ハートランドからの手紙


     「ハートランドからの手紙」をリアルタイムで読んだのは、「Christmas Time In Blue」
    12inchのインナーに載っていた「#15」が最初だったと記憶している。マンハッタンか
    ら東京に戻る機内で書いているという、まさにファンへの手紙形式のその文面は、クリス
    マスレコードへの想い、曲目解説、クリスマスメッセージが、とてもクールに綴られてい
    て、以後元春のつむぎ出す言葉の虜になるに十分の内容だった。15年前の冬のことだ。
     その後も元春は印象的な「手紙」を何度も届けてくれている。遡るならば、ニューヨー
    ク滞在中に友人へのレクイエムという形をとった「#5」、 まるでアーウィン・ショーの
    短編小説のようだった。90年代に向かって突っ走る「新しい航海」への決意を示してく
    れた「#33」、ある秋の日の短い描写と一編の詩が添えられた「#52」、 ファンへの感
    謝の言葉が延々と綴られた「#94」、アルバム「THE BARN」の楽曲と妹の死に言及した
    「#105」、and more.....
     それらは、表現者であり続ける元春とファンを結ぶ大切な糸でもある。この先も手紙が
    途絶えることはないのだろう。元春がそこにいてくれる限り。
     増補改訂で復刊されるとしたならば、これほどうれしいことはない。



                                     2000/10/19
                                       Esme



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