Rain Girl


 今夜も彼女からのメールが届く。

 彼女とはこうして幾度となく、メールのやりとりを続けている。時には有益な情報交換であった
り、時にシリアスな悩みを互いに打ち明けてみることもあれば、時には意味のないような世間話を
書いてみたりもする。いや、実のところ「意味のない」メールなんて無いのかもしれない。何故な
ら僕は、いつしか彼女からのメールに一喜一憂し、そんな感情にはすべて「意味」が存在していた
から。

 初めて出会ったあの日は、もう随分昔のことのように感じてしまう。彼女はまるで空気のように、
僕の傍らにいてくれた。

 互いに近くはない地に住む僕たちは、社会人であるならばおそらく多くの友人同士がそうである
ように、何らかのイベントがないと顔を合わせることがない。それでもそんな数少ない機会に、共
通の話題で楽しく過ごせるなんて、それはとてもすばらしいことだった。

 いつの頃からか、彼女は僕の心の中で大きくなっていく。音を立てずにゆっくりと、しかし複雑
にその形を変えながら。

 それが真の「友情」なのか、それとも「虚栄」なのか「逃避」なのか、果たして「恋」なのか、
僕にはわからない。無情に過ぎ去っていく日常の中には見出せない彼女の笑顔。その虚しさが彼女
への想いを駆り立てているだけなのかもしれない。

 傷つくことに臆病になってしまった僕は、自分の想いを確かめるには勇気が足りない。ましてや
彼女が今何を感じているのか、知るすべもない。せめてまたどこかで楽しい時を共有できるよう、
願うだけの日々が続くのだ。

 出来ることならば、いつか君と少しだけ話したい。
 いつか君と少しだけ踊りたい。
 たとえそれが叶わぬ夢だったとしても。

 This is a story about you.

                                     1999年 初夏
                                       Esme



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