記憶


     クラスメートの内藤君は、朝から頭を抱え込んでうつむいたまま、自分の席を立つこと
    がなかった。いつもは仲間達とはしゃいで過ごす明るい子だったけれども、その日だけは
    違っていた。内藤君のそんな様子に気づいた女の子達は、訳も分からず遠巻きに彼を見て
    いた。私もその1人だった。
     「内藤、どうしたんだろうね」「なんか『ジョン・レイン』っていう人が殺されたみた
    い。だから落ち込んでるみたいだよ」「へぇ.....『ジョン・レイン』なんて知らなーい」
     仲の良かったカタコとこんな会話をした。家に帰って新聞を読んだ。「レイン」じゃな
    くて「レノン」だった。20年前のある日の記憶。



                                     2000/12/8
                                       Esme



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