See Far Miles Tour Part I
佐野元春 With The Heartland
1992.3.27 (FRI) 大阪厚生年金会館

     【Set List】

 ああ、もうすぐ始まる! 急ぎ足で会場内に入るとほとんどの座席は埋まっていて、誰もが今や遅しと
開演を待つばかり。もう何度も見ている元春のステージなのにこんなにもドキドキしているのは、私がこ
の街のこの会場に初めてやってきたせいだろうか。

 やがて場内にBooker T & The M.G.'sの"Green Onions"が流れて、リズムに合わせて身体が動く。照明
は落ち、歓声と手拍子の中、ハートランドの登場―――オープニングテーマが始まった。ハートランドの
息のピッタリ合ったこのインストゥルメンタルのロックナンバーは、元春登場の瞬間の興奮を高めるのに
充分。そして
「New Age」(新しい年に新しいツアーをするに当たってふさわしいナンバー)次第に観客
が一体となってうねっているのを肌で感じる。会場全体が揺れている。左隣の女の子もロングスカートで
踊っている。大好きな曲
「彼女が自由に踊るとき」で通路に押し出されながらも、私もいつになく自由に
踊る。ステージセットはいたってシンプルで、後方に窓枠が浮かんでいる。黒シャツに薄いピンクのジャ
ケット姿の元春。髪の毛を短めにしていて、いつだって年齢(36歳!)を感じさせない。タンバリンを
叩く仕草がカッコいい
「マンハッタンブリッヂにたたずんで」88年の PISCES TOUR 以来、久々にこの
曲が聴けるのが嬉しい。「Love Is Here!」
 

 4曲終わっていつもの暖かい挨拶が聞ける。「どうもありがとう!今夜、外は雨降ってますけども、でも雨の中、冷たい夜、集まってきてくれて嬉しいです。もう一度感謝したいです。どうもありがとう!―――See Far Miles Tour Part I 、全国、コンサートして回ってます。3月の終わり、もうまもなくツアーは終わってしまいますけれども、再び今回のツアーでこの大阪でコンサート出来たこと、僕等感謝してます。どうもありがとう!―――今、ツアーをやりながら同時にレコーディングをしています。新しいレコードはたぶん、5月か6月か7月くらいに出ると思うんですけれども、その新しいアルバムの中から1曲用意してきました」その新曲はTDKのCFでお馴染みの曲「誰かが君のドアを叩いている」ギターをかき鳴らす短いイントロ、心地よいロックンロールのビート、一発で気に入ってしまった。客席からも「最高!」の声が飛ぶ。元春も「やっぱり新しい曲を聴かせる時は、 なんかドキドキしてしまいます」

とニッコリ。今回のツアーから復帰のキーボード、西本明さんの紹介ののち、さらに新曲
「Rainbow In
My Soul」
へと続く。♪失くしてしまうたびに君は強くなる 輝き続ける いつの日も There's A Rainbow
In My Soul♪特に詞が心に響いてくるいい曲だ。ナポレオンフィッシュアルバムから新しいアレンジで変
身した2曲(
「ジュジュ」「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」)は、スタジオライブの再現のようにギター
の長田さんも腰掛けてのプレイ、それぞれハーモニカ、ホーンセクションの演奏が印象的だ。レゲエ調の
「Heart Beat」、"Can You Hear My Heart Beat?"のところで、左胸にマイクを突き付ける仕草が、そし
て "Can
I Hear Your Heart Beat?" と歌詞を変えて歌ったことが忘れられない。いつも何らかの新しい形
で、お馴染みの曲を新鮮に感じさせてしまう元春はさすがだと思う。途中Eddie Cochranの"C'mon Every
-body"に合わせての Dance とダディの Saxが最高にイカしてた
「Wild Hearts」に続き、「Rock & Roll
Night」
、レコードと全く同じアレンジでステージで聴くのは私にとってこのツアーが初めてで、後半、
元春の叫びと共にステージ全体が藍色に変化していくところ、明さんのピアノ、バックに映し出されるゆ
らゆらとした桜、それぞれがとても美しく感慨深いものがあった。
「Someday」には客席から「待ってま
した!」の声、「一緒に歌ってください」と元春。またこの曲を大声で歌えるなんて、なんて幸せなんだ
ろう。いつも以上に長い
「Individualists」の後、Tokyo Be Bop+古田さんの太鼓+ハーモニカの元春の
チャーミングな行進でいったんステージをあとにする。

 鳴り止まない拍手の中、アンコール。今度は鮮やかな黄色のシャツに着替えて登場。「今までの君はま
ちがいじゃない/これからの君はまちがいじゃない/君のためなら河を渡ろう」と歌うのは
「約束の橋」
スローバージョンになっているせいか、ブルース調の明さんのピアノと共に詞が心に訴えかけてくる。昨
年は長期間のスランプや父親の死などいろいろなことがあったという元春が、何だか自分自身に強く歌っ
ているように思えてならなかった。

 そして何よりも驚き、嬉しかったのは―――
「今日僕は彼に会えてとてもうれしかったんだ。そしてそ
れは突然のことだったんだ。そして彼に『一緒にステージに出てもいいかい?』って言ったら、彼は『い
いよ』って言ったんだ」
元春のこんなコメントで紹介されて出てきたのは銀次さん!オーディエンスは大
喜び、大歓声!
「彼女はデリケート」銀次コールも飛び出して最高に盛り上がる、盛り上がる!元春もハ
ートランドのメンバーも本当にうれしそうにしている。結成12年目、ギタリスト伊藤銀次はもういない
けれど、きっと彼等の友情はこんな風にずっと続いている。The Heartlandの偉大さを改めて見た思いだ。

 ラストのアンコールはたった1人でギターを抱えて登場。
「ジャスミンガール」の弾き語り、元春と会
場の誰もが一緒に歌った。元春、この曲がこんなにいい曲だなんて、今夜まで気がつかなかったよ。

 約1年ぶりの元春の全国ツアー、See Far Miles Tour I、ニューアルバム発表前のツアーということで
お馴染みの曲中心の構成だったが、元春は変わらないパワフルな姿を見せてくれた。そしてラストとして
私は念願の大阪公演を見ることができて、本当に幸せだ。この街のオーディエンス、熱気、そしてステー
ジは最高だった。



 
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