月夜の蟹
「月夜の蟹」。竹中直人のエッセイ集。全18編。映画界や私生活での出来事などに触
れている。彼の文章は、時に自身の演技のように熱く、時に独特の「間」「静」といった
ものを感じさせる。なかでも「大雪の日」が気に入っている。娘の果夏(かな)ちゃんと
中央線に乗って、スカパラの名古屋くんの家へ出かける、という一日をさりげなく描写し
たものだ。起承転結があるわけでもない。しかしその穏やかさの中から、小さな幸福感を
受け取ることができる。果夏ちゃんとの何気ない会話。 「果夏、遠回りして帰ろうか」
「うん」「行くぞー」「やったー」 それはおそらく日常という名の宝物なのだろう.......
2000/12/16
Esme
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