方で不安定な雇用制度を広めた結果、格差を広げ、セーフティネットによる救済を必要とする国民を多数作り出し、矛盾を拡大したこととされます。その後の政権も短命だったこともあり、問題を修正出来ずに総選挙で惨敗しました。
では、新政権は優先順位が高い「後期高齢者医療制度の廃止」をどのようにすればよいのでしょうか?後期高齢者は以前加入していた社会保険などに戻るということだけなら簡単です。しかし、そろそろ、高齢化社会の現実を見据えて医療保険制度を思い切って統一するような一歩進んだ構想が必要でしょう。
例えば、中小企業が加入する「協会けんぽ」(全国健康保険協会、旧政府管掌健康保険組合)は中小法人の従業員が加盟し、平均年齢が高く、常に赤字の状態です。対照的に、ソフトウェア業界で作る「ITソフトウェア健保」は構成する人たちの年齢が若く、一人当たりの医療費が少なく、組合員専用の保養所やレストランをいくつも持つほど余裕があります。この状態を見て、「ITソフトウェア健保は政府の補助が無く、協会けんぽは税金で補助を受けているから不平等だ」と感じる人は少ないでしょう。病気になり、健康保険から支援を受け、更に税金で補助される人は保険料ばかり支払って健康な人より恵まれているでしょうか?税金の補助を受けないが健康である人のほうが幸せに違いありません。
本来、健康な人が健康でない人を支える保険の役割が高齢化によって、健康保険組合ごとの差が大きくなり、制度が時代に合わなくなってきました。この際、「後期高齢者医療制度の廃止」だけでなく、一歩踏み込んで、ひとつの大きな保健制度に統合し、本来のセーフティネットの役割を取り戻すべき時でしょう。公共事業は景気対策としてGDPの拡大に即効性がありますが、長期的なビジョンを示すことのほうが本当の景気対策になるのではないでしょうか。
日経平均は海外株高や円安傾向、更に、中国株の上昇などを受けて大幅続伸しました。先週の下げ場面では裁定解消売りで下げ幅が拡大したことがあり、本日はその反動で上げ幅が大きくなった面もあります。貴金属価格の高騰に見られるように、金余り相場が修正されておらず、実需売りは多くないだけに裁定取引で相場が大きく動いてしまいます。また、残念ながら、個人投資家の多くが先行して下げたメガバンクでしこりを抱えていた結果、安値圏であまり買えなかったようです。大型ファイナンスで銀行株の駄目押しの悪材料となった野村HDが踏み上げによって急騰し、銀行株を「救出」したことは皮肉としか言いようがありません。個人投資家は野村HDに振り回されたことになります。結果的に個人投資家が一息ついたことで来週は物色人気の広がりにつながる期待が持てます。しかし、金先物市場のように投機資金がマーケットを動かす比率が高くなり、じっくりと取り組める相場環境ではないことには注意が必要でしょう。
2009年10月2日(金)
メガバンクで失敗した個人投資家
日経平均が7月中旬の9050円安値から8月末に付けた10767円高値に至る過程で、8月上旬まではメガバンク株は日経平均に連動して上昇したものの、その後は日経平均が高値を更新する過程で値嵩ハイテク株ばかりが急騰し、メガバンク株は置き去りで、NT倍率は記録的な高水準となりました。その後、8月中旬以降はメガバンク株は日経平均と逆行して下げ、足元では指数に連動して一段と急落してしまいました。
個人投資家は指数が上昇するほどハイテク株と比べてメガバンク3行を割安と感じ、現物買いだけでなく信用買いも膨らませました。しかし、残念ながら思惑は外れ、信用評価損益は指数の下落率を大幅に上回る悪化となっています。足元では大手銀行株の下落が全ての材料株や低位株などの投げを誘う悪循環も見られます。これまで個人投資家の信用仮需は下がれば確実に逆張りの買いを実行し、新規買いの金額が決済売りを大幅に上回るパターンが見られましたが、この2日間の急落では売り越しとなり、余程ポジションが厳しい状態にあると思われます。
もともと、銀行株を取り巻く環境は不良債権の増加で悪化する傾向だったところへ、新BIS規制で中核的自己資本の質が厳しく問われる方向になり、普通株資本の比率が小さい日本のメガバンクに不利な規制強化が行われつつあります。銀行規制強化の方向に逸早く反応したのは野村です。海外で投資銀行業務を強化している野村は今年2度目となる大型増資を発表して株価は急落し、銀行株の希薄化懸念を連想させ、投資家をパニックに陥れたと言えます。駄目押しは亀井金融相のモラトリアム構想でした。
ところで、大手銀行株は常に個人投資家の短期売買の対象となっていることは世界共通です。個人投資家が多く参加する香港市場でも銀行株が常に売買高上位にあり、銀行株の上下でハンセン指数の変動が決まるほどです。ちなみに、香港ハンセン指数の構成銘柄はみずほ証券や野村証券のHPで書かれているように「33銘柄」とするところが多いのですが、Wikipediaでは「45銘柄」となっていますし、東洋証券では「42銘柄」です。ハンセン指数の採用銘柄は銘柄数では全体の数パーセントに過ぎませんが、時価総額では7割以上を占めるので、どちらでも実態は変わりませんが、仲介業務に熱心で構成銘柄の株価をHPで日々公表している東洋証券が恐らく正しいのでしょう。
そして、香港株の場合でも日本株と同様に、売買代金上位に中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行の3大銀行が常に並び、この3銘柄の株価動向が個人投資家の損益を左右する構造になっています。日本の個人投資家は大手銀行株の指数との出遅れ感に対して熱くなり過ぎたかもしれません。値嵩株を買い上げた投機筋に騙された形にもなりましたし、勝てる相手を探していたヘッジファンドの格好のターゲットにされた可能性もあります。とは言え、目先は悪材料を織り込み、個人投資家の投げとともに売られ過ぎの領域に入っているのでしょう。
日経平均は海外株安や円高懸念、米雇用統計の悪化予想などが重なり、大幅続落となりました。過剰流動性でファンダメンタルズ以上に割高に買われていた部分が実態に合わせて下げ、景気実態に懐疑的で買えなかった投資家にとっては期待の状況ではないでしょうか。そして、注目の銀行は個人投資家の損失が拡大する一方で、金利の急低下という「債券バブル」で債券運用に限れば大きな利益を得ています。叩き売られている銀行株ですが、実は債券運用で大成功しているというのは皮肉な出来事と言えそうです。
2009年9月25日(金)
日銀がFRBの行動を抑制する危うさ
今週22日と23日にFOMCが開催され、声明文では景気判断を一歩前進させ、「景気底打ち」を宣言し、消費についても「家計支出は安定化しつつあるように見える」と判断を上方修正しました。しかし、金融政策については、「例外的に低いFF(フェデラルファンド)金利が長期に亘って続く」とし、金融政策の変更はありませんでした。景気判断を上方修正しても、いわゆる出口政策となる政策金利の引き上げを想定した内容は含まれないままです。市場はFOMCの声明文が予想通りでほとんど反応しませんでした。
FRBが景気判断を上方修正しても金融政策を変更出来ない原因は日本銀行にあるかもしれません。日銀は2000年8月の政策決定会合でゼロ金利政策を解除し、政策金利である無担保コール翌日物は0.25%前後へ上昇しました。ITバブルが既にピークを過ぎたこの時に、日銀は悪化し始めていた日本経済の見通しを誤り、2001年2月に再び事実上のゼロ金利政策に戻すことになりました。3月には量的緩和策まで踏み込まざるを得ないほど景気が悪化していたわけで、2000年8月の日銀の判断ミスが大きな景気悪化を引き起こした要因であることは歴史が証明しています。
FRBが現状の景況感を上方修正しながらも利上げに変更出来ず、出口政策を明確に示せないのは2000年8月の日銀の金融政策の失敗を恐れていることは誰しも想像出来るでしょう。日銀の失敗がFRBを束縛しています。FRBは出口政策を示すどころか、住宅ローン担保証券の購入プログラムを来年3月まで延長することを決定し、金融緩和姿勢を延長する姿勢さえ示しました。まさに、反面教師となった日銀がFRBの行動を指図するかのようです。
株式市場にとってはバブル崩壊をバブル創出で糊塗するようなFRBの金融政策は歓迎されるかもしれませんんが、問題は実体経済がある程度回復した状態で「例外的に低いFF金利」という超金融緩和状態を続けることの副作用がどのようなものになるか分からないことです。住宅市場や株式市場が実態以上に政府によって支えられていると市場が理解したときの反動に気を付けるべきかもしれません。
日経平均は米国株安や権利落ち、野村の大型増資発表、モラトリアム構想など数々の悪材料が重なり、大幅下落となりました。FRBによる景気底打ち宣言と逆行する結果となったわけですが、これまでリスクのあるポジションを拡大してきた投機筋の行動がそろそろ転機を迎える時期に近付いたことの現れかもしれません。
2009年9月14日(月)
新政権はまず「後期高齢者医療制度廃止」で国民の信頼を得るべき
新政権は多くの公約を掲げたこともあり、あれもこれもと大忙しとなりそうですが、国民は今までのこともあり、公約がすぐに実現するほど甘く考えていないでしょう。今回の民主党の勝因を敢えて一つに絞ると、消えた年金問題や後期高齢者医療制度に対する老人たちの怒りが極限に達していたことではないでしょうか。今回の総選挙では従来、比較的保守層に有利だった層が積極的に反自民の票を投じたと言われています。中でも、地方の票と高齢者票という2つの大きな保守基盤の反乱が起きました。
その意味で、自公政権に対する批判票であり、敗北は失政によるオウンゴールだとする意見が多く聞かれます。しかし、この説では与党の敗北は失政に対する批判であり、民主党政権に対する強い期待では無いというニュアンスになります。次期政権が国民の信頼を得るには敵失で得た勝利ではなく、政策を実行し、本来の支持を得る必要があります。その為にもっとも有効で相当なインパクトがあると思われることが「後期高齢者医療制度の廃止」でしょう。そこには高速道路無料化のような誰しも理解できるとは限らない政策と異なる明確なバイアスがあります。あるいは、子供手当があっても配偶者控除が無くなるような政策も今ひとつ魅力に欠けます。子供だけでなく、高齢者とも同居している為に専業主婦(夫)となっている弱者に不利益となります。
後期高齢者医療制度は国と自治体による高齢者医療の経費削減を狙ったものである以上、廃止に反対する人は少ないはずです。医療保険は本来、若くて健康な世代は出すほうに回り、医者にかかることが多くなる世代で受取るから「保険」であり、現代の姥捨て山のような制度を作ることは誤りでした。問題は制度の変更だけで恐らく1000億円以上の経費をかけたことが無駄になり、政権交代毎に非保険者証の作成や電算システムなどを作りかえることでしょう。新政権が次の政権に変えられないような確りした医療保険制度を作ることも求められます。そして、国民の信頼を得る為の最重要課題を成し遂げることは経済の活性化と決して無関係ではありません。もしかすると、公共投資以上の経済効果があるかもしれません。
日経平均は先週まで米国株高を反映し、ほとんど無視していた円高でしたが、ドル・円相場が臨界点を超えて下落したことで、ようやく反応して大きく下げました。ただ、円高は債券への投資金額が多い機関投資家にとっては債券価格の急騰で利益が膨らむという利点もあります。債券運用で利益が出ている機関投資家にすれば、株式を慌てて売る必要がありません。実際、東証の売買金額は少なく、実需売りよりも裁定解消売りで下げたような展開です。円が中長期的に買われる要素は多いとは言えず、投資家はこの局面を上手く利用すれば良いのではないでしょうか。
2009年9月7日(月)
規制強化と規制緩和の使い分けを
民主党中心の政権では金融政策は規制強化されるのではないかと警戒する声が市場で多く聞かれます。また、民主党の公約はバラマキ政策が多く、成長戦略が弱いという批判があります。しかし、それらはネガティブ・キャンペーンに影響され誤解している面も多そうで、実際には未知数の部分が多く、評価はこれからでしょう。むしろ、規制強化の懸念については、これまでが「官製不況」と言われたように、自公政権の下で政府は新建築基準法や金融商品取引法が作られ、「消費者保護」の名目で規制強化を行ってきた経緯が問題です。
例えば、建物を新築する場合に、建築中に施主がソーラーパネルを希望した場合、屋根材を変更したほうが合理的ですが、現状では最初に申請した通りに工事をしなければ違法とされます。壁紙程度の変更も難しいという声があります。こうした規制の結果、コストを拡大し、消費機会を大きく奪った可能性があります。また、金融政策では金商法で各種リスクや手数料などをまとまた「事前交付書面」を交付することが義務付けられましたが、その有効期限は1年と短く、取引が無い顧客にも毎年大量の「事前交付書面」が届くようになりました。これは一見、顧客保護のように思えますが、細部に亘る膨大な書面を読む投資家はほとんどいないでしょうし、環境にも大変悪い法規制です。しかも、毎年送付する為にコンプライアンス要員を増やし、送付費用で多額の経費がかかり、結局、顧客の手数料に乗せられることになります。営業マンさえ全部を見ないような規制にどのような合理的な意味があると言うのでしょうか。建築基準法と同様に過剰な規制強化は消費者負担を増やすことになり、見直しを急ぐべきでしょう。
官製不況の原因となったような法改正については、これ以上規制強化すると考えるよりも、むしろ、民主党政権で成長戦略が考慮されるなら、緩和されることも有り得ます。市場参加者が規制強化を恐れて神経質になる前に、過去の規制がどのような効果をもたらしたか、実態を検証する必要があります。反対に、金融危機では「銀・証一体化」という規制緩和が危機を増大させた面があります。規制強化すべき点もある一方で、規制緩和を急ぐべき法制度もあります。新政権は教条的にならず、合理的に使い分けることが求められます。
日経平均は先週末の米国株高を受けて反発しました。記録的な薄商いも祝日となっている米国要因でもたらされ、米国株の写真相場の傾向が極まっています。今週のメジャーSQは前回よりも裁定買い残が増加した分、SQへの持ち込み売りは増加する可能性がありますが、オプションは思惑のあるポジションが少なく、波乱要因とはなり難い状況です。また、毎年恒例の日経平均の銘柄入れ替えが見送られたことや注目の経済指標が少ないことなど、変動要因が少なく、持ち合いとなり易い中を目先の需給で動く展開となりそうです。
2009年8月31日(月)
「円安政策」を基本とする新政権
圧勝した民主党の経済政策の担当者から「日本の外貨準備を半減させる」という発言もあり、政権交代が円高材料とされた感があります。先週は為替市場の大きな変動要因である金利について、円のLIBOR3カ月物金利がドル金利より高くなるという珍しいことが生じ、円高になる背景はありました。そこへ外貨準備がドル一辺倒となっていることを変えるかもしれない政権の誕生となり、円高のタイミングとして見事にシンクロしました。
為替市場は円高で新政権を「歓迎」しましたが、民主党政権は農家支援や子育て、介護、教育などの政策を重視し、税率変更によるガソリン価格の下落や高速道路無料化政策など、内需喚起政策が中心であり、円高を目指す政権でないことは明らかです。雇用対策も含めて、多額の財政支出を要し、財政悪化により、中期的に民主党政権は「円安」を基本路線にしている政権と言うことが出来ます。恐らく、市場が円高に反応していることは中長期的に見ると誤りでしょう。
ただ、新しい経済閣僚は巨大な外貨準備については何も言わないでおくか、当面維持すると言っておくべきでしょう。戦略としてドルに偏った外貨準備の「削減」や「多様化」を持っていたとしても、全くポーカーフェイスでいるべきです。民主党の政策を推進すれば円安が定着してくる可能性があります。その流れが出たところで外貨準備を円に戻すか、多通貨制にしても良いでしょうし、あるいは、金購入や希少金属の備蓄に充てるといった動きに転じると良いでしょう。最初からドルの持ち高削減を示唆する愚は避けるべきです。与党は「自分たちの政策が円安路線である」という自覚を持ち、円安の修正の為に外貨を用意しているというスタンスで臨んでいただきたいものです。
日経平均は寄り後すぐに年初来高値を更新しましたが、その後は外部環境の悪化などで、結局、小幅下落となりました。寄り後しばらく強気に偏り過ぎ、大商いとなったことで上値にしこりを作ってしまったようです。また、中国株が大型IPOによる資金吸収を嫌気して下げましたが、日本株にも同様に株高で増資が続くという問題があり、流動性相場の目詰まり場面も考えられる状況です。
2009年8月24日(月)
公平でない選挙制度が政策を歪める
株式市場では政権交代を示す世論調査結果を囃して「子育て・介護・教育・運輸・農業」などの関連銘柄が賑わいを見せています。しかし、どの党が主導権を得るかという問題以前に、選挙制度自体が民主的で公平な制度になっていないことが問題です。そもそも、小選挙区制の選挙は民主的なルールでは無く、前回の総選挙では4割の投票で3分の2の議席を得ることが出来ました。残りは3分の1にしかなりませんでした。
また、今回の小選挙区の1票の格差は最大で2.3倍もあります。千葉4区の票の価値は高知3区の票の半分の価値もありません。2倍以上の格差がある選挙区は全部で46あります。もし、「あなたの票は0.5票とカウントする」とされれば誰しも怒るに違いありません。政治家全員の努力不足が原因で、「都市住民は地方の住民の半分の票」にされてはたまりません。数々の違憲訴訟がこれまでになされてきましたが、最高裁では「この程度なら違憲ではない」とする判事が多く、現実を追認してきました。これをチェック出来る国民審査は何も書かなければ自動的に信任されます。信認は丸印を付ける制度なら最高裁判事の国民審査が違う結果になるかもしれません。国民審査の機能が果たせないなら、政治家の責任で修正すべきでしょう。
あるいは、選挙には「誰でも公平に立候補が出来る」はずですが、これも事実上無くなりました。供託金は小選挙区で300万円、比例区で600万円が必要で、国際的な基準から掛け離れ、あまりに大きな金額である為に特定の政党の候補者になるか、余程、資産に余裕がある候補しか選挙に出れない仕組みになっています。日本が何でも手本にする米国では供託金は不要です。2世や3世議員が多くなるのは知名度だけではありません。政治資金に余裕があることが大きな理由です。特に、政治団体を次世代候補が引き継ぐ際に、「政治資金に相続税がかからない制度」が大きな要因でしょう。地位を築いた親世代の議員が集めた政治資金を政治団体に貯めておき、それを誰が引き継いでも相続税や贈与税の対象にはなりません。1度落選した程度では2世候補の資金はまだまだ余裕があるはずです。もし、議員の世襲を禁止することが憲法上難しければ、政治資金の世襲を完全に禁止すれば相当な効果があるでしょう。
結局、政治家は当選してこそ政治家であり、落選すればただの人ですから、今のような不公平な制度で選挙が行われると、当然、選挙公約は票を得る目的が優先し、各党共に実現不可能な内容を含むだけでなく、税金の無駄遣いとしか思えない内容まで混合されます。政治家は選挙の前に、1票の格差廃止は当然のこと、供託金を引き下げ、政治資金の相続禁止や小選挙区制の廃止を行えば国民から信頼されるでしょう。
日経平均はFRB議長による金融緩和継続と受け取れる発言で上昇した米国市場を映して大幅上昇となりました。ただ、商いは依然として低調で積極的な売買は見送られたままです。FRB議長の発言を言い換えると、「景気は弱く、金融の超緩和状態を続けなければ失速しかねない」と受け取れます。バブル崩壊をバブル創造で糊塗する金融政策は厄介です。先週の月曜日がそうだったように、メッキが剥がれると突然急落することもあります。バーナンキ議長は適度に市場を牽制し、勇気ある出口戦略を示すべきでしょう。
2009年8月17日(月)
個人投資家の賢明さを証明する急落場面
日経平均は久々に300円を超える下げ幅となりました。300円を超える下げ幅を記録したのは5か月ぶりのことです。その間、個人投資家は7月上旬の9日連続安の場面では一貫して買い下がり、7月中旬以降の上昇場面では売り越しを続けました。信用買い残は直近の4週間続けて減少し、個人投資家は米国の景気回復を示す指標に踊らず、4半期決算の好転でも全体として売り越しを続けたことになります。
そして、個人投資家の売りに対して、買い手の中心は外国人投資家であり、証券会社による裁定買いでした。個人投資家は身の回りの景気実態を良く観察した結果、力強さをそれほど感じず、慎重姿勢を崩さなかったのでしょう。但し、その間に株式投信は良く売れたということなので、銀行や証券会社から「プロのアドバイスを受けた個人投資家」は買い上がったことになります。
「相場上昇はファンダメンタルズから乖離して上昇しているのではないか」という疑問の声は一般の投資家の間では高まっていましたが、運用担当者の間ではそうでも無かったようです。例えば、日経ヴェリタスの「プロの相場観」調査では今週の相場見通しで強気が47%だったのに対し、弱気は29%しか無く、相場上昇につられるように強気に偏ったプロの姿勢が示されていました。あるいは、ブルームバーグが実施した8月の自社端末利用者の調査でも、この2年間で初めて楽観が優勢となっており、世界的に大口投資家は強気の順張り姿勢に転じていたことになります。
今後の日経平均がどう動くかは不明としても、再びバブル化していた中国株が先々週から大きく崩れたことは事実です。少なくとも機関投資家の強気見通しに疑念を抱くには充分でしょう。上海総合指数は7営業日で3478ポイントから本日の2870ポイントまで急落しています。目先はリバウンドがあるとしても、やはり、中国の景気回復が内需に偏り過ぎ、盤石なものでないことを示すものでしょう。いずれにしても、日本の個人投資家の現実を見る目が冷静で、賢明な投資態度が際立っていたことになります。
一方で、決して強くない日本経済が世界の株安場面で「安全資産」とされ、円買いとなることは不思議なことです。しかし、「新興国株の急落、資源下落、円高」と揃うほど、別の投資チャンスと見ることも出来そうです。現金比率を高めた個人投資家がどこで逆張りで動くか注目したいところです。
2009年8月4日(火)
ジョブレス・リカバリー
個別企業の4半期決算の発表が集中し、業績が改善された企業が多い中、7月31日に発表された日本の完全失業率(6月、季節調整値)は5.4%(348万人)となり、前月に比べ0.2ポイント上昇しました。発表される企業業績の回復が「売り上げ増加」によるものではなく、リストラなどの「経費削減効果」や「原材料費の値下がり」によるものが多く、雇用を伴わない回復となっており、今後も失業率が上昇することが確実な情勢です。
また、2日付けの産経新聞によると、潜在的な失業率は更に高く、『雇用調整助成金申請者は6月で約238万人に達し、これを含めると単純計算で失業率は8・8%に跳ね上がる』、『厚生労働省が集計した月ごとの申請状況によると、6月の対象者は前年同月の1774人に比べ1300倍超に激増。助成金がなければ、解雇されていた可能性があり、経済専門家の間では「隠れ失業者」と位置づける考えが広がっている。』としています。また、政府の財政経済白書に示された潜在失業者は約600万人あり、日本の失業率は米国の9.6%をいつでも追い抜ける状態です。
現状は政府の助成金で多数の雇用をつなぎとめている状態ですが、問題は失業した場合の次の職探しが困難を極めていることにあります。厚生労働省が失業率と同時に発表した有効求人倍率は前月を0.01ポイント下回る0.43倍で、2カ月続けて過去最低を更新しました。一応、失業者1人に対し0.43人の求人があるように見える数字ですが、非正規雇用の求人が含まれた数字に過ぎず、正社員に限れば有効求人倍率は0.24倍にしかなりません。4人に1人しか正社員の職が無いわけで、しかも、正社員の求人は低賃金や歩合営業の求人が多く含まれたり、高度な専門職の求人などもあり、実質的に職探しが出来ない状態に近いと言えます。恐らく、中高年では求人は皆無に近い状況でしょう。つまり、今の状態でリストラされると職が無いことを覚悟する必要があるわけです。
このような状況で政策として何より優先順位が高いのは新規の雇用を創出する具体策です。各党は政権公約で具体的なアイデアをもっと出す必要があります。日本にどのような新しい産業で雇用を創出するかが問われています。給付金や公共事業などの景気対策は一時凌ぎにしかならず、根本的な失業対策にならないことは明らかです。政治家は当選して国に雇われることに必死ですが、本来は国民の為に、教育、介護、保育、エコなど持続的で将来拡大可能な分野で雇用を拡大する意欲を示し、具体的な戦略に熱心になるべきです。具体的な展望が無ければ、公共事業拡大や補助金のばら撒きを繰り返すことになるでしょう。
日経平均は水準的な問題もあり、後場は伸び悩んで小幅な上昇となりました。TOPIXは実に13日連騰の記録を作っています。しかし、売買代金を見る限り「13日連騰」というような活況な相場ではありません。株価が連騰したとしても参加者が少ない状態では機関投資家が少しまとまった売り物を出す程度でも大きく相場が崩れるかもしれません。砂上の楼閣を築いているような面があり、個人投資家はなかなか乗れないところでしょう。