レコードの魅力


 ひょんなことがきかっけで、久しぶりにレコードプレーヤーを動かすことになった。も
う何年も部屋の片隅に追いやったまま、触っていなかった代物だ。それは遙か昔、高校の
合格祝いか何かで親に買ってもらったものだ。今ではもうアンプやスピーカーにも接続し
ておらず、音を聴くためにはヘッドフォンを差し込まなければならない。
 元春のシングルを2枚ほど確かめるだけのつもりだった。だがアナログの音を耳にする
につれ、何とも言い得ぬ不思議な思いに駆られ、時間を忘れて次々とターンテーブルに乗
せていった。思いも掛けずアナログ鑑賞会となる。以前はこうして1曲を聴くために、裏
にして、また表にして、針を落としたものだった。同じ楽曲なのに、違って聴こえるのは
何故だろう。
 そして「グッドバイからはじめよう」のイントロが流れてきた時、すっと17年前にタ
イムスリップしたのだ。それは、初めてサウンドストリートを聴いた夜。それは、初めて
この曲を聴いた夜。あの夜の元春の言葉が鮮やかに甦る。CDでは決して起こり得ないマ
ジックだった。
 どれほど時が流れても、必ず、初期に受けた感動を呼び覚ましてくれる。私にとっての
アナログ盤の魅力とは、まさにこんなところにあるのだろう。


                                 2000/6/9
                                   Esme



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